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最弱陰陽師は、自分にかけた呪いとまだ向き合えていない  作者: ふみよ
2部

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【合宿最終日】

 翌日、三回目の朝を高千穂部長の別荘で迎えた僕達は朝ごはんをご馳走になってから車で出発した。

 最初の運転は尾崎先生だ。三日目ともなると尾崎先生の引率も慣れたもので、土産は買うかとか次のトイレ休憩の時間はいつだとかを運転しながら僕たちに話した。

 助手席には日熊先生が、膝にタブレットを乗せて座っている。後部座席の一列目には小鳥遊先輩とゴウ先輩、二列目はハク先輩と冥鬼、僕は三列目の座席だ。行きと違って、さゆは居ない。

 冥鬼や尾崎先生の話が本当なら、さゆは妖怪で、僕の命を狙っていたという。……未だに信じられない話だ。


「ケロ」


 僕の隣に置いた冥鬼のバッグからくぐもった鳴き声が聞こえた。外に出せって言いたいのか、それとも景色を見せろと言ってるのかは分からないが……僕は、冥鬼の荷物の中から透明なケースを取り出した。案の定、ハルがケースの壁によじ登りながら蓋を押し開けようとしている。その体じゃ開けられないだろ……。

 こっそり蓋を開けてやると、ハルは壁にしがみついて顔だけを外に出した。せっかくハルも連れてきたのに、全然楽しませてやれなかったな。というか、ハルを連れてきているなんて昨日初めて知ったし……。


「……楽しかったか?」

「ケロ」


 返事をするようにハルが応えた。つぶらな瞳が僕を見ている。さすがに何て言ってるのかは分からない……。ここに雨福さんが居れば通訳してくれたのかもしれないけど。


「……」


 さゆは、カエルが好きだと言っていたっけ。梅雨が始まったばかりで、じめじめと蒸し暑い季節に転校してきたのがずいぶん前のことみたいだ。葵や伊南さんと一緒に水着を買いに行って、その帰りにさゆがオカルト研究部に入りたいと言ってくれたんだよな。

 夏が終わるまでの短い期間ではあるけど、さゆと仲良く出来たらいいって思っていた。あのさゆが僕の命を狙っていたなんて、まだ信じられない。殺意なんてこれっぽっちも感じなかったし、それに……。僕から見たさゆは心から学校生活を、部活を楽しんでいるように見えた。


「分かんないな、女心って」

「ケロ」


 ハルが喉を鳴らす。いつの間にか大人しくケースの中に戻っていて、良い子だな、と呟いた声は欠伸に変わった。疲れが溜まっているんだろうか? 僕はケースに蓋をしてポケットに仕舞うと、ゆっくりと座席に凭れた。みんなの楽しそうな声がどんどん遠くなってくる……。

 夢現の中で、僕の隣に誰かが座った。多分冥鬼だ。足をパタパタ揺らしながら退屈そうにしている様子が目に浮かぶ。


「おっきいやまー!」


 すぐ傍で冥鬼の声が聞こえる。僕も景色を見たいのだが、どうしようもなく眠くて目が開けられない。


「楓の分も食っていいぞ、どうせ現地まで起きん」

「はーい!」

「尾崎にタブレットを借りて良かった……夏休み明けに返すか」


 日熊先生が何か呟いているけど、よく聞こえない。とりあえずまだ地元につかないなら、もう少しこのまま体を休めよう。

 僕は睡魔に抗うのを止めて、ゆっくりと深呼吸をした。

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