チュートリアル-07
まずはマリアだ。
彼女はオレ達から遠ざかると、そのまま岩場のような場所へと走り、一体のミライガを誘導した。
ミライガの鋭い爪による攻撃を見据え、それを寸での所で避けながら、ホルスターより銃を抜き放ち、シリンダーに銃弾が入っている事を確認した末、シリンダーを戻して、撃鉄を起こし、狙いを定めて、引き金を引く。あ、痛い。
着弾を確認する前に、二射目、三射目を放った後、岩場へと到着。
既に眼球を抉るように銃弾が命中していたミライガは、僅かに動きをよろめかせながらも彼女を追いかけ、その上で口を大きく開くも、彼女はニヤリと笑みを浮かべつつ、左足を軸に右足を強くミライガの首元へ叩き込み、よろめいた所を口元に突っ込んだリボルバー拳銃の弾丸を食らわせた。
「食らいなッ!!」
脳天かは分からないが、口内から貫通して頭を貫かれたミライガはそのまま死に絶え、光と共に消えていく。
残ったのは僅かな金貨と、一つの宝箱。痛い。
しかしマリアは、ホルスターに常設されていた替えの銃弾を確認すると、撃った分だけを装填しなおし、シリンダーを戻した所で、動きを止めた。
すると、彼女の頭上にメニューウインドウが浮かび、称号の取得を示した。
『N.0006 Cランク〔ミライガを討伐する〕』
彼女が見据えるのは、カーラさんの姿だ。
カーラさんはその大きな胸を揺らしながら走り、ミライガと距離を取る。痛い。
ミライガの脚はそこまで早くはないが、しかし普段運動をしていない人からすると、未知なる脅威に迫られるだけで恐怖となり得よう。
しかしカーラさんは、まるで恋人との追いかけっこをするかの如く笑いながら「オーッ! コッチデース!」と無邪気に走り回り、距離を得たと認識すると同時に、一見するとねじ曲がった木の棒に見える杖を振る。痛い。
杖を振ると、メニュー画面の様なモノが出て来た。
一番上に表示された項目をタッチし、そのまま杖を横薙ぎに振り切る。
「【ライデン】デースッ!」
すると、ミライガの頭上に突如現れた雷雲。バチッと光が走った瞬間、ミライガの全身を襲った雷撃によって、ミライガは倒れた。
しかし、まだ息があったので、カーラさんは近づき、そのまま杖の先端で「エーイッ」と殴る。
そこで、ミライガはガクリと意識を落とし、死んだのだろう。マリアの時と同じく光と共に消え、金貨数枚と一つの宝箱を残した。
彼女の頭上にも、またメッセージウインドウが表示される。
『N.0006 Cランク〔ミライガを討伐する〕』
さらにエリだ。
彼女はその場からあまり動かず、ステップでミライガの動きを避け、その間自分の手に用意していたマジックガンの事を調べていた。
「半自動拳銃式、弾倉には銃弾、安全装置解除済み、後はさっきのカーラさんみたいに……っ!」
ブツブツと何かを呟く彼女に苛立ったか、エリに向けて全身で覆いかぶさるように襲い掛かるミライガ。あ、足噛むな、痛い痛い。
しかし、彼女はミライガの後ろに回り、銃口を突き付けると、先ほどのカーラと同じく一覧表示されるメニュー画面が登場した。
数秒の時間をかけ、そのメニュー内に表示された内容を熟読。
カーラと同じく一番上の項目を選択し、引き金を引いた。
銃弾の発砲。しかし銃弾は光の様なモノに包まれ、それがミライガに着弾すると、着弾の瞬間に、爆風をまき散らした。
爆風に焼かれ、身を焦がすミライガ。あ、今度は腕。地味に痛い。
トドメと言わんばかりにもう一度メニューを表示させたエリは、上から二番目の項目に触れ、引き金を引く。
発砲。銃弾は先ほどとは違い光をまとってはいなかったが――しかし続けて二発、三発目と撃たれた銃弾がミライガの首や胴体、足に着弾すると、着弾位置を結ぶように切れ目が走り、バラバラに裂けた。
それが致命傷となり、彼女の担当したミライガも死んでいく。金貨と宝箱を見据えて「うひひ、大量じゃーい」と言った彼女の様子は何とも嬉しそうだった。
また彼女も、同様に称号を取得。
『N.0006 Cランク〔ミライガを討伐する〕』
続けて、ツクモ。
彼は背負いこんだ太刀を抜き放つと、そのままブゥンと風を切る音と共に、薙ぎ払う。そろそろ死ぬかも。
その巨体、その逞しい腕から振り込まれた一撃を受けたミライガは切口を作って体を吹き飛ばされるものの、しかし起き上がり、後ろ足を使ったジャンプをして、ツクモの後ろを取る。
しかし、ツクモは決して慌てない。
そのまま横っ飛びしてミライガと距離を取ると、太刀を脇で構えた後、ミライガの口元へ、突く。
「振り切るっすわぁ――!!」
刺し込まれた太刀の向きを変え、マグロの解体のように、力強く横薙ぎし、引き裂いた事により、ミライガは奇声と共に力尽き、倒れる。
『N.0006 Cランク〔ミライガを討伐する〕』
やはり飛び道具や魔法などと違い、小型モンスターを容易く倒すのは火力というより切れ味だと思う。魔法いちいち使うより物理で殴る的な。痛い。
しかもツクモは太刀の使い方をよくわかってる。正直太刀は、ブンブンと振り回すより、その長いリーチを生かした突きが一番隙を無くしつつも、次の攻撃に転用できる点が大きい。
ふむ、皆ちゃんと自分の受け持つ武器の使い方を認識できたようで何よりだ。痛い。
こういう武器の使い方を教え合い、研究を行う事で称号というのは得やすくなるので好ましい。あ、腕が無くなった。
「ちょ――リッカアンタ食われてる食われてるッ!!」
「オウ、リッカ!! イマタスケマース!」
「あー、ちょっと待って。そろそろ死ねると思うから、その後頼む」
ちなみにオレはというと、皆の戦い方を観戦しながらミライガに思い切り攻撃されまくってた。時々「痛い」って言ってたのはその為だ。
だが、正直先ほどマリアに横っ腹を蹴られた時の方がよっぽど痛かった。今腕一本無くなってるけど、じわじわと痛いだけで泣き叫ぶような痛さなんかは感じない。
しかしその時――オレの意識が、急に遠ざかった。