Full・Dive・Progressive-01
この世界は、プログレッシブ。
千年以上の歴史を積み重ねる広大な大地に、人間、エルフ、獣人、竜人の四種族が居を構え、時には争いながらも共存を続け、今は戦乱の無い平和な世界となった。
だが、その平和は、長くは続かなかった。
突如、人知を超えた異形――モンスターがプログレッシブに現れ、人々を、街を、全てを、滅ぼそうとしていた。
だが、そんな時――プログレッシブの世界に、救世主が現れる。
彼らは武器を持ち、戦う。
街で日常を謳歌する。
民に混じり、畑を耕す。
そうして民に笑顔をもたらしていく。
そして時には、永遠の愛を誓い合って、共に暮らす者もあらわれる。
この世界は――彼らの手に委ねられたのだ。
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そこは、薄暗い洞窟の入口だ。
オレ――リッカは、右手の中指に装着したリングを整えながら、背後に立つマリアへ声をかけた。
「マリア、準備はいいか?」
「誰に言ってんのよ。完了してるに決まってんじゃん」
彼女はニヤリと笑みを浮かべると同時に、右の太ももに備えていたホルスターからリボルバー拳銃を取り出した。
「カーラは大丈夫か?」
「ハハにオマカセデースッ!」
声を張り上げたカーラ。彼女は豊満な乳を揺らしながらも杖を構えると、それが胸の谷間に挟まってしまい「オーッ! ツクモからキいたパイスラデースッ!」と笑う。
「ふひっ、それパイスラちゃうし……どっちかというとパイ」
「言うなエリ! それ以上口開いたらド突き回すぞ!?」
「ひぎィっ、王子様なリッカ君もいいけど、リッカ君に罵られるのも良い……っ!!」
カーラの行動にツッコもうとエロワードを言いかけたエリを叱るが逆効果だったようで、彼女が持っている二丁拳銃が地面に落ちた。
「ツクモもカーラに変な事を教えるなよ。カーラが無知なイタリア人だからって」
「カーラ氏がそうなったのは私の責任だ。だが私は謝らない」
「お前はさぁ……っ」
お喋りスラングクソハゲこと、ツクモも叱るが、彼はとあるスラングを引用して返答した。
頭を抱えたオレに、オドオドとした少女――リリナが心配してくれる。
「リ、リッカ君、大丈夫? 治癒、いる?」
「ストレスで胃に穴が開いたら頼みます……っ」
さて、と声を上げ。
全員に向けて、指示を出す。
「――作戦、開始!」
先に走り出したのは、ツクモだった。
彼は背負った身長程ある長太刀を構えると、洞窟内に侵入し、奥にいた謎の存在に、切り掛かる。
それは、モンスター。名を【ガードルズ】という巨大豪獣だ。
全長は約五メートル。全身を黒の毛で覆った生物で、ゴリラのような外観をしつつ、その上で両手に巨大な棍棒のような物を持っている。
暗い洞窟内で集めた財宝などを保管する習性がある他、他に財宝などを求めてさ迷い訪れるモンスターやヒト種の存在を主食とする豪獣種で、よく討伐対象として依頼があがる。
ツクモが背後から切り掛かり、ガードルズの尻尾を切り裂くと、奇声を発しながら赤色の瞳をギロリとツクモへと向け、手に持つ棍棒をやたらめったらに振り回した。
「ファ!? めっちゃ暴れるやんけ!!」
驚いたようにしつつも、しかし攻撃を器用に避けていくツクモの姿を橋目に捉えつつ、続いて動いたのはマリアとエリだ。
「援護!」
「終わったら罵ってくださぁいっ!!」
「それはイヤ!」
互いに握る獲物の銃口を、ツクモに襲い掛かっているガードルズに向けると、まずはマリアの放った銃弾が、正確に赤い瞳を撃ち抜き、身をのけ反らせた。
しかしダメージはあるものの、その結果マリアへと向けて巨大な足をドシリ、ドシリと動かして向かっていく。
だが、二人は止まらない。
続いて放たれたのは、エリの持つ二丁拳銃から放たれた、光線だった。
それは最初こそ拡散し、一瞬消えたようにも見えたが、やがてガードルズの頭上で一つに固まると、それが氷として顕現し、塊となって、ガードルズの頭上に、落ちた。
「リリナ、カーラ! バフとデバフを頼んだ!」
「は、はいっ!」
「ハハに、オマカセデースッ!」
オレが指示すると、まずリリナがオレの手を握って、ギュッと力を込めてくれた。
歌い出すリリナ。彼女の歌声が耳に届くと、何か視界や思考がクリアになっていく感覚がした。
全身に彼女が発した力が集結し、続いてオレが集中して、右手の中指に装着するリングへ力を流動させる。
カーラは、その手に握った杖を振るう。
杖の先端に取り付けられた漆黒の宝石に似た物から、黒い靄のようなものが放出され、それが今なお氷の塊に押しつぶされているガードルズの動きを、僅かに衰えさせた。