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選択の時-03

「無い物ねだりをしている場合ではないな。一応私もミサトと連絡を取り、なるべく一人で行動は避けるように注意してあるが、しかしFDPの消滅、海藤雄一の余計な事によって、他の異常動作が起こるかもしれない。なるべく多人数固まり、安全を確保した後に行動する必要があるだろう。


 幸い、残り日数はまだ九か月残っている状態だ。グランテとアバルトの討伐を優先出来るし、今回止む無く攻略組から離れてしまった者には、なるべく日常生活で得られそうな称号獲得へと動いてほしいとお願いしてある。アルバイト等は我々が出来る事じゃないし、そこの称号が残りの一個と言う可能性も多分にあり得るからね」


「残る攻略組はどんな風に動かすの……?」


「残念だが、今後は安全を優先して小型モンスターの大量討伐及び、レイドボス対応に従事して貰う。こちらも幸いな事に、リングを既に取得している面々は全員が攻略組に残ってくれているし、ミュージアムに登場するレイドボス程度であれば討伐は可能だろう。……正常動作さえすれば、だが」



 そうした異常動作と思われる事態が発生した場合は、すぐに全体へ報告するように指示は出してあるし、どういった攻略をしていくかはチームに分けて判断するようにも指示しているとした彩斗の判断に納得したカーラとエリは頷き、今はこの場で情報共有する必要がある内容はコレで全てかと頷いた。



「では、我々も安全を優先し、今日はここに泊まっていくと良い。幸い客室はあるしね。明日の朝から移動を開始しよう」


「お世話になりますね、彩斗」


「ふひ、お世話様っす」


「遠慮は必要ないからね。……次にここへ戻ってくるのが何時になるかも、そもそも戻ってこれるかも分からないから、満足いくまで使ってやろうじゃないか」


「サイトー?」


「おっと、デリカシーの無い発言だったかな? しかしそれ位の覚悟を持って挑むのだと理解してくれないかな、カーラさん」



 不敵に笑みを浮かべる彩斗だったが、しかし彼女の言葉に偽りはない。


これから彼女達が挑むのは、本当に生か死か、二つに一つのデスゲームだ。


故に、生き残る為に必要な事も、もし死んでしまった時の事も考えて行動しなければならないのは事実である。



――しかし、三人は考えたくなかった。



肉体も無く、ただ死んでしまうと量子の粒となって消えていくこの世界で、遺せるモノ無く消えてしまう事を。



**



ガスラ砂漠には基本的に、砂漠地帯を駆ける二足歩行型モンスターであるムガルが出没する。


普段であればただ無視するだけの存在であるが、しかし現在は不意打ちによって殺されてしまう危険性を排する為、可能な限り発見次第討伐する事によってリスク軽減をする他ない。


注意深く周りを見渡し行動するマリアと、彼女の背を守る様に、しかし震えながら胸に手をやり、何時でも動けるように砂漠の砂が口内に入り込もうと歌う事を辞めぬリリナ。


だが、警戒する二者を無視し、ただ我先にと砂漠をズンズンと進んでいく一人の少年が。



リッカである。



彼は、マリアがムガルを見つけるとウェポンで撃ち、倒しという状況をしっかりと見定めながらもどんどん先へと歩んでいく。



「リッカ! ちゃんと警戒しなさいってば!」


「してるよ。……二人とも、止まれ」



 手を広げ、マリアとリリナに止まるよう指示するリッカ。


岩陰に何か、動く気配を感じた彼が、装着されているリングに【光のアイコン】をかざし、変身を果たす。



『Progressive Advent Savior.』



 変身音声と共に、リッカは地を強く蹴りつけ、空へと舞い上がり、上空から岩陰の向こうへと跳びつつ、顕現された大剣――フル・ダイブ・グランテのスロットに【技術のアイコン】と【灼熱のアイコン】を装填。



『Attack Technic.』『Fire Active.』



 岩陰の向こう側にいたモンスターは【装甲獣】レアルドスだった。その銀色に輝く、身を守る装甲の獣に向けて、空中でスラスター制御を行い急速に近づいた彼が、乱雑にフル・ダイブ・グランテを上段から振り込み、先制攻撃を仕掛ける。


突然の攻撃に慌てるようにしたレアルドスだったが、しかしリッカの姿を認識すると、装甲の隙間からブシュゥと水蒸気を放出。


 熱を帯びた水蒸気が鬱陶しく感じ、リッカは表情をしかめながら、排他された技術と灼熱のアイコンを取りつつ、続けて【駿足のアイコン】と【氷結のアイコン】を装填。



『Run quickly.』『Frozen Active.』



 超スピードで駆け抜けるリッカの動きを捉える事が出来ず、ただ脚部に向けて振り込まれるフル・ダイブ・グランテの一閃。


それにより脚部が段々と冷却し、動きを抑制できたことを確認した瞬間、排他された駿足と氷結のアイコンを受け取りつつ、リングへと【光のアイコン】、【氷結のアイコン】、【灼熱のアイコン】を読み込ませる。



『Savior』『Frieze』『Flame』


『Third Progressive・Last・Action』



 三色の光が右脚部に集約し、それは確かな力となる。


寸前、動きを抑制されているレアルドスに向けてフル・ダイブ・グランテを投げ放ち、装甲の隙間に刺さった事を確認すると、リッカは地面を蹴りつけながら駆け抜けて、フル・ダイブ・グランテの柄に向けて叩き込んだキック。


刺し込まれていた大剣が、キックによって押し込まれて貫通。


 そのまま爆散して散っていくレアルドスを見届けるも、しかし今の騒動を聞きつけて無数に湧き出すムガルを確認した。


砂をかき分けるように脚部を動かして近づいてくる、その数はおおよそ十二体。


リッカは舌打ちをしながら、右手を高く振り上げ、命令を下す。



「……絶対に逃がすな。殺せ」

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