【検査入院】5
59話検査入院──5(5月)
ゴウ先輩の道案内を聞きながら、僕達はタクシーの中で揺られていた。移動代は何やら尾崎先生が出してくれたらしくて、ゴウ先輩は機嫌良さそうに一万円札をヒラヒラさせている。
僕はふかふかとした座席に腰掛けたまま、何となく居心地が悪くて口を閉ざしていた。
冥鬼はそんな僕の気持ちなんか知りもしないで、隣で足をぶらつかせながら楽しそうにしている。
やがて、タクシーはゆっくりと大きな家の前で停車するのだった。
「じゃあオレはこれで……」
ゴウ先輩がそう言ってタクシーから降りようとするが、不意に僕へ振り返る。
「鬼道、オレは……陰陽師とか、よくわかんねえけど……オマエのほうがすごいと思う」
おずおずと口を開いたゴウ先輩は、はにかむように笑った。
「焼却炉のユーレイからオレやハクを助けてくれたオマエは、すごく頼もしかった……から」
それだけ言って、ゴウ先輩はタクシーから降りた。
綺麗な新築と、古びた屋敷。その二つが敷地内にあったが、ゴウ先輩は迷わず新築のほうへと向かう。
インターフォンを鳴らしてゴウ先輩が何かを告げると中から鍵の開く音が聞こえた。
ゴウ先輩は一度僕たちに振り返ると、八重歯を見せて大きく手を振る。
先輩が家の中へ入ったことを確認して、タクシーはすぐに僕らの家へと向かった。
僕は頬杖をついたままため息をつく。まるで拗ねた子供みたいに。
「まがたま、ネコちゃんがさわったらぴかぴかしてた!」
「これは先祖代々受け継いできた勾玉だ。どうせ僕は陰陽師に向いてないってことだよ……」
喋れば喋るほど、僕の口からは嫌味と嫉妬しか出てこない。
そんな自分が嫌になってしまって、これ以上の会話を拒絶するように僕は顔を逸らした。
冥鬼は僕の話の意味が分かっているのかそうでないのか、僕の足の上に倒れ込む。
「メイはね、おにーちゃんがげんきになってよかったよ?」
冥鬼はそう言って甘えたように笑った。
僕は頬杖をついたまま、黙って彼女の頭を撫でる。
冥鬼は相変わらずご機嫌で、無邪気に撫でられていた。
そのおかげか、ささくれ立った気持ちが少しだけ和らいだ気がして。
「……ありがとう」
ゴウ先輩に言えなかった分も、ぽつりと呟いた。




