チュートリアル-05
この、リングってなんだ?
説明文にも???しかなく、更にモデルもただの指輪にしか見えない。
「あの、メイドさん。このリングって」
『ああ、リングに関してはお答えできません。システムでーす!』
「いやでも」
『システムでーす!』
有無を言わさぬって感じだ。まぁこの辺は流石NPCと言った所か。
オレ達は視線を合わせ、それぞれ考えた上で装備を選ぶ。
まず選んだのはマリアだ。
「まぁアタシはアメリカ人だし、やっぱコレでしょ」
と意気揚々とウェポンガンを選んだ。アメリカ人が皆みんな銃選ぶみたいな偏見やめなさい。
次に選んだのはツクモだ。
「生粋の日本人は、皆刀好きなんすわぁ。ちなみに私は鶴丸推しですわぁ」
と言ってサムライブレードを。だから日本人が皆みんな刀好きみたいな偏見はやめろ。ていうか鶴丸って何?
さらにシモネ……いや、ハンドルネームで行こう。カーラさんが選ぶ。
「ンー、マヨいマース……じゃあ、オーきいオナベとかカキまぜヤスソーなスティックにしマース!!」
選ぶ基準そこ?
続いて……松本さんはどう呼ぼう。エリチリは言いにくいし、エリでいいか。エリが選んだ。
「ふひひ……マジックガンって、いい……これ、力ないヒロインが、魔法と、銃の力を使って、非力ながら、敵倒す的な……うは、テンション、みなぎって来た……っ」
みんなよりまともな理由に聞こえたけど考えてみたらイメージの問題には違いなく、コイツらホント我が強いって再認識した。
で、オレはというと……ずっと称号の事ばかり考えている。
恐らく、皆の様に選ぶテストプレイユーザーもいる事だろう。逆にリングを選ぶ奴と、リングの使い方もわからずに使い込む奴が、一体どれくらいいるんだろう。
「メイドさん、リング選んでる奴って、全体のどれくらいか、言える?」
『現在はゼロでーすっ!』
「あ、それは言えるんだ。でも、そうか、ゼロか」
なら、オレは迷わずリングを選ぶ。
世にあるゲームでは種類別に武器を何度使用したかカウントしているゲームが多い。そういう称号がある可能性も否定できない。
なので誰も選んでない、もしくは選んだが利点が分からず止めてしまった者の多いリングで戦う事にする。
『では、武器選択も終了した所で、このゲームの流れをご説明しますねーっ!』
メイドさんは、右掌を平面にすると、そこから映像のようなものを映し出した。
『まずこの街は、ヒト種が最初に平和を作った始まりの街【アルゴーラ】です。皆さんはここからゲームを開始していきます。
ですが、このプログレッシブには大都市が五つ、また細かな村々が二十程ございます。集落を合わせると約三十程です。
そして、資金があれば自分の好みで家を建設し、居住する事も可能で、それは街や村だけに限らず可能ですが、ダンジョンと明確に設定されている場所には建設できませんので、悪しからずご了承くださーい!』
映しだされる映像は、彼女の言う今の街【アルゴーラ】の映像かと思ったら、今度は見慣れない風景の村や、テント張りの集落にも似た場所も映された。
『そして、街や村の人々は、何か困っている事がある可能性があります。その困り事を解決していく【任務クエスト】をこなす事で、モンスターを倒したドロップ報酬以外にも報酬を貰えます!
それはお金であったり、そのヒトしか持ち得ない物だったり、様々です! なお、全く同じ【任務クエスト】は原則発生いたしませーん!』
ん? ちょっと待て、今なんか凄い事言わなかったか?
「質問、というか確認いいか?」
『ハイ、どうぞ?』
「同じ任務クエストが発生しないって、それは例えばオレがそのクエストをクリアした後、マリアがそのクエストを受注できない、みたいにも解釈できるんだけど」
『その解釈で全く問題ありませーん!』
「いや、でもそうするとプレイヤー間でやるクエスト数に差が出ちゃうんじゃ」
『心配ありません! 任務クエストは基本同じクエストが登場する事はありませんが、代わりに【通常クエスト】というクエストが、全ての街村分を合計すると二千個以上存在し、無限に受注可能だからでーす! 任務クエストは、言ってしまうと追加要素のようなものです。
それに言っちゃうと……解決してあげたのにずっと同じ困りごとを抱えたままのヒトって、おかしくないですかー?』
そこはリアリティ重視なのか……。
『では少々飛ばしちゃいましたが、通常クエストについてです。通常クエストは街村に必ず一つ以上存在する【クエスト受付事務所】という場所で常時受け付けております! 各場所にアタシの姉妹がいますので、仲良くしてくださいねーっ!』
まぁ想像してたけど、多分この姉妹、名前はアイウエオ順でア~ンまでいるんだろうな。ンンドさんはホントに可哀そうな名前だと思う。