混沌の世界-05
オレとマリアと先輩が顔を合わせ、その【ジョウコウシステム】とやらの意味を図りかねているが、ツクモとエリとカーラは彩斗とミサトさんを見据えて、何かそのジョウコウとやらの意味を理解しているようだった。
「あのお三方。もしかしてジョウコウって情熱の情に交わるって書いて情交ですのん? そこントコ詳しく、詳しくッ!」
「ま、マジで!? あのFDPとかいう女、私にわけわかんない宗教勧誘する暇あるならそっちの情報私に頂戴よ! そしたら私寝返ってたかもしれないのに!」
「ハワァ……ワ、ワタシもショジョなのデ、エッチなのはチョーット、ハズかしーデスねぇ……っ」
ツクモの問い方で何となくオレと先輩は意図を汲んだが、マリアが相変わらず首を傾げてオレの袖をクイクイと引っ張った。
「ねぇリッカ、アタシ英語で聞こえてるけど、そのジョーコーって所は日本語のままなのよ。意味教えて意味」
「えーっと、まぁその……」
「マ、マリアさんは知らなくていいです」
「リリナまで何よ!? んー、でもカーラの口ぶりからして、ジャパニーズHENTAIな意味なの?」
というかオレが気になるのはマリア側に上手く翻訳が回ってなかったという事はカーラもジョーコーとだけ聞こえた筈なのに、彼女は意味が分かった。思いの外カーラは耳年魔なのかもしれない。
『一応今後の共有目的として、恥ずかしいかもしれないが問うけれど構わないね、彩斗』
「私は構わないが」
「いえ、その、私は恥ずかしいんですけど」
これから色々問わねばならないとする雄一さんの言葉にケロリと返す彩斗とは裏腹に、ミサトさんはちょっと顔を赤めている。むしろオレとツクモにはそうして恥ずかしがる所が可愛らしく見えてしまう。
「まぁ他人から色々聞かれても困るから私からぶっちゃけよう。そう、私とミサトは情交システムを利用して、昨日は激しくエッチな事をした」
『私はオッサンなので古い問い方になってしまい申し訳ないが、ABCではどこまで?』
「本当に古い言い方で聞いてきたね。私とミサトは女性同士なのでコレが適切かどうかは不明だが、まぁCという事でいいんじゃないかな?」
「ねぇリッカー。ABCって何かの隠語? アタシわかんないんだってば」
「マリアさんは知らなくていいんですっ! 純粋無垢なままいて下さいっ」
「何でリリナが怒るのさ!? 意味知りたいって言っただけじゃんっ!?」
『Cまでか……と言う事はインナーを含めて服を脱ぐ事も、相手の身体に直接触れる事も出来たわけか』
「まぁ私も普段は着エロの方が好きだが、昨日は体温を感じたかった事もあり全裸で致したね」
「彩斗……そこまで、鮮明に説明は……必要ないでしょう……っ」
ミサトさんが耳まで真っ赤にしてプルプル震えながら顔隠してる!
『じゃあ私も聞きますねぇ。キスも出来ました?』
「出来たよ。メチャクチャしたよ。このゲーム、普段はキスも出来ないんだからねぇ」
「え、このゲームってキス出来なかったん? でも結構普通に触る事とか出来るじゃん。カーラ、おっぱい揉ませて?」
「ハーイ、どーぞーマリア!」
あ、マリアこの野郎!? どさくさに紛れてカーラのおっぱい揉んでやがるしカーラも普通に応じてる! 羨ましい!
『服から上での接触は一応当たり判定他は存在する。だが例えばマリア、カーラさんの服より下に手を入れようとしてみてくれ』
「? はいよ」
あー! 今まさに服の隙間からカーラのインナーに手を入れ込んで直接おっぱい揉もうとするマリアが! でもちょっとその光景もエッチだ。
「あれ、入れれない……っ、チクショ、この……っ! 直接揉ませろ……っ」
マリア、なんかちょっと欲望漏れてるぞ!?
『入れれないだろう? 全年齢を対象として開発したゲームだから、子供や女性が性犯罪に巻き込まれないように、そうした処理を施している。
だが――情交システムを起動すると、この処理が外れ、ある程度の行為をする事も可能となるらしい』
「感覚なども普段の時とそう変わらなかった。かなり精度が高いと思ったが、ミサトはどうだった?」
「えっと、その……ええ、まぁ、気持ちよかったので……感度も普通の肉体と、同程度、かと……思います」
彩斗、ちょっとミサトさんが可哀想になって来たから素でそういうの聞くのはやめて上げて。
『そして、この【情交システム】に関して、問題が二つ存在する。
まず一つ目。これは全プレイヤーからも収集しているが、私は普段からプレイヤーの行動などをログで収集し、それを解析する事によって現状を把握している。人数が多いから、メインで閲覧しているのはここにいる八人だけどね』
「それがどうかしたのか?」
『恐らく昨日の夜、彩斗とミサトさんは情交システムを使用したのだろう。このタイミングから、彩斗とミサトさんに関するログデータも、君達二人のデータ自体が私には閲覧が出来なくなった』