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混沌の世界-04

「なら、姿の事は、いいんじゃん……? どっちかっていうと、あの人が何企んでるか……それが重要、だと思う」


「アイツ、明らかにエリを狙っていたからな」


「私やミサトも、だ。恐らくは海藤雄一に敵対しうる者を見定め、味方へと引き入れようとしていたのだろうとは思うがな」


「――あの人、私に『この世界の有用性を叫ぶのだ』って、言ってた。前に現れた時は、サービス終了って言葉を聞いて、意味を知って、凄く焦ってた。あの人は、多分」


『ゲームデータの削除を、君達がこの世界から脱出し、ゲームサービス終了に怯えている、という事だね』


「……ソノ、ミホとおんなじスガタをしてるFDPッてNPCにハ、カンジョーがあるンデスよね?」


『その通りだ』


「そのカノジョは……ホントーに、FDPとユーセカイを、サクジョされないヨーにだけ、ウゴいてるンでしょーか? ナンダガ……オハナシをキーてるカンジ……ジブンが、キエないタメじゃなくて……」


「カーラ?」



 ハッキリしない彼女に首を傾げると、彼女はやがて首を振って「ナンでもないデス」と言葉にするのを諦めたように見えた。



「企みも恐ろしいが、彼女には厄介な権限が与えられていると考えている」



 彩斗がメイドに視線をやると、彼女も頷いて映像を出力。恐らく通信回線を経路して、雄一さんにも映像を見せている事だろう。



『これは私が駆け付ける事が出来た時の映像ですが――プログレッシブ・アバルト、プログレッシブ・グランテの二体が、本来発生し得ない瘴気の谷に現れました』


『アバルトとグランテは当分実装予定も無かった後期エンドコンテンツのモンスターでね。モデリングもモーションも完成はしていたが、まさかFDP一人で実装まで漕ぎつけるとは思わなかった。そればかりか彼女は、本来生息域では無い瘴気の谷に発生させたのだろう? となれば、彼女にはメイドを超えた越権行為が可能という事になる』


「ねぇメイド。ミュージアムに四体のレイドボスが同時出現した事件、あったわよね。アタシら四人で討伐した奴」



 マリアがオレと彩斗、ミサトさんの三人を指しながら、かつて先輩が歌姫ジョブを取得する時、オレ達に降りかかった事件を思い出す。


本来一体ずつしか発生しない筈のレイドボスが四体同時に出現した事。


そしてそれが、争うことも無く、徒党を組むようにしてミュージアムへと進行を仕掛けてきた事。


そしてその出現を――メイドには止める事が出来ず、止む無くオレ達へ救援を求めた。



「アレも今思えばアイツの仕業としか思えないんだけど、あの時アンタ、禁足事項だからって答えてくれなかったじゃん?」


『……ええ、そうですね。現在も何故そうなっているか、その仮説も含めて説明は出来ない筈なんですが』


「が? 何よ」


『海藤雄一と通信を繋げている関係か、はたまた別の理由か、今現状はお話が可能ですね。


 正直あの時はFDPの都合でああなったのかを断言できませんでしたが、今ならアレがあの子によって引き起こされたと断言しても問題はないでしょう。


――そして、本来はラスボスであり、しかもまだ未実装だったアバルトとグランテを実装できるほどに、ゲーム処理を変更できるという事は、今後も何かしてくる可能性を、否定できないのです』


「けどそれも、分からないって事だろ?」


『ええ。出来る事が多いという事は、それこそ打てる手が多い事に他なりませんので、警戒のしようも無いという事と同義です。あの子は自我も生まれたばかりで自分自身、何がしたいのか、どうしたいのかを理解しているかも怪しいですしねぇ。気まぐれでどんな危ない事を仕出かしてくるかもわかんないって事です』


「以前、海藤雄一はエラーを引き起こしているAIを見つけた場合は報告してくれと、そのAIから何か辿れる可能性があるという事を言ってましたが、それはどうですわぁ?」


『あの子の足取りが掴めるのが一番好ましいのだが、分からなければ解析も出来ないのが現状でね。アンド、あの子のNPCタグナンバーとか分からないかな?』


『その辺はあの子が隠匿してるのかどうかはわからないんですけど、イマイチ掴めてないんですよぉ』


『となると美穂さんのグラフィックモデルからログデータを追うしかないな。時間がかかるよ』



 どうにも、今後の事を決めるにしたって決定打が無さすぎる。これ以上あのFDPから攻略の糸口、彼女が今後どう動くかを見極めるのは難しそうだ。



『ならこれ以上は時間の無駄ですねぇ。……ここに来てくれるのが一番好ましいんですけどね。今なら海藤雄一と通信繋げてますし、この状態ならログデータもすぐ追えるでしょうから』


『無い物ねだりをしても仕方がない。ではアンドとしては他に聞きたい事は?』


『私はこの議題で終了です。じゃあ次は質疑応答ですね――とは言ってもこれまでで結構話しちゃいましたが』


「では、私とミサトからいいかな?」



 率先してメイドの発言に手を挙げたのは、彩斗だった。



「海藤雄一、聞きたい事がある」


『ああ、私も君とミサトさんに聞きたい事があってね。恐らく同じ事を聞きたがっているのだろうな』


「何」


『彩斗、ミサトさん、二人に聞きたいのは【情交システム】についてだ』


「……なるほど、確かに同じ事を聞こうとしていたな」


「ええ。海藤雄一は私達のログデータをしっかり追っている、という事は分かりましたね」


『だが問題は、恐らく君達が情交システムを使ってからだと思うのだが、二人のログデータが追えなくなったんだ。何が起こっているのかを知りたい』


「それは私達の質問だ。情交システムとは何だ、アレは海藤雄一が実装した機能ではないのか?」


『少なくとも私が実装した機能ではない――つまりは』


「あのFDPが実装した新機能、と言いたいのですね、海藤雄一は」

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