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密談-02

 危険性を提起する事が出来なかった理由――それは恐らく、それほどまでに危険なゲームであれば、FDPというゲーム自体を削除し、新たに作り直せと命じられる事を、恐れた可能性がある。



「確かに、このFDP、信じられない完成度だもんね。一開発者が、こんだけの完成度を誇るゲーム、危険だからって理由だけで、ポンとゴミ箱行きにする事、無理かも……」


「だがこれだけ問題が起きてしまえば、それこそただの時間稼ぎにしかならないではないか」


「そう、ですね。仮に私達二百五名が救出できずに肉体が消滅してしまえば、世論は『そんな危険なゲームを今すぐ削除しろ、どうせもう助け出せる人はいないんだ』と叫ぶはず。


 もし我々が無事にログアウト出来たとしても同じ事です。もうログインしている者がいないのならばと、データの削除を叫ばれるだけです」


「自分はずっと考えていた。何故海藤雄一はこのゲームのデータを最初から削除する事や停止する事、もしくはコクーンを破壊せず、先行プレイを止める事が出来なかったか。


 そして、街のNPCやメイドシリーズ、海藤雄一本人と話す事で、少しだけ分かった気がする。


彼は――『このゲーム世界で生まれた命を助けるつもり』なんだろう」



 少々、ツクモ以外の面々が固まった。


しかし彼の言葉を噛みしめながら思考し、自分達の頭で考えだした結論を、エリが代表して言葉に放つ。



「……海藤雄一は、自我が芽生えたNPC達を削除する事が、出来なかった……?」


「彼にとっては、大切な子供の様な存在だからな」


「しかしだとしても、世論はそれを許さないでしょう。危険性のあるゲームと言う存在を前に、私達の救出が出来ようが出来まいが糾弾し、削除を求める筈です」


「これもあくまで仮説でしかない。――だが、NPC達に救いの言葉を語る事が出来る者がいる」


「それは、誰だい?」


「自分達、ログインをした二百五名だ」



 ログインした二百五名が、このゲームに存在するNPCが持つ自我を世間へと叫び、彼らは確かにこの世界で生きているのだと、それをただ危険だからと殺すのか、と叫ぶ事が出来る。



「少なくとも自分は――この世界にいるNPCが削除される事を、黙って見ている事は出来ない。


 この世界にいるNPCは皆、この世界で確かな生を得て、一人一人が自分たちの命を尊び、日々を過ごしているのだから」


「海藤雄一は、その為に先行プレイ会を止めなかった、という事なのでしょうか? そして、先行プレイ会でログインしたユーザーを救う事の出来る人材として、予め私と彩斗、そしてリッカさんへと救いを求めたのでしょうか?」


「考えたくはないが――確かにそれをリッカやマリア、そしてあのカーラさんに伝えたくないわけだ」


「カーラさん、多分マジでキレるもんね」



 カーラ・シモネットは、普段こそ温和で優しい女性であるものの、しかし誰かを危険に晒す人や、誰かを利用する事に酷く敏感だ。


ましてや、海藤雄一が利用した人物が他の誰でもないリッカともなれば、彼女の怒りは目に見えて明らかだ。



「けれど我々は海藤雄一の持つ情報を当てにするしかない。当該称号がどれか分からずとも、彼が今後攻略に役立つ情報をくれるという点に誤りはない」


「そう、だねぇ……ま、私もちょいと頭に血が上ったし、やり方は気に食わないけど、リッカ君やマリア、カーラさんにバレると面倒だし、隠しとくよ」


「では話を進めましょう。――ツクモさん、エラーAIについて、何か進展はありましたか?」



 ミサトの言葉に、ツクモは首を振って「全然ですわぁ」と、それまでとは異なりあっけらかんとした態度でそう言った。



「そもそも全NPCがある程度個性を持ってるにも関わらず、エラーを起こしたAIを見つけ出せとは相当な難題っすわぁ」


「まぁ、それもそうか。私達もある程度色んな集落や村を回る事で調べてはいるが、どんなエラーAIかも定かではないしな」


「何か海藤雄一に心当たりがあったり、しないかなぁ……色々企てるなら、少しは何か良いアイディアをくれても、いいのに……」


「心当たりですか。私達にとっての怪しい人物は、それこそメイドしかいないのですが」



 と、話をしている最中、ツクモはミサトの言葉に、思い出した事がある。


以前、リング取得イベントをこなしたリッカの戦いを見つからぬように監視していた時、意図せずにメイド達の会話を聞いてしまった時だ。



「……一つ、心当たり、あるかもしれないっすわぁ」



 ツクモの言葉に全員が彼へ向いた――が、そこでツクモを除く全員が、ギョッと表情を驚かせ、立ち上がる。



「? ――!?」



 ツクモも、自分の背後に何かあるのかと思い振り返ると、同じ反応を示す。


何も纏わず、生まれたままの姿で彩斗とミサトの家に立つ、女性だった。


その体は青白い発光体が集まる事で姿を模しているかのように青白く発光しており、節々はドットが欠けていて形を形成しきれてはいないが、それでも大まかな外観を見る事は出来る。



『疑問。三星彩斗、明石三郷、九十九任三郎、松本絵里。四人はフル・ダイブ・プログレッシブという世界に身を置き、この世界で第二の生を歩む事を受け入れるか?』



 声も綺麗な女性の声で、それは機械音声の様な作られたモノではなく、確かに彼女から発せられているのだと分かる。


だが、何かおかしい。

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