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最弱陰陽師は、自分にかけた呪いとまだ向き合えていない  作者: ふみよ
2部

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【合宿2日目(朝)】1

 次の日、僕と冥鬼に叩き起されて地蔵のあった砂浜へ朝一番に出向いた。

 祠には例の地蔵が昨日よりも肩身が狭そうに座っていて、冥鬼に脅されるようにして僕たちの体を元に戻した。


「いやー、やっぱり元の体が一番だぜッ!」


 機嫌良さそうな冥鬼がレストランに入りながら背伸びをする。僕は右手の数珠に触れながら苦笑した。

 まさかあの地蔵、コイガミが僕の式神になりたいと申し出るなんて思わなかった。まあ、そうでもしないと血の気の多い冥鬼がコイガミを退治していたし、万年討伐数ゼロの僕としても生活費のためにアイツを退治する必要がある。

 だけど僕は、冥鬼を制した。

 コイガミは僕たちを殺そうとしたわけじゃないし、それに……お、おいしい思いもさせてもらったから。だから、コイガミを退治することに反対したんだ。

 ──陰陽師失格だな、僕は。

 もちろん、自分のしたことに後悔はしてない。そんな僕に感謝をしたのか冥鬼に殺されたくなかったからなのかは分からないが、コイガミは自ら僕の式神になりたいと願い出てきた。


「何よ、鬼道くんも冥鬼さんも無事に元の体に戻れたんじゃない」


 眠そうな顔でやってきた部長が僕たちを見て言った。目の下の隈を見る限り、どうやら徹夜でコイガミのことを調べてくれていたみたいだ。よっぽど眠いらしく、部長はどうやって元に戻ったのか、なんて必要に聞いてくることはなかった。


「ふあ、あぁ……」


 いつものツインテールすらせずに長い髪を肩に垂らして欠伸をしている。……さすがに申し訳ないな。


「部長、すみません。せっかく調べてくれたのに……」

「いいわ、これは私の贖罪でもあるんだから」


 半分夢の中なのか、呂律の回らない声で部長が言った。

 昨日の『あかずのトイレ』発言といい、部長の言葉は何故か引っかかる。まるで、部長が僕に危害を加えたみたいな……。


「あの、部長……?」

「おっはようございますにゃー!」


 僕が部長に話しかけるのと、別荘内のレストランにぞろぞろとオカルト研究部一同が現れるのはほぼ同時だった。

 朝だと言うのに元気な小鳥遊先輩に、今日も可憐なハク先輩、それから日熊先生と尾崎先生の教師二人と、部長同様眠そうなゴウ先輩の姿があった。


「何を食べようかみんなで話しながら来たの」


 ハク先輩がそう言って僕と冥鬼に微笑みかける。二日目のハク先輩は涼しそうな花柄のキャミソールを着ていた。な、なんて眩しいんだッ……! 可憐で、直視できない……。


「そっ……そうなんです、ね」

「楓くん、無事に元に戻れたの? ふふ、よかった」


 照れくさくて顔を逸らしてしまう僕に嫌な顔ひとつすることなくハク先輩が笑った。そんなハク先輩を冥鬼が睨むように見つめている。普段は人間に対してこんな顔をするような奴じゃないはずだが、ハク先輩を見る冥鬼の目は真剣だった。


「ねーちゃん、オレさまの隣に来いよ」


 冥鬼はそう言って自分の隣の席を指す。ハク先輩は疑う様子も見せずに嬉しそうに頷くと、冥鬼の隣に着席した。


「ふふっ」

「何だよ」

「だって、冥鬼ちゃんが自分から隣に座らせてくれるなんて思わなくて嬉しかったの」


 ハク先輩は向日葵みたいに笑った。その笑顔は僕だったら直視できない。現に眩しすぎて目を逸らしてしまったからな。

 冥鬼は、ぐっと顔を逸らすような素振りを見せたけど唇を尖らせて強気に答えた。


「ふ……ふん、泣いて感謝しな」

「はーいっ……ふふ」


 笑いをこらえるハク先輩を見て、冥鬼が照れくさそうに視線を泳がせた。よく分からないけど……二人はずいぶん仲良くなったみたいだ。昨日、僕の体でハク先輩と遊んだことも影響しているんだろうか? 昨日は羨ましくて悔しくて、正直かなり落ち込んだけど……冥鬼に同性の友達が出来るのは良いことだ。

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