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松本絵里-02

 瘴気の谷。


 バスラ農村を超えた先にある一帯で、ここは炭鉱開発で栄えていたものの、石炭を主食とする大型モンスター【石炭獣】ガルロットの大量発生によって事業は撤退、後にこの開発と合わせてガルロットの死骸から発せられる有毒ガスの蔓延し、ここら一帯は瘴気の谷と呼ばれるようになったという。


と言うのが、ゲーム内でのストーリー設定。


では実際にはどういうダンジョンかと言えば、流石炭鉱という事もあり、良質な鉄鉱石や石炭、果ては瘴気に耐える事が出来る小型・中型モンスターの堅牢さも合わせて、その素材は高値で取引されるほか、武器や防具の材料となる。


 ゲーム中では素材を使った加工などは行われていないが『条件を満たしたプレイヤーだけが購入できる装備』等があり、その条件が特定モンスターから取得できる素材を納品する事、みたいなのが多いので、この瘴気の谷は戦力アップを図るには色んな意味で最適な場所だ。



ただ――モンスターが基本、強い。



『っ――、!』



 今、プログレッシブ・フレイム状態で弾き飛ばされたオレはぬかるむ地面を滑りながら衝撃を殺しつつ、氷結のアイコンを手に取り、リングへとかざす。



『プログレッシブ・アップ――!』


〈Progressive frozen Active.〉



 プログレッシブ・フリーズへとフォームチェンジを行ったオレが、敵モンスター――【石炭獣】ガルロットへ駆け出す。


ガルロットは全身を朱色と黒で染めた、全長七メートル程度のモンスターだ。物理的な硬さはないが防御力が高い上、体内にため込んでいる石炭を起爆剤にして爆発攻撃を行う特性がある。



「リッカ!」


『分かってる! ――先輩っ』


「うんっ」



 マリアが合図を出すと共にウェポンガンを抜き放ちながら技術のアイコンをリングへとかざし、プログレッシブ・テクニックへとフォームチェンジ。さらにもう一つ技術のアイコンをウェポンガンの装填口へ入れ込むと、トリガーを連続で六回引き、放つ。


放たれる銃弾は全て真っすぐに放たれる事無く、四方八方に拡散するも、しかし最終的な着弾地点としては全て同じ場所に。


ガルロットの皮膚に一撃が入るとその場所が小さく爆発を起こすものの、二射目以降からは爆発は無く、さらにウェポンガンの特性として着弾地点は肉質軟化で防御力が落ちる。


だがガルロットは元々瘴気の谷に発生するモンスターで、非常にデバフ付与率が低い。ウェポンガンの肉質軟化もどの程度効いているか、見た目では分からない。


ならばデバフではなく、バフを盛るだけだ!



 先輩の歌声が聞こえる。


歌姫のジョブを取得している先輩がリングを装着し、放つ歌声は聞くプレイヤー全てに作用されるのが特徴だ。


全身の身体が軽くなる感覚と共に、オレが突き出した脚部が飛び跳ねながら今オレの前に着地したガルロットの膝を蹴る。


プログレッシブ・フリーズであるオレの攻撃にも、ウェポンガンの攻撃と同じく肉質軟化効果はあるが、コレも付与率のせいでそほど防御力ダウンは無いだろう。


だが、それがどうしたと言わんばかりに、オレとマリアは撃ち、打ち、デバフを盛り続ける。


デバフ付与率が低くても、こちらの攻撃にはバフが掛かっている。その上で多重にデバフをかけ続ければ、何時かは下限値にまで届く!


ガルロットが叫び、全身の朱色を濃くしていく。オレが一歩下がりつつ先輩の体を抱き寄せ、飛び跳ねると同時に全身から可燃性ガスを発生させ、地面を殴る事でそれを起爆したガルロット。


起爆範囲外に逃げていたオレと先輩、マリアの三人が視線を合わせて、まずはマリアが爆風の中を突っ走る。



「ずぉおおりゃあ――っ!!」



 脚部、腕部に搭載されたスラスターを強引に稼働させて空を駆けながら、ガルロットの上空を取ったマリアが、灼熱のアイコンをかざしてプログレッシブ・フレイムへとフォームチェンジ。


敵の頭上めがけて放つ銃弾。着弾と同時に爆発していく皮膚。


そしてオレは、駿足のアイコンをかざして、プログレッシブ・スピードへとチェンジする。



『トドメ、行くぞマリア!』


「アタシに指図すんじゃねぇわよっ!」



 弾丸を放てるだけ放ったマリアが上空で身体を回転させながら、腰を捻った大振りのキックを顔面へ叩き込む。


姿勢を崩すガルロットへ、オレは右脚部に力を籠めると同時に光を収束させ、地を蹴った。



『プログレッシブ――!』


「ラスト・アクション――ッ!!」



 オレが敵に向けて超高速で放つ十二撃の拳と、最後に跳び上がって腹部へと叩き込んだ一撃。


マリアが先ほど蹴り込んだ衝撃を利用して、右腕部に籠めた業火を纏いしグーパンチ。


それが同時にガルロットの頭部へ叩き込まれると、敵はグラリと意識を閉ざし、そのまま倒れながら爆発四散し、消えていった。

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