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四十三〜四十五課 447-510 現在組織以外の動詞

第四十三課 

447 動詞・完了組織 

 時代が下る言語で完了組織には直説法と分詞の能動中動しかない。その作り方は全ての動詞で本質的に同じようなものである。その特徴は 1 重複 2 強形と弱形の区別 3 ある種特殊な語尾 4 介在母音 i の頻繁な使用である。


448 重複 1 頭母音が第四十一課の重複現在についての規則にしたがって重複される。


2 間か末尾の母音は、短長の母音では対応する短母音で現れる。二重母音では第二要素で現れる。しかし r (ar) は常に a で現れ重複現在のように i で現れることはない。かくして √kram-cakram √stha:-tastha: √sic-siSic √sev-siSev √ga:-jaga: √kr-cakr となる。


3 語頭の a に単子音が後続する場合(a-a から)a: となる。かくして √ad-a:d となる。


4 語頭の i と u もその類似である。強形では語根母音がグナ化し、重複母音は融合せず y か v が挿入される。かくして √iS 強完了幹 iyeS 弱幹 i:S √uc 強幹 uvoc 弱形 u:c となる。


5 長母音で始まる語根は通常の完了組織を作らず代わりに複合形を使う。しかし a:p は例外で、同じ完了語幹 a:p を作る。そして a か r で始まるいくつかの語根は完了で不規則な重複 a:n を持つ(文法家は、誤って、この重複を a か r で始まり複数の子音が従う動詞全てについてこの重複があるとする)。


449 強形と弱形 

 単数能動態で語根音節はアクセントをもち、通常強形で出る。強さに関して

1 長い母音を持つ語根で、また a で始まる語根で、強形と弱形の違いはアクセントつきの文献以外では現れない。


2 強形で中間や頭の母音はグナ化できればする。かくして √bhid 弱 bibhid- 強 bidhed- √iS 弱 i:S- 強 iyeS- √uc 弱 u:c- 強 uvoc- (§448, 4)


3 中間の a はただ一つの末子音が後続するとき三人称でヴリッディ化する。一人称でもしうる。かくして √pac から一人称単数で papac- または papa:c- 二人称で papac- 三人称で papa:c- となる。


4 末母音は一人称でグナかヴリッディをとり、二人称でグナ、三人称でヴリッディをとる。かくして √ni: から一人称 nine- または ninai- 二人称 nine- 三人称 ninai- となる。


450 語根 √bhu: は不規則に、完了語幹 babhu:- を作り母音語尾の前で v を付す。


451 語根によっては強形で母音を強めるのでなく弱形で弱める。両方するものもある。下記参照。


452 人称語尾 完了の語尾は以下の通りである。

能動

1 -a -va -ma

2 -tha -athus -a

3 -a -atus -us

中動 

1 -e -vahe -mahe

2 -se -a:the -dhve

3 -e -a:te -re


ただし a: で終わる語根は一人称三人称の単数能動で -au をとる。かくして √stha: tasthau となる。


453 介在母音 

 子音で始まる語尾は、古典サンスクリットでは通常、母音 i を介して語基に繋ぐ。もっとも重要な規則は以下の通りである。

1 三人称複数中動態の -re は常に直前に i を持つ。


2 子音で始まる他の語尾のうち -tha 以外ではほぼ全ての動詞がこれをとる。しかし八つの動詞では(re を除き)これを取らない。それは √kr 'make' √bhr 'bear' √sr 'go' √vr 'choose' dru 'run' √zru 'hear' √stu 'praies' √sru 'flow' である。


3 二人称単数能動態では規則はとても込み入っている。


454 介在母音 i を伴うとき語根末の i や i: は融合して i: となることなく y になるか(複数の子音が先行するとき)iy になる。かくして √ni: から ni-ny-i-va となる。


変化の例 A. 母音で終わる語根


455 I i か i: で終わる語根 グナ化・ヴリッディ化した e と ai は語尾の頭の母音の前でそれぞれ ay と a:y となる。§454 も見よ。かくして

1 √ni: 能動態単数一人称 ninaya / nina:ya 二人称 ninayitha / ninetha 三人称 nina:ya

両数一人称 ninyiva 二人称 ninyathus 三人称 ninyatus

複数一人称 ninyima 二人称 ninya 三人称 ninyus

中動態単数一人称 ninye 二人称 ninyiSe 三人称 ninye

両数一人称 ninyivahe 二人称 ninya:the 三人称 ninya:te

複数一人称 ninyimahe 二人称 ninyidhve 三人称 ninyire


2 √kri: 能動態単数一人称 cikraya / cikra:ya 二人称 cikrayitha / cikretha 三人称 cikra:ya

両数一人称 cikriyiva 二人称 cikriyathus 三人称 -yatus

複数一人称 cikriyima 二人称 cikriya 三人称 cikriyus


456 II u か u: で終わる語根は上の場合に従う。かくして

√stu 能動態単数一人称 tuSTava / tuSTa:va 二人称 tuSTotha (tuSTavitha ではない。§453,2 を見よ)三人称 tuSTa:va

両数一人称 tuSTuva 二人称 tuSTuvathus 三人称 tuSTuvatus

√sru: 能動態両数 susruviva など。


457 √bhu: は完了で不規則である(§450)。

能動態 

単数

1 babhu:va

2 babhu:vitha

3 babhu:va

両数 

1 babhu:viva

2 babhu:vathus

3 babhu:vatus

複数 

1 babhu:vima

2 babhu:va

3 babhu:vus

中動態 

単数 

1 babhu:ve

2 babhu:viSe

3 babhu:ve

両数 

1 babhu:vivahe

2 babhu:va:the

3 babhu:va:te

複数 

1 babhu:vimahe

2 babhu:vidhve

3 babhu:vire


458 III r で終わる語根 

1 √kr (§453,2)

能動態 

単数

1 cakara, caka:ra

2 cakartha

3 caka:ra

両数 

1cakrva

2 cakrathus

3 cakratus

複数 

1 cakrma

2 cakra

3 cakrus

中動態 

単数

1 cakre

2 cakrSe

3 cakre

両数 

1 cakrvahe

2 cakra:the

3 cakra:te

複数 

1 cakrmahe

2 cakrdhve

3 cakrire


 同様に √bhr √sr √vr 'choose' もである。


2 他の r 末語根は一人称をこのように作る。√dhr から dadhara / dadha:ra, dadhriva, dadhrima, dadhre, dadhrivahe, dadhrimahe のように。


459 末尾の r が複数の子音に先立たれるとき、次のように形成する。

√smr 1 ssmara / sasma:ra 2 sasmartha 3 sasma:ra 両数 sasmariva, sasmarathus などで r はグナ化する。


460 IV a: で終わる語根(現地で e ai o で書かれるものを含む)これらは一人称三人称単数能動態で -au をとる。そして a: は母音語尾と i の前で失われる。

1 dha:

能動態 

単数 

1 dadhau

2 dadha:tha / dadhitha

3 dadhau

両数 

1 dadhiva

2 dadhathus

3 dadhatus

複数 

1 dadhima

2 dadha

3 dadhus

中動態 

単数 

1 dadhe

2 dadhiSe

3 dadhe

両数 

1 dadhivahe

2 dadha:the

3 dadha:te

複数 

1 dadhimahe

2 dadhidhve

3 dadhire


2 √pya:, √hva: や類似の語根は弱形を単純語根形 pi: hva などから作る。そして √hva: は強形を hva からも作る。かくして juhava または jaha:va などとなる。


B 末子音を持つ語根 

461 I 中間の母音がグナ化しうる場合 

1 √bhid 能動態単数一人称 bibheda 二人称 bibheditha 三人称 bibheda

両数 bibhidiva など 複数 bibhidima など 

中動態 bibhide など

2 √tud からも同様に tutoda など 

3 √drz から一人称 dadarza 二人称 dadarzitha / dadraSTha 三人称 dadarza 両数 dadrziva など。


462 II 語頭の母音がグナ化しうる場合 

1 √iS 単数一人称 iyeSa 二人称 iyeSitha 三人称 iyeSa

両数一人称 i:Siva 二人称 i:Sathus 三人称 i:Satus

複数一人称 i:Sima 二人称 i:Sa 三人称 i:Sus


2 √uc uvoca など。


3 語根 √i 'go' もこの規則に従い iya:ya など、三人称複数 i:yus となる。


4 √rc は(§448,5) a:narca, a:narcitha などを形成する。


463 III 語頭が a

√as a:s など。√ad a:d など。ただし √az(元は √amz)は a:namza などと形成する(§448,5)。


464 IV 中間が a

1 √kram 能動態単数一人称 cakrama / cakra:ma 二人称 cakramitha 三人称 cakra:ma

両数 cakramiva など。中動態 cakrame など。

 複数の子音、有気音、軟口蓋音か h で始まる語根は全てこのようになる。


465

2 中間に a を持つ語根で、単子音で終わり、重複で変化しない単子音つまり有気音や軟口蓋音や h でないもので始まるものは、弱形で重複と縮約して一音節になり、母音を e とする。これは介在母音 i があるとき二人称単数能動態でも許される(この形を持たないいくつかの語根も同じ縮約が可能で、ほとんどの場合自由である)。かくして √pac 強形 papac / papa:c 弱形 pec となる。


能動態

単数 

1 papaca / papa:ca

2 papaktha / pecitha

3 papa:ca

両数 

1 peciva

2 pecithus

3 pecatus

複数 

1 pecima

2 peca

3 pecus

中動態 

単数 

1 pece

2 peciSe

3 pece

両数 

1 pecivahe

2 peca:the

3 peca:te

複数 

1 pecimahe

2 pecidhve

3 pecire


466

3 va で始まり単子音で終わるいくつかの語根(ya で始まるものも一つ)は音節 u で重複する(ya のものは i で重複する)。そして語根の va (ya) は弱形で u (i) に縮める。これらは u (i §463) 始まりの語根と同様に扱うが強い人称で完全な語根形を保つ。その語根は √vac √vad √vap √vaz √vas 'dwell' √vah √yaj である。かくして

√vac 能動態単数一人称 uvaca / uva:ca 二人称 uvaktha / uvacitha 三人称 uva:ca

両数 u:civa (u-uc-i-va) など。

中動態 u:ce など。

√yaj 能動態単数一人称 iyaja / iya:ja 二人称 iyaSTha / iyajitha 三人称 iya:ja

両数 i:jiva など。

中動態 i:je など。


467

4 単子音の間に a を持つが §465 の規則に従わないいくつかの語根は弱形で a を脱落させる。その語根は √khan √gam √ghas √han そして §465 に従うように思えるかもしれないが √jan である。これらは弱形を cakhn, jagm, jakS, jaghn, jajn として作る。かくして cakhana / cakha:na など cakhniva などとなる。√han はその強形を jaghan と jagha:n と作る。


468

5 語根 √vyadh √svap と他一、二は半母音から重複を作り ya と va を弱形で i と u に縮める。かくして強形 suSvap / suSva:p 弱形 suSup となる。


469

1 語根 √ah 'speak' はこの時制でのみ現れる。そして次の形のみを持つ。単数二人称 a:ttha 三人称 a:ha 両数二人称 a:hathus 三人称 a:hatus 複数三人称 a:hus と。この形は現在の意味でしかない。

2 語根 √vid 'know' は重複なしで完了を作り、それ以外では規則的で、現在の意味しかない。§417 を見よ。√vid 'find' は規則的に viveda となる。


470 語根 √ci √cit √ji √hi は完了語幹を ciki, cikit, jigi, jighi と作る。


471 完了分詞 

1 能動 完了能動分詞の語尾は va:ms (中語幹 vat 弱語幹 uS)で、弱い完了語幹に付される(機械的には最弱の分詞語幹が三人称複数能動態と同一である。もちろん s の代わりに S となる)。これが単音節の場合介在母音 i が挿入される(ただし最弱語幹で uS の前には入らない)。

かくして a √iS から分詞の強語幹 i:Siva:ms 中語幹 i:Sivat 弱語幹 i:SuS √pac からpeciva:ms, pecivat, pecuS √vac から u:civa:ms, u:civat, u:cuS √da: から dadiva:ms, dadivat, daduS となる。ただし √ni: からは nini:va:ms, nini:vat, ninyuS となる。√stu から tuSTuva:ms, tuSTuvat, tuSTuvuS となる。√bhid から bibhidva:ms, bibhidvat, bibhiduS となる。

b 語根 √gam はその完了分詞の強語幹を jagmiva:ms / jaganva:ms 中語幹を jagmivat / jaganvat 弱語幹をただ jagmuS と作る。同様に √han から jaghniva:ms / jaghanva:ms, jaghnivat / jaghanvat, jaghnuS となる。

c √vid1 'know' は vidva:ms などを作り √vid2 'find' はvividva:ms などを作る。


2 中動 完了中動分詞は接辞 a:na で作られる。これは中動態で現れる弱語幹に付される。かくして √budh-bubudha:na, √dha:-dadhana, √kr-cakra:Na, √ni:-ninya:na, √tan-tena:na


複合完了 

472 長い母音で始まる語根は完了時制で複合的な形成を行なう。二次的活用でも同様であり、上に当てはまらないいくつかの一次的語根でも任意に行なう。次のように作られる。


473 各々の活用の語基である現在語幹から作られる a: で終わる派生名詞語幹の対格に、能動態では √kr か √az非常にまれに √bhu:)の完了能動態が付される。中動態では √kr の完了中動態が付される。かくして corayati から完了形 coraya:m a:sa / coraya:m caka:ra が作られ √i:kS から i:kSa:m cakre が作られる。


474 完了の意味 古典サンスクリットにおいて完了は意味に関して未完了過去と一致し語りの時制である。よりまれである。


【補説】三人称以外の完了形はほとんど出てこない。


第四十四課 

475 動詞・未来組織(と条件法)

動詞には二つの未来がある。I 単純未来(s未来)はもう一方よりずっと古くからあり、より一般に見られる。そして II 複合未来である。


476 I 単純未来 この時制は能動と受動の直説法と分詞を含む。全ての動詞から作られる。時制標識は音節 -sya- で語根に直接または介母音 i を挟んで付される(後の場合 -iSya- となる)。語根は可能ならばグナ階梯となる。そして中間に r を持つ語根には ar ではなく ra でグナ化しうる。変化は a 活用動詞の現在直説法と全く同じである。かくして √bhu: から bhaviSyati, -te となる。


477 i を取らない場合語根子音は、語根類、重複類、鼻音類で s の前と同じ変化を -sya- の前で被る。かくして √duh-dhokSyati √muc-mokSyati √bhid-bhetsyati √rudh-rotsyati √dviS-dvekSyati √drz-drakSyati となる。(原文不明瞭)語根 √vas は vatsyati となる。


478 1 母音で終わるほとんどの語根は i を付さない。かくして √da:-da:syati √ga:-ga:syati √ji-jeSyati zru-zroSyati となる。

2 しかしr で終わる語根は i をとる。かくして √kr-kariSyati √tr-tariSyati となる。また語根 √zi: (zayiSyati) と √bhu: (bhaviSyati) がある。

3 √grah は grahi:Syati となる。


479 一般に不定詞と複合未来で i をとる語根はこの時制でもとる。しかし対応は完全ではない。この部分は各々の動詞について覚えるしかない。


480 使役活用と名詞起源の -aya- 語幹はその未来語幹を -ayiSya- で作る。かくして √cur-corayiSyati となる。


481 分詞 能動受動の分詞は未来語幹から、現在語幹と全く同様に作られる。かくして √da:-da:syant (f. -syati:) da:syama:na √kr-kariSyant kariSyama:na となる。§§260, 262 を見よ。


482 条件法 条件法という時制(直説法の語形のみ)は単純未来語幹から、現在語幹から未完了過去を作るのと全く同様に作られ、同様に活用する。かくして ada:syam akariSyam ada:sye akariSye となる。これは極めてまれにしか現れない。


483 II 複合未来 この時制は、全ての動詞から作ることができ、直説法能動態のみを含む(ヒンドゥーは中動態も記述している。実際的には存在しない)。行為者名詞 -tr で形成されて未来能動分詞の役割を果たし、その単数主格形 -ta: に一人称二人称の全数で対応する √as 'be' の現在活用形が添えられる。三人称では行為者名詞が単独で数にしたがって用いられる。


484 語根はほとんどの場合接辞 -tr の前で不定詞の -tum の前と同じ形をとる。かくして ga:tr √ji-jetr √stu-stotr √bhu:-bhavitr √kr-kartr kathaya-kathayitr となる。


485 そうして変化は次のようになる。

単数

1 karta:smi

2 karta:si

3 karta:

両数 

1 karta:svas

2 karta:sthas

3 karta:rau

複数 

1 karta:smas

2 karta:stha

3 karta:ras


アオリスト組織

486

 アオリストには三つの大きく異なる作り方があり、それぞれ変種がある。しかし形と意味のなんらかの対応により一つの複雑な組織としてまとめられる。古典サンスクリットに置いてアオリストは比較的まれである。その位置付けは未完了過去や完了と同じく語りの時制である。しかしこれらは(禁止の希求法ほどではないにしても)加音なしで小辞 ma: と共に禁止の意味で使われる。かくして ma: da:h 'do not give' ma: bhi:Si:h 'do not fear' となる。これを例外としてアオリストは古典サンスクリットにおいて常に加音を持つ。時代が下った言語では、この時制には直説法しかない(祈願法はまさしく特別なアオリスト希求法である。しかしこれはまれなのでその形を説明する必要はなかろう)。アオリストの主たる変種は三つである。I 単純アオリスト II 重複アオリスト III 摩擦音アオリスト 


487 I 単純アオリスト (1) 語根アオリスト

 このアオリストは語根類の未完了過去と全く同様である。これは a: で終わるいくつかの語根と √bhu: の能動態に限られる。例えば 


√da:

単数 

1 ada:m

2 ada:s

3 ada:t

両数 

1 ada:va

2 ada:tam

3 ada:ta:m

複数 

1 ada:ma

2 ada:ta

3 adus


√bhu:

単数 

1 abhu:vam

2 abhu:s

3 abhu:t

両数 

1 abhu:va

2 abhu:tam

3 abhu:ta:m

複数 

1 abhu:ma

2 abhu:ta

3 abhu:van


da: のように √dha:-adha:t √stha:-astha:t √pa:-apa:t √ga:-aga:t


488 (2) a アオリスト 

 これは a 類の未完了過去の能動中動と同様である。かくして √sic は一人称で asicam asica:va asica:ma asice asica:vahi asica:mahi となる。一般に語根は弱形となる。しかし r で終わる三、四の語根はグナ形をとる。かくして √a:p-a:pat √gam-agamat √bhramz-abhrazat √muc-amucat √sad-asadat √zak-azakat √srams-asrasat 不規則 √khya:-akhyat √hva:-ahvat √zva:-azvat √za:s-ziSat 2√as 'throw' a:sthat となる。√vac は avocat で √pat は apaptat となり、これと他一、二は疑いなくもともと重複アオリストであったはずである。


489 II 重複アオリスト (3)

 このアオリストは他と違ってほぼ常に -aya- による派生形活用に付されてそのアオリストとなる。この繋がりは形式的なものではなく、アオリストは -aya- 語幹からではなく語根から作られる。その特徴は重複で、独特の性質を持つ。


490 重複アオリストは古典サンスクリットでとてもまれである。今はその作り方の一、二例を挙げれば十分であろう。かくして √jan は aji:janat となり √sprz は apisprzat で √stha: は atiSThipat となる。変化は a 活用未完了過去の普通のものである。


491 III 摩擦音アオリストには四種がある。(4) s アオリスト 時制の語幹は加音のついた語根に -s- を付してできる。その母音は伸ばされる。例えば √ni:

能動態単数一人称 anaiSam 二人称 anaSi:s 三人称 anaiSi:t

両数一人称 anaiSva 二人称 anaiSTam 三人称 anaiSTa:m

複数一人称 anaiSma 二人称 anaiSTa 三人称 anaiSus

中動態単数一人称 aneSi 二人称 aneSTha:s 三人称 aneSTha

両数一人称 aneSvahi 二人称 aneSa:tha:m 三人称 aneSa:ta:m

複数一人称 aneSmahi 二人称 aneDhvam 三人称 aneSata

√labh (中動のみ)単数一人称 alapsi 二人称 alabdha:s 三人称 alabdha など。


492 (5) iS アオリスト 時制語幹は -i- の挿入を伴って -s- を付して作られる。語根は一般に伸ばされる。例えば √pu: 'purify'

能動態単数一人称 apa:viSam 二人称 apa:vi:s 三人称 apa:vi:t

両数一人称 apa:viSva 二人称 apa:viSTam 三人称 -STa:m

複数一人称 -viSma 二人称 -viSTa 三人称 -viSus

中動態単数一人称 apa:viSi 二人称 apa:viSTha:s 三人称 apa:viSTa

両数一人称 -viSvahi 二人称 -viSa:tha:m 三人称 -ta:m

複数一人称 -viSmahi 二人称 -viDhvam 三人称 -viSata

となる。このアオリストでのみ二次的また名詞起源活用の形が作られる(-aya- の使役と名詞起源は除く。§489 を見よ)。


493 (6) siS アオリストは能動態のみで、対応する中動態は s 形による。√ga: 'sing' aga:siSam などとなり iS アオリストとほぼ同様の変化である。


494 (7) sa アオリスト √diz 能動態単数一人称 adikSam 二人称 -kSas 三人称 -kSat などのように a 活用の未完了過去と同様である。しかし中動態で文法家は一人称単数 adikSi 二人称三人称両数 adiSa:tha:m -ta:m を記述している。


495 アオリスト受動 一般にアオリスト 4, 5, 7 の中動形が受動としても用いられる。この形のアオリストを普通作らない語根は 4 か 5 のように特別に受動形を作る。


496 しかし三人称単数形の特殊な作り方が受動活用の一部と認められるようになる。語根に -i- を付し、加音を伴い、通常伸ばされて、場合によってはグナ、場合によってはヴリッディとなる。末尾の a: の後には y が付される。かくして √ni:-ana:yi √zru-azra:vi √kr-aka:ri √vac-ava:ci ただし √dam-adami √drz-adarzi √da:-ada:yi となる。


【補説】条件法は反実仮想で用いる。アオリストは古典期では凝った詩でもなければあまり用いられない。知らないと出てきたとき辞書を引けない。パーリ語の過去はサンスクリットのアオリストに対応するような語形が多用される。


第四十五課 派生形(二次活用)

497. 二次活用では変化形の全体が派生的な活用語幹から作られる。この変化体系は普通、本来の意味の何らかの修正と結びつく。その活用は I. 受動活用 II. 強意活用 III. 意欲活用 IV. 使役活用 V. 動詞起源名詞である。


498. I. 受動活用 受動の現在組織、アオリスト受動として用いられる三人称単数形、-ta -na 過去受動分詞、未来受動分詞ジェランディヴについてはすでに述べた。動詞の他の部分では、必要なら、受動の意味で中動形が使われる。


499. II. 強意活用 強意活用は強調または、語根の一次活用が表す行為の繰り返しを表す。現在組織以外の形は非常にまれであり、ここで注意するにあたらない。現在組織でさえ、時代が下るとあまり使われない。強意活用は二種類に別れる。


500. 1. 第一類動詞(能動態のみ)は重複によって強意語幹を作る。その重複音節は強める。

a. 語根の a と r は a: で i と i: は e で u と u: は o で重複する。かくして va:vad da:dhr neni: zozuc となる。

b. 時に重複音節は末子音を持つ。それは語根末から取る。かくして carcar marmrj となる。

c. 時に重複は二音節を持ち i 母音が重複音節の末子音の後ろに入る。かくして vari:vrt となる。

活用は重複類の現在組織に従う。ただし逸脱はまれでない。特に i: が語感と語尾の間に入ることがある。


501. 2. 強意語幹からは他に、受動語幹と同じ、接辞 -ya- による形のものも作られる。中動の活用をするが、受動の意味は持たない。上記の強意の意味で使われる。かくして mrj marmrjyate となる。


502. いくつかの強意活用はその位置づけを失い、現在形として用いられ、土着の文法家に単語根として扱われる。かくして ja:gr は本当は gr 'wake' の強意活用だが、語根類とされる。現在 ja:garmi など、両数 ja:grvas など、未完了過去 1 aja:garam 2 aja:gar 3 aja:gar 両数 aja:grva など。同様に dra: 'run' の強意活用 daridra: は 'be poor' の意味の現在形として用いられる。nij 'wash' などは強意活用を現在組織として使い、語根類とされる。かくして三人称単数 nenekti 複数 nenijati となる。

 現在組織以外の強意活用は非常にまれである。


503. III. 意欲活用 この活用形は単語根が表す行為や状態への意欲を表す。かくして piva:mi 'I drink' 意欲活用 pipa:sa:mi 'I wish to drink' となる。


504. 意欲活用を作るには語根を重複し sa または時に iSa を付す。重複子音は普段の規則で決定される。語根が a 母音または i 母音を持つとき、重複の母音は i である。語根が u 母音を持つ時は u である。かくして ya:-yiya:sati ni:-nini:Sati bhu:-bubhu:Sati kr-ciki:rSati bhid-bibhitsati tij-titikSate となる。


505. 多くの語根が縮まった意欲活用形を持つ。かくして a:p-i:psati da:-ditsati となる。


506. 現在組織の活用は他の a 語幹同様である。それ以外で意欲活用はまれである。完了は複合形である。アオリストは iS 形による。かくして i:ps-aipsiSat atitikSiSTa となる。未来は補助母音 i を伴う。かくして i:psiSyati i:psita:smi となる。動名詞は i 母音がありえる全ての形でそれを伴う。受動形も作られる。かくして i:psyate 'it is desired to be obtained' 分詞は i:psita となる。


507. IV. 使役活用 1 使役活用の現在組織はすでに扱った。

2 完了は複合形である。a: 派生名詞が使役語幹から作られる。かくして dha:raya:m caka:ra となる。

3 アオリストは重複形である。一般に語根から直接作られ、形態の上で使役語幹と関係ない。かくして dhr-adi:dharam abu:bhuvam となる。語根が使役の標識の前で特殊形となる幾例かでは、重複アオリストはこの形から作られる。かくして stha:-stha:payati-atiSTipat となる。

4 両未来は使役語幹から作られる。末尾の a を補助母音 i で置き換える。かくして dha:rayiSyati dha:rayita:smi となる。

5 動名詞と形容詞は未来と同様使役語幹から作られるものもあり、使役形で強まった語幹形から作られるものもある。かくして受動分詞 zra:vita 未来受動分詞ジェランディヴtarpayitavya stha:pya 不定詞 joSayitum 接続分詞 sa:dayitva: -stha:pya -gamapya となる。


508. 使役の受動と意欲活用 これらは使役語幹から次のように作られる。

1 受動語幹は -aya- を除いた、使役形で強まった語根に、普通の受動標識 -ya を付して作られる。かくして dha:ryate となる。

2 意欲語幹は重複と -iSa の追加で作られる。この i が使役語幹末の -a を置き換える。かくして didha:rayiSati bibha:vayiSati となる。これはまれな形である。


509. V. 名詞起源動詞 名詞起源活用は名詞語幹をもとにしたものである。一般に、語基は名詞語幹から活用標識 -ya- によって作られる。これはアクセントを持つ。名詞起源活用と使役活用の間に、もともと名詞起源だったが使役活用のアクセントを持つ類がある。かくして mantra-mantrayate ki:rti-ki:rtayati となる。


510. 名詞起源の意味は非常に広範な意味を持つ。例えば 'be like', 'act as', 'regard or treat as', 'make into', 'desire, crave' などで名詞語幹による。

例 tapas 'penance, asceticism' tapasyati 'practice ascetism'; namas-namasyati 'honor'; krSNa:yate 'blacken'; azva:yati 'seek horses'; gopa:yati 'play the herdsman, protect'; vasu:yati 'desire wealth'; bhiSajyati 'play the physician, cure'; putraka:myati 'desire a son'

最後のは putraka:ma 'desiring a son' という所有複合語に由来する。


【補説】意欲活用、強意活用も古典期ではめったに用いられない。変な重複をしている動詞が出たら疑う。

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