陰謀捜査-06
「さて――今回の件、九十九氏はマシロフとアーフェイ、そしてSHOが絡んでるって言ってたな」
「違うのかですかな?」
「いいや、その通り。ただ問題としちぁマシロフとアーフェイが絡んでるのがメインで、SHOは正直な所、奴らの傀儡になってる感じでな」
「そうなのですか?」
「オレらが軽く調べる感じ、それっぽいっすな。例のFDP事件が発生した後の義援金、アレSHOの額が減ってるでしょう?」
「そこは自分も気になってた」
「んで、マシロフとアーフェイが規格外の金額を出そうとしてる。あの富山裕子っつー姉さんが全部断ってるけどな」
「――もしかして、今日富山氏を狙ったのは」
「アァ、しばらくどっかに軟禁でもして、マシロフとアーフェイが出す金を受け取ってもらおうとしたワケよ。ただウチも風俗店経営はしてるがよ、パンピーの姉さん相手にそういう事はしたくねぇからな、九十九氏が絡んでくれて助かったってのが本音だぁな」
「円次郎氏、純愛物好きでNTR物ダメですからな」
「いや、まぁそうなんだけど……」
しかし、SHOがメインで絡んでいないと言うのは若干驚いた。いや、絡んでいる時点で同罪と言わざるを得ないが。
「なぁ円次郎氏」
「何だ九十九氏」
「例のFDP、現時点でゲームデータを削除しようとする動きがあるって話、聞いたことがあるか」
「ある――だが、そっちは多分三社共関係ねぇぞ」
「何と」
「まずそうした動きは日本国内でしか動いてなさそうだ。各国の報道機関見ると、現状FDPの問題解決に関わるニュースとか大っぴらにやってる。日本じゃ逆にやってねぇ。
これ何でかっつーと、マシロフとアーフェイ、SHO的にぁ、無事にプレイヤーが生還して『酷い事件だったが無事で良かった、二度とこうした事態に陥らない為に、我々の高い技術力と資金力を用いて、量子通信技術の発展に貢献する』って大義名分振りかざせるキッカケになる。
全員死亡になったらお通夜ムードの中そんな事言い出さないといけないからな、反発必至だ。なら生還してくれた方が好ましいだろう。
で、日本以外の民衆には『あれだけ騒ぎになったFDP事件を参考にマシロフとアーフェイが開発を引き継いだ!』って宣伝できるし、逆に日本じゃ全然報道しない事によって『日本で起きた事件を日本政府が動いた気配がない。外資凄い』って論調に持っていき、海外買収の空気を作る――って流れにしたいんだよ」
なるほど、三社的にはお通夜ムードになるのは困るから、なるべくFDPプレイヤー達には帰還してもらいたい、という事か。
なら、そう動いてるのは誰だ?
「むしろ、そうやって現段階のデータ削除へ動いてるのは各省庁っぽいな」
「各省庁が?」
「アァ、非公式にだが、多分アメリカから『マシロフとアーフェイの思い通りにさせるな』って突っつかれてンだろうな。かと言ってマシロフとアーフェイ以上の金額はアメリカ政府としても大っぴらに出せねぇし、米国企業も出し渋ってんだろ」
「自国民を犠牲に、か……」
「どこまで本気かは分からねぇが、ただ外務省がそう動いて、総務省がそれを阻止したがってるって話は、噂程度だが聞いてる。元々鵜飼って外務省の出だろう?」
「ああ、そこ経由でそういう動きがあるって流れて来たのか」
「そういう事だ。現状、一部官僚はデータ削除に動きたいが、他官僚と傀儡にしてる政治家が渋ってる事もあって、なかなか動きづらいってカンジらしい」
ただ、強行する大義名分が何か一つでもあれば、そう動きたがってるって事か。だが証拠が何もない状況で外務省を突っつき辛い。
「やけにFDPに拘ってるな、九十九氏」
「天才ゲーマー・リッカ、知ってるだろう?」
「アァ、何でも攻略の為に乗り込んだって話だな」
「友達なんだ。……彼ならきっと、あのゲームをクリアできると信じてる。だがクリアの前に削除されてしまっては、彼の努力が水泡に帰してしまう。それだけは……それだけは何とか、回避しないと」
そして世間には公表されていないけれど、あの中にはリッカ氏だけじゃない、マリア氏やカーラ氏、エリ氏、そして彩斗氏やミサト氏、他にも多く、自分がかつて共に仕事をしたり、見知った顔もいる。
――さらに、あの世界には、あの世界でしか生きる事の出来ない、あの世界で生まれた命がある。
――偽りの命かもしれないけれど、だからと言って、見捨てる事なんか出来やしない。
「友達か。そりゃ、助けなきゃな」
力強く言ってくれた円次郎氏の顔は少し赤い。飲みやすいらしいけど魔王なんて飲むから……。
「なら一番いいのはSHOの社長・雨宮将を味方に引き入れる事だ。アイツは外務省や総務省との伝手も持ってるし、今回の件……つまりFDPの事前データ削除に関しては協力してくれるはずだ」
「マシロフとアーフェイに買収してほしいから、だな。……しかし今回自分としても、マシロフとアーフェイに買収されると困る事になるんだ」
「国防が云々ってトコロか?」
「いや、ぶっちゃけそこも困った所ではあるが、何とか連中に買収されるのを阻止したいんだ。連中はFDPってゲームには興味が無く、その根幹技術だけが欲しいだけだろう。となると、邪魔なゲームデータが削除される事は間違いない」
「なんでまた」
「こっちにも色々と事情があってな」
「ふむん……だがそっち方面はあんまりオレも協力出来ねぇぞ。大っぴらに反抗しちまうと、組がロシアと中国の連中に追われるハメになっちまう」
そう、そこだ。現状は自分と円次郎氏がこうして話をしているが、これも実際超危険行為と言っても過言じゃない。だから盗聴とかの危険性をなるべく減らそうとしてるのだ。
円次郎氏……というより三鷹組はマシロフとアーフェイに雇われて、量子通信技術の買収が有利になるよう動かなければならない。
今日のアレは『マシロフとアーフェイが狙ってる』という証拠を潰した事で何とか大義名分は果たせたが、しかし次はそうもいかないだろう。
「……三鷹組がマシロフとアーフェイに敵視されないように動きつつ、かつFDPを二社に買収されないように動かなければならない、か」
「すまんな、そっちを動き辛くしちまった感じか」
「まぁ見知った顔ですからな、仕方なし仕方なし」
「一番いいのは、マシロフとアーフェイ以外の、出来れば米国企業が買収する動きに持っていく事じゃねぇかな」
お通しに口を付け、その上で煙草に火を付けた円次郎氏。自分は彼の発言に耳を傾け「簡単なこった」と説明してくれる。




