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最後の戦いへ-05

アルゴーラから少し歩いた先にある洞窟へと入り、虹色に輝く水晶が所々に点在する神秘的なダンジョン。


ダンジョンとは言っても、恐らくラスボス用ステージだからだろうか、雑魚モンスターなどは一切出ず、ただ一本道となっているそこを進んでいると――天井は高く、敷地も広い整った場所に出た。


居ない、とリリナが呟くが、しかし彼女以外のメンバー……オレや彩斗、マリアやカーラ、エリなんかは四方を警戒した上で、リングとアイコンを構えた。



「来るぞ――ッ!」



 強く感じた殺気にオレが叫ぶと、それらが姿を現す。


天井を突き破り、その翼を羽ばたかせる二体の龍が、風圧をまき散らしながらズン――と地へ足を付けた。


角が一本ずつ欠けた、本来は二本角の龍。


その全身に光と闇をまとう、光闇龍とも言うべき二体は、今大きく口を開き、絶叫。


二体の咆哮と共に放たれる衝撃波だが、しかし以前と違い、それによるダメージは無い。恐らく今は登場モーションであるからなのだろうと思うが――そんな事はどうでもいい。



「行くぞ皆」



 オレが光のアイコンを。


彩斗が闇のアイコンを。


マリアとエリが氷結のアイコンを。


カーラが技術のアイコンを手にした上で、リリナを守る様に立ち塞がる。


そしてリリナは、スゥ――と息を吸い込んだ後、全員へ聞き届ける様に、そして相対するモンスターにも届く様に、高らかに歌い始める。



「プログレッシブ・オン――ッ!」


「ハイパー大変身ッ!」


「プログレッシブ・オンッ!」


「Progressive・ONっ!」


「プログレッシブ、オン……っ!」



 全員、それぞれが言葉を放ちながら、リングにアイコンをかざし、変身をしていく。



オレがプログレッシブ・セイヴァーへ。


彩斗がプログレッシブ・デーモンへ。


マリアとエリがプログレッシブ・フリーズへ。


カーラがプログレッシブ・テクニックへ。



そうして変身を終えるタイミングに合わせ、二対の龍が――



プログレッシブ・アバルトと、プログレッシブ・グランテの二体は、同時に地を蹴り、羽ばたき始める。



「彩斗!」


『ああッ!』



 オレがフル・ダイブ・グランテの巨大な刃を手に取ると同時に、彩斗もフル・ダイブ・アバルトの二振りの双剣を握りながら、天に手を掲げた。


瞬間、オレ達の背後からジジ、と音を奏でながら出現する、数多の雑魚モンスター郡。


それらが一斉にアバルトとグランテへ襲い掛かるタイミングを見計らい、それぞれが行動を開始する。



「エリ!」


「うん!」



 前回の戦いでアバルトとグランテの行動を観察していたエリが、まずは先輩の手を取って二体から距離を取る。アイツらが放つ攻撃には、一定範囲外を超えた長距離攻撃は存在しない。


それに前回は場所がそほど広くない瘴気の谷で行われた戦いだったから、大きく回避運動を取ったりすることが難しかったけれど、今回は広々とした空間内で、よしんば不意を突かれてしまったとしても、回避運動は取りやすい。



「マリア、カーラ!」


「あいよっ!」


「おマカセくだサーイッ!」



 カーラがマリアの身体を抱き寄せた後、マリアが手に持つウェポンガンに技術のアイコンを装填し、トリガーを引いていく。



「シュートッ!」


「ツイデにクラいなサーイッ!」



 カーラの……プログレッシブ・テクニックが持つ空中の飛行能力を用いて空を飛びながら、パーティ全体に風圧無効を付与した彼女に合わせ、マリアが放つ銃弾が、放たれた射線上でなく、逸れる様に全てが無軌道に動き出して、バラバラの個所に着弾。


しかしそれは、完全にランダムで着弾したというワケではない。


まずグランテとアバルトの背後目掛けて放たれた銃弾に、一瞬だがそちらへ視線を向ける二体。


だがマリアの狙いは、次から着弾する、計十六発の銃弾だ。


背後を気にした二対の死角を突く様に、翼や脚部、腹部、頭部と次々に着弾する銃弾と、さらにマリアが変身するプログレッシブ・フリーズとしての効果によって着弾地点が段々と氷結していき、その地点を中心に防御力ダウンデバフと移動力ダウンデバフがかかる。


さらに、バフとデバフに特化したスティックである【グラビティ・デイ】を装備したカーラが杖を振り、表示される魔法の一人をタッチすると、僅かに雷雲が二体を覆う様に展開され、電流を走らせる。


攻撃用魔法ではなく、僅かなダメージと共に移動力ダウンデバフの入る【電流】であり、同種の魔法である【雷電】等と違って展開速度が速い事と、移動力ダウンデバフが入るという利点がある。



と、そこでオレと彩斗が動く。



オレはフル・ダイブ・グランテに搭載された二つのスロットに、駿足のアイコンと技術のアイコンを装填し、闇神龍【プログレッシブ・アバルト】へと駆けて。


彩斗はフル・ダイブ・アバルトに搭載された二つのスロットに、技術のアイコンと打撃のアイコンを装填し、光神龍【プログレッシブ・グランテ】へと駆ける。



オレが光のアイコンで相対する龍が闇であるアバルトを、そして彩斗が闇のアイコンで相対する龍が光であるグランテを選んだ理由は、憶測ではあるが、互いに反する性質を持つアイコンでの戦いであれば、何か相性ダメージなどがあるのではないか、という検証が行き届いていない安直な発想ではあるけれど、しかし今回の戦いに全てがかかっている。出来る事は全てやるべきだ――!



『Run quickly.』『Attack Technic.』



 奏でられる機械音声と共に、地を蹴って飛び立ちながら、高速で移動を開始するオレが、フル・ダイブ・グランテを上段から振り込んで、その頭部に思い切り叩きつける。



「ッ、――硬ェッ!」



 しかし流石にラスボス故、リリナの歌姫ジョブによるバフがかかっていたとしても、その攻撃によってのけ反ったり、大きくダメージが入っている感覚は無い。



『Attack Technic.』『Attack Exciting.』



 対する彩斗は、オレとは違って高速の移動は無いものの、自分と同じく高く飛び立ちながら頭部へと振り込んだフル・ダイブ・アバルトの刃が、グランテの頬を切り裂く。


オレと違って打撃能力が向上する打撃のアイコンを用いたからこそであり、実際に今、アイコンが排他されたフル・ダイブ・アバルトの刃で斬りつけても、その甲殻は切り裂けず、僅かに傷をつけるだけで終わった。



『だがよし、通る――ッ!』

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