表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

189/246

陰謀捜査-03

『……やはり、か。個人的な恨みだけで疑うのはどうかと思ったから、意図しては言わなかったけれどね』


「自分もそれは排そうと思っていたが、なかなか世の中上手くいかないようだな」


『で、それを私に報告するという事は、聞きたい事があるんだろう?』


「ああ、もちろん――何か、雨宮将とFDPについてを話したか?」


『軽くだけどね。FDPの支援について話題が各省・各企業で上がった時、支援を申し立てしてくれたんだけど、その時に「是非、律を使ってPRを」と注文されたんだ。彼はゲーマーを引退していたし、それは断ったのだけど』


「それ以外には?」


『マザーコクーン内の通信プロセスについて、少しかな。SHO開発の機材も使われていて、という話を』


「――ちょっと待て!」



 急いで話題を止める。今、聞き捨てならない事を言われた気がした。



「マザーコクーンの通信プロセスにSHO開発機材が使われていると話したのか?」


『勿論機密事項については話していないが』


「SHOは元々インターネットセキュリティ企業で、その上その技術はマシロフから流れた技術だぞ? しかも通信プロセスにSHOの機材が使われていれば、その機材から通信プロトコル等の諸々を解析し、マザーコクーン内のデータ閲覧・改竄も可能じゃないか?」


『あ――』



 そうか、と言わんばかりに海藤雄一が黙った。しかしそれは彼が思考している事に他ならず、今自分が予想した内容が、していたかどうかはともかく『可能かどうか』を鑑みているのだ。



『うん、まぁ十分に可能だろう。通信プロトコルが分かればそこに割り込む形でネットワークを接続し、閲覧や改竄……まぁ、マシロフレベルの技術ならば。


 いやしかし、それが可能であったとしても、私の開発したデータは暗号化されていて、流石に解析・改竄等は不可能だと思う。幾らマシロフの技術力が高かろうと』


「お前が地球上からマザーコクーンに対して送信した内容を全て閲覧していて、それにより暗号化パターンを解析された場合は?」


『……そうか。パターン解析された場合は、別だね。確かに地球上からマザーコクーンへ送信した内容だけでも、暗号のパターン解析は十分に可能だと思う。特にマシロフレベルの技術なら、なおさらね』



 今自分と海藤雄一が話している内容は、あくまで仮説に過ぎない。


元々SHOが開発した機材が通信プロセス使われているとしても、その機材に通信内容を解析・別の所へ送信する機能が備わっていなければ話にならない。


さらにはそうした機能が備わっていたとして、自社以外に送信していないという証拠を現状では掴めない事。


その上、もしSHOだけが受信していたとしても、そこからマシロフへ情報提供をしていたかどうかも不明。



正直、陰謀論レベルの会話だ。「可能であるかもしれない」程度の可能性であり、コレが本当に実施されているかはまた別問題だ。


だが――何故この話をしているか、というと。



「海藤雄一、もしもの話だ」


『ああ』


「自分たちは今まで『FDPの中に生きるNPCキャラ達に自我が生まれ、そのキャラ達をFDPが並列処理している内に、FDPも自我を発生させた』と認識している」


『その通りだ』


「そしてさらに、こうした事態が発生した理由は『FDPという世界に自我が生まれた後、ログインしたお前のデータを閲覧した彼女が人類に対して失望、人類が暮らす第二の生ある場所をFDPと定めようとした』と認識している」


『恐らくその流れで間違いないだろう』


「この中のプロセスで、もし、もしだぞ? マシロフが改竄できそうな部分は、どこだ?」


『私のログインだ』



 溜めもせずに言い切った雄一の言葉に、自分が「何故そう言い切れる」と問う。



『そもそも、私のログインをFDPが垢BANする理由がどこにある?』


「お前の事が嫌いとか」


『いや……まぁ確かに考えられるが、彼女はその時自我が芽生えて間もない頃と言っていたのだろう? そんな彼女が私の記憶を閲覧してすぐ、テストプレイをする暇も与えずに垢BANする理由は無いだろう』



 確かに、FDP――雨宮美穂の姿を模した彼女は「テストログインをした海藤雄一の記憶データを閲覧して」と言っていたが「彼を垢BANした」とは言っていなかった。



「つまり――雄一のログイン後、ログイン情報を解析したマシロフが速攻でお前のログインを禁止した可能性がある、という事か」


『流石にFDP内に生きるNPC達や、FDPに自我が芽生えた事を促進させるような技術はマシロフにも無いとは思う。


 もしそんな技術があるなら、そもそも人体の量子化移動や量子コンピュータ技術など、私の技術を盗まなくとも簡単に再現可能だったろう』


「というかそもそも、それだけ通信傍受と情報改竄が出来るのならば、素人考えだとFDPというより量子ネットワークの構築についてデータを相当に盗めたような気もするんだが。今更その情報を得ようとするか?」


『いや、そこはどうだろうね。そもそも量子通信の内容解析や改竄は出来ても、それ自体の再現という点では難しいんじゃないかな。


 出来るとしても再現に数年以上は年月がかかりそうだし、もし仮にマシロフがマザーコクーン関連やFDPに関わる量子化運動や、そもそも量子コンピュータ技術を金で買えるとしたら、その数年と開発期間を短縮できるんだ。恐らく買うよ』


「そして、それらを買う為には、グレイズ・コーポレーションには何が何でも失敗を積み重ね、事業縮小をしてほしい、という事か」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ