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最弱陰陽師は、自分にかけた呪いとまだ向き合えていない  作者: ふみよ
3部

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【犬姫に愛されしブルーメンガルテン】4

 妖怪絡みの事件ともなれば、戦力が必要だ。しかし生憎、今の楓は最強の鬼王、冥鬼(めいき)と共に外出することができない。


「ちょーど暇だし、手伝ってあげてもいいヨ、それ」

猿神(さるがみ)……」


 この場で一番協力を嫌がりそうな人物が声を上げた。人喰い妖怪の猿神だ。正式に楓に使役されることを認めたわけではないためか、その態度は完全に楓を下に見ている。


「猿神じゃなくて牛尾日吉(うしおひよし)! 勘違いしないで欲しいんだけど、楓サンのことなんてどうでもいいんだよねぇ」


 嫌味っぽくそう言った猿神は、腰に手を当ててわざとらしいため息をつく。


「何で楓サンの周りって弱っちい奴しか居ないんだろ。ねー、八重(やえ)ちゃん」

「わ、儂に言われましてもっ!」


 突然話を振られた八重花(やえか)があたふたと答える。楓はプリントされた地図と議員の顔写真をそれぞれ手にして、早々に出かける準備を始めるのだった。


「楓」

「ん?」


 家を出る直前、口に煙草をくわえた柊が玄関までやってくる。見送りなんて珍しいこともあるものだと内心思いながら楓が返事をした。

 いつも飄々とした父の顔は、どこか晴れない。


「もし妙な奴に襲われたら、戦わずに逃げな」

「妙な奴って?」


 楓が聞き返す。柊はボサボサの頭を片手でかきむしりながら面倒くさそうに答えた。


「ほら、変な奴。殺意高めの不審者とかよ。とりあえず、深追いすんなってこと」


 柊の言う言葉は半分も理解できない。顔を顰めた楓がさらに問いかけようとすると、既に庭に出ていた猿神が急かした。


「楓サン早くー! 暑い! 遅いッ! 置いてくよッ!」


 既に、猿神は黒塗りの高級車に乗り込んでいる。運転席にはどう見ても猿が乗っていた。


「行ってくるよ。心配しなくても僕の実力じゃ戦えないし大丈夫」


 そう言って玄関を出た楓は、柊に見送られながら猿神の用意した車に乗り込んで、最寄り駅まで移動する。

 電車を乗り換え、慣れない地下鉄に揺られること合計二時間ほど。目的の亀勿(かめなし)駅まで到着した楓は、猿神にねだられるまま、駅のそばにあるコンビニに立ち寄って外に出た。


「ほら、買ってきたぞ」

「ご苦労さま〜」


 猿神は楓の手から炭酸飲料の入ったペットボトルを奪ってそれを美味しそうに飲み始める。コンビニの傍にはドラッグストアやスーパーマーケットが建ち並んでおり、上結同様便利な町だ。

 電柱には葛西菖蒲(かさいしょうぶ)のポスターが貼られており、自由共生党(じゆうきょうせいとう)が支持している『明るい未来』だとか『差別のない国』といった文言が並んでいる。猿神はシラケた顔でそのポスターを眺めていた。


「それを飲んだら早く行くぞ」

「楓サンってホントせっかちだよねぇ。モテないでしょ」


 猿神の軽口に、楓がムッとして地図に書かれた駅沿いの細道に入っていく。


「怒った? このくらいで?」

「別に。大体、何でお前はこの件にこだわるんだ?」

「楓サンには教えな〜い」


 猿神は終始、人を小馬鹿にしたような態度で反応する。いちいち目くじらを立てていたらきりがない。


「そうかよ。僕も別に知りたくて聞いたわけじゃない」

「そういうところがモテないんじゃないの?」


 猿神はわざと楓を怒らせるような言い方で突っかかってくる。ここで言い返して喧嘩になれば、猿神は金輪際協力などしないだろう。それどころか敵になる可能性も有り得る。

 楓は、言い合いになりそうになるのをこらえて、目的の分譲マンションへと向かうのだった。

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