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 サイゼとミアンの定食屋から、それぞれイベントに向けて散り散りになった後、一人残った俺は終わりのブザーがなるまでイベントバトルを楽しんだ。

 バトルコミュニケーション・オブ・エンカウント(以下BCoE)をプレイしている人達もちらほら居たようだ。

 元奔放流だという、俺の身元が割れていてかなり挑まれた。


 BCoEでは、ジャイアントキリングシステムと言う物がある。

 読んで字の如く、格上を倒すとボーナスが入る。

 BCoEではキルとデスの割合で上位の相手、または強化ステージがワンランク上の相手を倒すとボーナスポイントと称号が手に入り、アビリティレベルが上昇し、派生アビリティが解放しやすいというものだった。


 ……気がする。

 確か、俺は基本的に初期ステージで戦闘を組まれていたので、倒した相手は基本的にジャイアントキリング。

 だが十八豪が気にして、一つアビリティをプレゼントしてくれるまで、いくらアビリティレベルが上昇しても使えないスキルばかりだったのである。

 いや、効果はあるが、どこで使うんだってレベルのアビリティ。

 運営も良く用意したなこんなものって感じのアビリティだったんだよな。


 イベントでのジャイアントキリングは、もちろんレベル差によって引き起こされるようだ。

 相対する敵のレベルを見た感じだと、5レベル以上じゃないとジャイアントキリングは適応されないようだ。

 俺のレベルは33レベル。

 そりゃ標的にされる訳だわ。

 集団でも適応されるのか、さながらパーティを相手取るエリアボスの様な気分を味わえた。


 ふむ、容赦なく鬼子の長剣で首を切り落して行くんだがな。

 お陰で成長がマックスになったと言う……。

 プレイヤーキラーになっちまいそうだぜ。



【鬼子の長剣】製作者:???

オーガの系譜に至る魔物の剣。

子鬼であるが、その攻撃力はまさに鬼。

使い手の意志によって下級魔剣へと至る。

・攻撃:29

・耐久Lv5

・耐久78/100

・成長100/100



 俺の武器で、現時点では破格の攻撃力だ。

 トモガラのハルバードとかも、実際このくらいの攻撃力を有しているかもしれないが、斧と長剣の威力なんて比べるまでもない。

 こいつぁーつえーぜ。



[鬼子の長剣が成長限界へ達しました]

[剣から胎動を感じる……]



 なんですか、剣から胎動を感じるって。

 いきなり劇画風のシリアスなインフォメーションメッセージになってるんだが。


 さてさて、これは事前情報があった。

 相応の物を準備している。



【鬼魔蜻蛉の魔核】

驚異的な自己回復力を生む核。


【荒野石魔の魔核】

堅牢な土属性の力を持つ魔核。



 オーガヤンマとワイルドオブザウィルの初期討伐にて手に入れた魔核。

 ……どれを使おうか。

 アイテムを取り出して、見比べていると。

 再びインフォメーションメッセージがポップアップ。



[剣が、欲している]



 急に何だよ、忙しい剣だな。

 欲しているみたいなので、荒野石魔の魔核を使ってみよう。

 単純に、堅牢な土属性の力をプラスすると、剣が硬化してさらに攻撃力が上がるんじゃないかと。


 いやまて……。

 硬くなると逆に折れやすくなるんじゃないか?

 日本刀だって弾性のある鉄と硬い鉄の二種類を使用していると聞く。

 バランスを変えて良い物か?


 そこで、鬼魔蜻蛉の魔核を使用してみることを思いついた。

 驚異的な自己回復力を生む核と書かれている。

 部位欠損ペナルティを回避できる薬になるのかなと思って居たが……。


 武器、装備の耐久が回復する。

 いいんじゃないでしょうか!

 これでゴーサインだろう。



[剣が、欲している]

[鬼魔蜻蛉の魔核を鬼子の長剣に使用しますか?]

[yes/no]



 イエスで。



[剣の胎動が大きくなる……]

[魔核を取り込んで、剣が進化する]

[鬼子の長剣は鬼魔蜻蛉の長剣へと進化した]



 その後、剣の性能をチェックしようとする前に、再びインフォメーションメッセージが浮かび上がる。



[同系譜ボーナスによって鬼魔蜻蛉の長剣はマイナーチェンジを行えます]

[マイナーチェンジ→鬼魔の長剣]

[マイナーチェンジを行いますか?]

[yes/no]


 ああそうか、オーガヤンマってオーガの系譜である虫モンスターだったんだっけ。

 その魔核は鬼魔蜻蛉の魔核と書かれているし、……なるほどなるほど。


 鬼魔蜻蛉の長剣と、鬼魔の長剣。

 性能を比較してみる。



【鬼魔蜻蛉の長剣】製作者:???

オーガの系譜である下級魔剣。

オーガヤンマの切り裂く翅の力を得て攻撃力が上昇する。

装備耐久のオート回復(中)。

・攻撃:35

・斬撃Lv3

・耐久Lv3

・回復Lv3

・耐久100/100


【鬼魔の長剣】製作者:???

オーガの系譜に至る魔物の剣。

別名オーガソード。

使い手の意志によって下級魔剣へと至る。

装備耐久のオート回復(微)。

・攻撃:25

・耐久Lv5

・回復Lv1

・耐久100/100

・成長1/500



 鬼魔蜻蛉の長剣は既に下級魔剣であるということかな?

 それに比べてマイナーチェンジ先の鬼魔の長剣は、かなり性能が落ちている。

 だが、成長という項目がまだ残されているみたいね。


 ……迷う必要は無いな。

 マイナーチェンジでいきましょうイエス!!



[鬼魔蜻蛉の長剣が、鬼魔の長剣にマイナーチェンジしました]



 もしかしたら、他の魔核でも鬼魔の長剣へとクラスチェンジできたんじゃなかろうか。

 まあ後悔はしていない。

 いつだか、ローヴォのクラスチェンジでもマイナーチェンジを逃していたし、いい機会だと言えよう。

 さて、そろそろブザーがなりそうだ。

 町に向けての道すがらだったのだが、今回はテイムモンスターは勘定に含まれていないらしくブザーが鳴ると同時に透明化。

 戦闘には参加できないみたいだ。


 鬼魔の長剣を早く成長させたい。

 殴打武器であるヌンチャク、黒鉄の双手棍が壊れてしまったのでしばらくこれを使って行こうと思う。

 耐久もばっちりで尚且つ回復して行くとなれば、武器としては破格の性能と言えよう。

 オーガヤンマ程の回復力を持ち合わせていないが、オーガソードがさらに成長するとして期待値はかなり大きい。


 東の門から町へ入って、ブザーが鳴った。

 今か今かと待ちわびていたプレイヤー達が大きく動き出した。

 既に初陣ではない。

 勢いは、波となって戦いの奔流を生む。


 詩的に言ってみたが、単純に乱闘につぐ乱闘の流れが、入り口まで押し寄せて来ているのだな。

 高所に上げられた特設モニターが映し出しているのは、大混乱と陥ったあの懐かしの公園の映像だった。

 ちなみにあのモニターイベントが終われば撤去されるそうだ。

 景観に合わないからだってさ。

 無駄にそう言うところ凝りやがって。


「押し返すぜ! おらああ!!」


「ファイヤアロー! パーティ戦もありなんだろー!?」


「光魔法の援助は任せてね!」


 パーティを組んだプレイヤーも多い。

 混戦を避けて門の付近で待機していたのだろうか。

 野良ではない固定パーティメンバーならこう言ったイベントでも強そうだな。

 狙いはもちろん、その団体様御一行よ。

 プレイヤーキル、決闘以外でもオッケーだなんて。

 日頃のストレスでむしゃくしゃしてる奴にはうってつけだね!

 先ほどトモガラにセコい真似されたから鬱憤は晴らしておきましょう。


「きゃーーー!!!」


「こ、この! プレイヤーキラーか!」


「外道! 首を跳ねるなんて!」


 そんな声が上がる。

 イベント中だろう、と突っ込んでやりたい。

 女の子と愉快なパーティを組むハーレム野郎は駆逐するべきだ。

 甘酸っぱい青春を謳歌しやがって。


 俺の周りなんてな……、ろくな女が居ねぇ。

 オッサンみたいな女に。

 腹黒いメンヘラ。

 痛いちんちくりんに。

 自己主張の無いヘリウム女。

 警戒していた初邂逅時はそこまで好きじゃなかったが、後々考えればメッセージの絡みが少しウザいだけで、一番尽くしてくれる女の子がセレクであるという。

 よし、なんか魔物の素材でも持って行ってやろうかな。


 そんなことを思いながら目の前に居たパーティの男プレイヤーの首を撥ね飛ばしたのだった。

 外道外道と言われようが、もう称号貰っちゃってるから気にしないでおく。



【外道】

急所攻撃補正が付く。

ただし、信用度が更に上がり辛くなる。



 信用度なんてな……。

 毒とか復讐とかで、既にあって無い様なモノなんだよ。

 如何に減らさずに冒険するかに掛かっている。

 戦闘に負けるなんて言語道断。


『うおおお、高レベルプレイヤーの位置情報補足されてるぞ!』


『西門にいるのローレントじゃねーか!』


『まとめてかかれー! トップ・ジャイアントキリングだ!!! いくぞおお!!』


『逝ってらっしゃーい!』


『働けニートども! 休日にゲームやってんじゃねー!』


『お前が言うなーーー!!』


 映し出された映像から罵詈雑言が聞こえて来た。

 西門への圧力が更に増えているじゃないか。


 トップ・ジャイアントキリングとは、イベントに参加している全プレイヤーの中で上から十五人に当てはめられる枠である。

 俺とトモガラはもちろんのこと。

 ツクヨイ、十八豪、十六夜も映し出されている。


 戦闘中のレベルアップはかなり激しいようで。

 トップ十五人の最後尾は次々と変わって行き、次々と殺され、次々と新しい被害者を生み出していた。

 言わばレベルが近く、さらにトップ・ジャイアントキリングとしてポイントが貰えるからなんだろうか。

 標的になりやすいのね。


「やばい! 全自動首刈りマシーンだ!」


「サイボーグだ!」


「プレイヤーキラーより目がやべーぞ!」


 スキルをフルに行使しながら、血を欲している鬼子の長剣で首を撥ね飛ばして行く。

 剣の扱いにも大分なれて来た。

 手足の如く動かせるようになるまでは、まだ調子が掴めないのだが……。


「ふんっ!」


「てがぁあああ! おかあちゃーーん!!」


「ヨシオおおおお!! テメェよくも!」


「せいっ!」


「うわあああ! 首から上がドビュッシィイイイ!!」


 無防備曝け出してる雑魚プレイヤーなんか、敵ではないのだと言う。

 ハイライトみたいに映し出されるトッププレイヤーの中でも、上位陣である俺達は破竹の勢いで敵を討伐して行く。

 トモガラとかまっ二つやん……。

 ツクヨイは泣き叫びながら闇の奔流で飲み込んで倒して行くし。

 十六夜は、……うん。

 あえて感想は言わない怖い。


「おいいいいい!! てめーら!! ローレントに全力出すって掲示板で決めてただろうが!」


「ヤバイって! 目が光ってるよあいつ!」


「剣についた血舐めてるよ絶対!」


「こわいよーーーー!!!」


 光ってないし、舐めてないし、怖くない。

 何と言う奴らだこいつら。

 人を化物のように言い腐りやがって。

 これはお仕置きが必要だな。


「掲示板?」


「げっ」


「匿名糞野郎は死んでもらおうか!」


「おい、根に持ってるぞなんかこいつ、――ぎゃあああ!!!」


 敵を蹴散らしながら徐々に身体を寄せて行く。

 トモガラを抜いて、トップ一位をキープしているのは俺だが、流石にポイントが心許ない。

 モニターに映し出されているプレイヤーで一番近いのはツクヨイだ。

 事前情報ではトップキルは、トップ・ジャイアントキリングにつぐ高ポイントだってね。


 狙いましょう。

 兄弟子として、妹弟子の強さをしかとここで体感しておくべきである。

 ぐははは。





バトルが続くようです。



作者は、休息を、欲している。


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