付録二 文法(造語法、子音複語幹名詞)、もっと学びたいとき
自分のためのメモという側面がある。そのうち連声や変化表をまとめたい。
〜造語接尾辞
ごく一部の、意味が分かりやすい、よく使うものを挙げる。
語根から作る
-aka, f., -ikā グナ階梯について a 母音を延長し行為者形容詞を作る。
-in グナ階梯について a 母音を延長し行為者形容詞を作る。前綴りつきの動詞についたり複合語の後分になったりする。
-ti 抽象名詞を作る。
-tṛ グナ階梯について行為者名詞を作る。
-tra 手段の名詞を作る。
広範な語から作る
-a 第一音節をヴリッディ化して「〜に属する」を意味する。
-in 所有形容詞を作る。
-īya 「〜に属する」などを意味する。
-eya 第一音節をヴリッディ化して「〜に属する」を意味する。
-tas 奪格と同等の意味を表す。第二奪格と呼ぶ。
-tā -tva 「〜性」を意味する。論書で多用される。
-maya, f., -mayī 「〜でできた」を意味する。
-ya 第一音節をヴリッディ化して抽象名詞を作る。
-vat 「〜のごとくに」という副詞を作る。
〜子音複語幹名詞まとめ
単数と複数の主格と具格を覚えると一般パターンからだいたいの格形がわかる。男性単数主格が -ā または -ān となっているとき呼格は -an となる。女性形を作る場合何も注意しないものでは弱語幹に -ī を付す。
正規語尾
男性・女性
単数 ◆ 両数 ◆ 複数
主 強-s ◆ 強-au ◆ 強-as
対 強-am ◆ 強-au ◆ -as
具 -ā ◆ 中-bhyām ◆ 中-bhis
与 -e ◆ 中-bhyām ◆ 中-bhyas
奪 -as ◆ 中-bhyām ◆ 中-bhyas
属 -as ◆ -os ◆ -ām
処 -i ◆ -os ◆ 中-su
呼 -
中性主呼対 弱 ◆ 中/弱-ī ◆ 強-i
見出し語 -vas
vidvāṃs-, vidvat-, viduS-
主 vidvān ◆ vidvāṃsau ◆ vidvāṃsas
対 vidvāṃsam ◆ vidvāṃsau ◆ viduSas
具 viduSā ◆ vidvadbhyām ◆ vidvadbhis
与 viduSe ◆ vidvadbhyām ◆ vidvadbhyas
奪 viduSas ◆ vidvadbhyām ◆ vidvadbhyas
属 viduSas ◆ viduSos ◆ viduSām
処 viduSi ◆ viduSos ◆ vidvatsu
呼 vidvan
中 vidvat ◆ viduSī ◆ vidvāṃsi
1 見出し語 -at
現在分詞は三種類に分かれる。女性形を -antī で作るもの -atī で作るものどちらでも作るものである。どちらでも作るものは考えずに幹母音型(I, IV, VI, X 類)は -antī でそれ以外は -atī と思って、問題が起きたら修正していくのでいいのではないか。重複類の現在分詞は単語幹である。
男性単数主格 bṛhan 具格 bṛhatā 複数主格 bṛhantas 具格 bṛhadbhis
所有の -mat -vat は単数主格が長くなる。
男性単数主格 agnimān 具格 agnimatā 複数主格 agnimantas 具格 agnimadbhis
特例として arvan 男性単数主格 arvā は対格以下 arvat- としてこれに従う。
特例として mahat は強語幹が長くなる。
男性単数主格 mahān 具格 mahatā 複数主格 mahāntas 具格 mahadbhis
2a 見出し語 -an その前が単子音
強語幹 -ān- 弱語幹 -n- である。子音に挟まれた n は a に変わる。
男性単数主格 rājā 具格 rājñā 複数主格 rājānas 具格 rājabhis
注意点:単数処格で rājñi rājani ともにある。
男性単数主格 pīvā 具格 pīvnā 複数 pīvānas 具格 pīvabhis
注意点:女性は pīvarī と作る。
弱語幹で半母音の後の n は次が母音ならば半母音を母音に変え、次が子音ならば自分が a 母音になる。
男性単数主格 zvā 具格 zunā 複数主格 zvānas 具格 zvabhis
男性単数主格 maghavā 具格 maghonā 複数主格 maghavānas 具格 maghavabhis
男性単数主格 yuvā 具格 yūnā 複数主格 yuvānas 具格 yuvabhis
注意点:女性は yuvati ともできる。
特例として dos は doSan で弱語幹を補充しうる。
単数主格 dos 具格 doSā doSNā 男性複数主格 doSas 具格 dorbhis doSabhis
特例として -han は強形で -han 弱形で -ghn -ha が出る。太陽神名 aryaman と pūSan も同類である。
男性単数主格 brahmahā 具格 brahmaghnā 複数主格 brahmahaNas 具格 brahmahabhis
中性単数 brahmaha
2b -Cman, -CvaN三語幹)
男性単数主格 ātmā 具格 ātmanā 複数主格 ātmānas 具格 ātmabhis
中性単数 parva
3 見出し語 -yas
男性単数主格 garīyān 具格 garīyasā 複数主格 garīyāṃsas 具格 garīyobhis
4 見出し語 -vaz三語幹)
男性単数主格 vidvān 具格 viduSā 複数主格 vidvāṃsas 具格 vidvadbhis
特例として puṃs は似ている。
単数主格 pumān 具格 puṃsā 複数主格 pumāṃsas 具格 pumbhis
特例として anaDuh も似ている。
男性単数主格 anaDvān 具格 anaDuhā 複数主格 anaDvāhas 具格 anaDudbhis
5a 見出し語 -āñc
この系列は喉音が絡む上に異なる要素が合流しており、歴史的に複雑である。
男性単数主格 prāṅ 具格 prācā 複数主格 prāñcas 具格 prāgbhis
5b 見出し語 -yañc, -vañc(三語幹)
ud-añc など前分が子音で終わる場合も y の方に準ずる。
男性単数主格 pratyaṅ 具格 pratīcā 複数主格 pratyañcas 具格 pratyagbhis
男性単数主格 anvaṅ 具格 anūcā 複数主格 anvañcas 具格 anvagbhis
特例として tiryañc は起源的な tiraz が弱語幹で現れる。
男性単数主格 tiryaṅ 具格 tirazcā 複数主格 tiryañcas 具格 tiryagbhis
6 特例 pathin
弱語幹と中語幹をまとめて pathH とし、子音の前で H が i 母音として現れていると見ることもできそうだが、他言語と比較するとこの見方は通時的に妥当と言えないらしい。
単数主格 panthās 具格 pathā 複数主格 panthānas 具格 pathibhis
7 特例 ahan
語幹の n と r が交替する。ただしパダ語尾の前で -as のように振る舞う。
単数主格 ahar 具格 ahnā 複数 ahāni 具格 ahobhis
8 特例 ap
語尾の bh の前で異化を起こす。古くは単数もあるらしい。
女性複数名詞 āpas, apas, adbhis, adbhyas, adbhyas, apām, apsu
~Further Reading
・ウェブサイト
ペリーが引用している文典
en.wikisource.org/wiki/Sanskrit_Grammar_(Whitney)
学習サイト
www.manduuka.net/sanskrit/index.htm
ラテン文字化された諸サンスクリット原典
gretil.sub.uni-goettingen.de/gretil.html
辞書類
sanskrit-lexicon.uni-koeln.de
簡易文法 pdf
www.gshpa.chiba-u.jp/content/files/サンスクリット語文法概略.pdf
・流通している日本語の書籍
J.ゴンダ著 鎧淳訳『サンスクリット語初等文法』
同『サンスクリット 叙事詩・プラーナ読本』
菅沼晃『新・サンスクリットの基礎』上・下
同『新・サンスクリットの実践』
同『サンスクリット講読 インド思想篇』
辻直四郎『サンスクリット文法』
二宮陸雄『サンスクリット語の構文と語法 印欧語比較シンタックス』
・近年の英語の書籍
T. Gotō, 2013 *Old Indo-Aryan Morphology and Its Indo-Iranian Background*
M. Coulson, 2003 *Complete Sanskrit* 旧題 *Teach Yourself Sanskrit*
・原典を読むなら
『ナラ王物語』『ヒトーパデーシャ』『バガヴァッド・ギーター』『アビダルマ・コーシャ(倶舎論)』あたりが定番っぽい。言語学的な興味であれば後期ヴェーダ散文とか言語的に簡単かつ古くてよさげだけれど、日本語や英語で容易に手に入る解説に乏しい。詩ならカーリダーサより先にアシュヴァゴーシャ(馬鳴)を読むといい気がしている。




