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最弱陰陽師は、自分にかけた呪いとまだ向き合えていない  作者: ふみよ
2部

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【最弱陰陽師の決意】4

 突然家にやってきた鬼原ハク、そして鬼原ゴウに連れられて楓と冥鬼は家の外へと連れ出された。待ち合わせ場所である上結駅では見慣れた顔ぶれがある。高千穂レンと小鳥遊香取だった。


「遅いッ! 遅刻よ、鬼道くん!」


 ツインテールを靡かせて高千穂レンが楓を指す。相変わらずの大きな声だが、駅前ではさほど気にならないな、と楓は思った。むしろいつもより声が小さいくらいだ。


「まあまあ、レン。今日は課外活動なんですから、パーッと楽しみましょー。どこに行きます? カラオケ? たこ焼き食べ歩き? カフェ巡り? オタクの行動範囲は狭いようで意外と広いですにゃ〜」

「全部ネージュたんのコラボ絡みじゃねーか!」


 ゴウの鋭いツッコミに、香取が茶目っ気たっぷりに舌を出す。楓と共に連れてこられた冥鬼は、目をキラキラさせながら両手を振った。


「ネージュたん!」

「ほらぁ、姫はノリノリですにゃ〜♡」

「全く、香取(あんた)発案だとロクなことがないわね……」


 レンは小さくため息をつくと腰に手を当てて言った。


「課外活動とは言え、これは部活の一環であることを忘れないで! オカルト研究部の部員として恥じない行動を取りなさい! 返事は?」

「そこは東妖高校の生徒として、じゃねーのか……」


 ゴウのツッコミもスルーして、レンが楓を指す。


「いい? 鬼道くんもその幽霊みたいな辛気臭い顔をやめて集中すること!」

「は、はい……」

「声が小さいッ!」

「はい!」


 レンの勢いに思わずひっくり返った声で返事をした。すっかり塞ぎ込みがちになっていた楓だったが、部活メンバーの賑やかさには救われる。


「ではではッ、まずは腹ごしらえですにゃ〜! 腹が減ってはネージュたんも戦えないと言いますし!」

「はーい! メイ、さんせーい!」


 冥鬼はすっかりはしゃいでぴょんぴょんと手を挙げている。

 さりげなく財布の中身を確認していた楓は、袖を誰かに握られた。振り返ると、ハクが優しく微笑んでいる。ドキッと胸が高なった。


「は、ハクせんぱ……」

「今日は私たちの奢りだからお金のことは気にしないで楽しんでいいのよ、楓くん」


 ハクの眩しい笑顔に、もしかするとこれもまた夢なのではないかと楓は寝ぼけた頭でぼんやりと考える。

 しかし心から楽しそうにしている冥鬼の笑顔は本物で、楓の手を握る優しいぬくもりも術や夢ではない。


 コラボカフェやコラボカラオケなど、楓には分からないものも多かったがそれでも部活メンバーで過ごすのは心地よい。冥鬼の面倒もハクや香取が率先して見てくれるし、一人きりだとどうしても悪い方向に考えて塞ぎ込みがちになる楓には、傍に仲間が居てくれることが何より心強かった。


「まったく、こんなことに部費を使われるなんて思ってなかったわ!」


 カラオケボックスのソファでふんぞり返りながらレンが不機嫌そうに、長い耳をしたうさぎのようなキャラクター物のクッションを抱き寄せる。


「いやー、コラボフードは人数が居ないと不利なんですよー。カトリーヌは少食なので助かりましたにゃ♡」

「知らないわよそんなの」


 そっぽを向くレンに、上機嫌な香取が体を擦り寄せる。


「コースターもランダムだもんな……」

「ネコちゃん! しろいピンクルとくろいピンクルこーかんしてー!」

「好きに持ってけ」


 冥鬼ははしゃぎながら、ゴウの隣でテーブルにコースターを並べて楽しんでいる。目の前に並べられたコースターを見ながらハクが首を傾げた。


「ピンクル?」

「ネージュたんたちに変身アイテムを託した元凶で異世界の妖精王だ。白と黒で兄弟なんだよ」


 ドリンクを飲みながらステッカーを二枚手にしたゴウが答える。毎日のように冥鬼がテレビを占領してアニメを流していたからどこかでピンクルという言葉を聞いた事があるような気がした楓も、さすがに詳細までは答えられなかった。


「詳しいですね……」

「い、嫌でも覚えるっつーの」


 唇を尖らせてそっぽを向いたゴウに、香取がニヤッと笑う。


「ゴウにゃんはしっかり予習してきてくれるのでオタクに優しいですにゃ〜♡」

「別に。バイトでアニメの話が出来た方が客が喜ぶからに決まってんだろ」


 ゴウはそっけなく答えて足をぷらぷらさせている。バイトのためだけではなさそうだということは鈍い楓にも分かった。


「何笑ってんだよ」

「い、いえ。仲が良いんだなと……」


 慌ててフォローをする楓だったが、ゴウをさらに不機嫌にさせただけだった。その不機嫌な表情が照れ隠しであることは誰が見ても明らかだ。


「次は絶対妖怪を探すための課外活動をするわよ。ノロケ大会を開きにきたわけじゃないんだから」

「ノロケてねーよ!」


 ゴウのツッコミもレンには全く効いていないようだ。レンはホットコーヒーを優雅に飲みながら足を組んでいる。

 そんなレンの表情は最後まで晴れなかった。自分好みの課外活動が出来なくてふてくされていると、この場に居る全員がそう思ったはずだ。幼なじみの、香取でさえも。

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