たっぽい、転生5話
「いざ!推参!!」
「義によって、助太刀致す!!」
「ひとーつ、人の世の生き血をすする。」
悲鳴の方角へ、全力でイワシミズを駈り立てながら、台詞を考える。襲われてるのが信長本人なら、あんまり偉そうなのは無しだ。そう言うのキレるからな、アイツ。
・・でも、信長の縁者、例えばお市の方様とかなら、頼もしい謎の正義の味方路線はアリだな。
たしか、絶世の美女なハズ!
最後に見た時は、まだ幼く、ルーズソックス履いて、けん玉で人ぶん殴ってたけど、大人になれば変わるものさ。
森の左手が拓け始め、道も左にカーブ描き丘陵をなだらかに下り始める。降りきった平野部の先に道があり、その道へ合流している。
戦闘が行われていると思われる場所は、緩やかな丘に遮られている辺りか?その丘に馬で駆け上り眼下を見下ろす。
あれーっ????
森を挟んで向こうにたなびく煙。
此方に算を乱して逃げて来る人々。
後ろから迫る世紀末的ヒャッハー達。
うーん・・・でもね。どー見ても、信長関係無い。
・・お市も・・。
どれ程歌舞いちゃあいても、金髪にするほどファンキーじゃ無ぇだろ、信長。
まあ、見るからに皆外人、剣と魔法てきな?
イベントこっち?馬車襲われる系?
必死にこちらに駆け寄る避難民達。追いすがる盗賊?山賊?
眼下に見下ろして、一応、言ってみる。
「推参!!」
っても、わかんねぇだろーな。
言い直すかな?英語喋れないんだよな、俺
「アイムカミーン」
丘の上でつぶやいてみた。
「と、殿・・・・。」
イチロー達の動揺が、伝わって来る。
眼下に広がる光景は、まさに世紀末。
丘の上でポツリと呟く俺の声は届かない。
一応、俺達の存在には気付いて呉れてるっぽいけどね。
・・台詞まではね。・・・・いいよもう。
「皆、続けっ!!」
「「「「「ははっ!!」」」」」
こうなりゃもう、自棄ですわ。
逃げ惑う避難民を避けて、迂回する様に、丘を駆け下る。
全員が突如現れた6騎の騎兵に、目を向ける。
「きゃーーっ!」
敵か味方か分からずに恐怖の色を浮かべて、悲鳴を上げる人々を横にすり抜ける。
避難民はほぼ女性らしいので、若干テンション上げながら、追い迫る山賊?盗賊?を見る。
・・・しっかし、分かり易い位の輩どもだなおい?
色々、台無しにされた怒りはコイツらに叩き付ける事に今決めた!
「信長迎えに来ねえのかよぉぉ!!!」
怒りの咆哮である。
それは兎も角、敵の輩は20~30人。
煙が上がっている方角からも、微かに悲鳴や喧騒が聞こえる。
もし街か村が襲われているならば、此処に居る敵が全員ではあるまい。
下手をすれば100を下らないだろう。
いくら何でも6人ではキツイ。
・・・だが、ここに居る盗賊は別の話だ。
不意を突かれた雑兵30人。
コイツらを蹴散らせば、先ほどすれ違った集団位は、なんとか逃げ切る事が出来るだろう。
一郎達5人を後ろに従えると、馬の速度を落とす。
「お前達はそのまま進め!」
そう、声を掛けると、イワシミズの腹を拍車で叩き、単騎イチロー達を引き離して前に出る。
どうせ聞こえ無いだろーが、それっぽく無慈悲に呟く。
「ひとーつ。二股された三瓶さん。」
・・・なんかちがうな。
この世界に来てからのモヤモヤした怒りを八つ当たりする事は決定だ。かわいそうな盗賊たちめ!!
俺の最大の怒りは、信長に会えなかった事何かじゃない!
お市様に会えなかった事だ!!!