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-95-BCoEでの話も含む

 スティーブンに竹を幾つか倉庫へ転移してもらい、俺達は帰路につく。

 自分で何とかしろ、と言っていたがごねたら何とかなった。

 特に、“悪猫熊の糞”という物が、良い煙草になるらしい。

 嗜好品は、レアドロップと言う訳だ。


 ……あれ、肉食じゃないっけ?

 芳醇な緑の良い香りがするらしいが、どう考えてもうんこ臭いだろうと思う。

 特殊な腸内細菌でカバーしてるとか、肉を喰らうのは成長に栄養が必要な子パンダだけで、親パンダは完全なる笹食とかそんな感じなんだろうな。


 そう納得しておく。

 うん、戦闘もつまらんかったしどうでもいいや。


 交換条件で竹の運搬を特別に許可してもらったのだよ。

 いやー、根こそぎ転移できるって、流石スティーブン。

 伐る手間が省けるよね。


「主の部屋に転移しておく」


「え、それは流石に……、せめて工房とかに」


「仕方ないのう」


 町へ戻る途中のたわいも無い会話だ。

 後ろを付いて来ていたツクヨイがこう言った。


「ローレントさん、スティーブンさんの家がホームなんですか?」


「ホーム?」


「ログイン、ログアウトのポイントですよ。第一拠点でも雑魚寝施設とか個室とか作られてますよ?」


「そうなんだ?」


「……知らなかったんですか?」


 いや、知っていたとも。

 というかログイン時間が長過ぎてまさに住んでいる状態。

 内弟子だから仕方ないよね、この感覚。


「報告が終わったら飯にしよう、わしの預かりでいるうちは、ツクヨイも施設を使っていい」


「はぇ〜、良いんですか?」


「ってか、今まではどころ利用していたんだ?」


「エドワルドさんから間借りした施設です。レイラお姉様と一緒に使ってました。薬師や錬金の技術ならある程度そこで学べますよ〜」


「ふむ、今現在はわしの預かりじゃ、わしの工房を使い魔法の練磨に励むのじゃ」


「は、はい」


 キリッとしたスティーブンの態度に、ツクヨイが息を呑む。

 それにしても、だ。


「いいのか?」


「なあに、部屋の空きはある」


 口を挟むスティーブンだが、その意味に気付いたツクヨイの顔が赤くなる。

 そしてしばらく時間をおいた後、荒げた呼吸を深呼吸で落ち着けて言った。


「内弟子として、……よろしくお願いします」


「うむ」


「同じ屋根の下、同じ部屋……、が、頑張ります」


 両手の指を絡ませながらブツブツ呟くツクヨイを尻目に、いつもの路地裏を抜けてスティーブンの家へと向かった。

 そして……。


「ん?」


「む?」


「!? きゃああああああ!!!」


 あの時の子パンダが、スティーブンの家の目の前でコロコロしていた。

 手には何故か笹を持っている。

 それを噛み噛みしながら、黄色い悲鳴を上げたツクヨイに気付くとふぇふぇ言いながらよちよち歩きで近付いて行く。


「テイム化したのか……」


「らしいのう」


 これは珍しい。とスティーブンもあご髭を撫でながら云々唸っていた。

 そう言えば、テイムモンスターの条件がプレイヤーに傷つけられたモンスターを助けると、確率によりテイム可能っていう条件があった様な無かった様な……。


 外道の称号然り。

 残された子パンダを、偶然にも「やめて」と叫んだツクヨイが助けた形になったのだろうか。

 なんだろう、腑に落ちない。


「決めました! 名前はヤンヤンです! や〜んかわいい! ふわふわです〜!!」


 や〜んかわいい。

 ツクヨイのセリフは、感嘆詞なのか、固有名詞なのか。

 ローヴォを見ると、眉を落として溜息を付いていた。

 お前も動物らしからぬよな!!!


 さて、ツクヨイは俺とは別の空いている部屋へと充てがわれた。

 予備の客間は、少し小さめだった。

 俺にとっては少し天井が低いだけで、彼女にとっては十分な広さと言えよう。

 元々若かりし頃のエドワルドがこっそり錬金の練習に使っていた部屋で、それなりの設備が整っていた。


「わあ! 隠れ家的な部屋ですね! こういう部屋は好きです!」


 文句一つ言わず、テンションを上げて部屋の設備を弄るツクヨイ。

 お前の好みが正直わからん。

 半分煉瓦、半分木造で、シーリングファンがクルクルと回っている。


「わぁ、中級錬金の書物が……」


「奴が若かりし頃に遊んだ物らしい、まあ所有権はわしにあるから好きに使うと良い」


「ありがとうございます! うれしいですねぇヤンヤン〜」


「きゅうきゅう」


 ヤンヤンも甲高い鳴き声でツクヨイと共に喜んでいる様だった。

 錬金系の書物が乱雑に色々あるのかと思いきや、割と整理されてどことなく手を加える前から均整の取れた家具配置。


「まるで、俺の部屋が物置みたいだな」


 ぶっちゃけストレージとして登録してあるから、物置として認識されてるんだけどな。

 ベッドとローヴォの餌皿以外に生活感のある物は無い。

 机と椅子には【工作】スキルで色々やらかした後の残骸が散乱してるし。


「ん? お主の部屋はもともと物置じゃよ。貸す前にベッドだけおいといたんじゃ」


 言葉を失った。


「なんじゃ? 腑に落ちない顔じゃのう。テレポーターには倉庫が必須。ええじゃろうが、無駄が無くて」


 確かにそうだけどさ。

 腑に落ちない。

 ただそれだけだ、ちくしょうめ!








 いつもだったらここで今日はログアウトして、明日のタイアップイベントに向けて仮眠を取る所なんだけども。

 ……バトルコミュニケーション・オブ・エンカウント。

 久しぶりに耳にするその単語。

 まだ、VRギアにはインストールしてあったかな?


 良かった、どうやら消してなかったみたいだ。

 まだあの頃のメンバーはいるのかな?

 とログインしてみる。


 ログインした場所はギルドホーム。

 かなりの勝率を誇っていた俺達のギルドホームはかなりのカスタマイズがされている。

 リビングと呼ばれる場所には巨大ディスプレイが何台も設置されて、さながら人が集まる公式広場と同じような規模。

 懐かしさ満載でボーッとしていると、後ろから声を掛けられた。


「なんだい? ローレント、久々じゃないか」


「十八剛……」


 コーヒーカップ片手に、氷結女帝と呼ばれる金髪ショートカットの女が姿を表した。

 いつだかも、別ゲーで会っただろうって話をしたら。


「このゲームだとレアキャラだろ?」


「まだやってるのか?」


「ま、何人かはね」


 そうなのか、部屋のモデリングというか、壁紙スキンは近未来SFチックな謎素材なのに、何故かサイフォン式のコーヒーメーカーからコーヒーが落ちる音がする。


「はいよ、コーヒー飲むだろ?」


 十八豪、このゲームでは十八剛なんだが、面倒なので十八豪でいい。

 彼女がそれもって隣に座る。

 ディスプレイに映し出されるのは、バトルの様子。

 倉庫を部隊にして剣、銃、色々な武器を持ち戦う人々が映し出されている。


「皆は?」


 コーヒーを一口、尋ねてみた。


「GSOの方でレベル上げやってるみたいだよ」


「そうだ、六頭星はどうなってる? いつだか一緒に住むとか言ってなかったっけ?」


「あのハゲねぇ……、とっくの昔に別れてるよ」


「そっか」


 お互いそれ以上口を開くことはなく、映される公開バトルの様子をジッと見つめながら少しの一時を過ごした。

 記憶にある以上に、ギルドホームに設置されたソファは良い物で、グローイング・スキル・オンラインの現環境が如何に劣悪かと……。


「ソファ、ふかふかだな」


「GSOと比べてるのかい? ありゃああいう雰囲気を楽しむゲームだよ。今までのゲームはこういうコミュニティ部分でどことなく現代風味があって味気なかったんだけど、あっちはガチの村作りさ」


 家も、家具も手作りしてるもんな皆。

 そう言う雰囲気が好きな人たちが集まったと言うか、もう少し自治が整えば、冒険と生活で別れたプレイヤー層が形勢されるのだろうか。


「なぁローレント」


「……ん?」


 十八剛が少し身を寄せて来た。

 切れ目美人の青い瞳が、俺を射抜くように見つめている。


「GSOのクラン作らないかい? アタシらでさ」


 俺の太ももに手を乗せて、十八剛はそう言って来た。


「……クランつくれるっけ?」


「知らないと思ってたよ。ああそうだよ、お前に言ったアタシがバカだった」


 ガックリうなだれた十八豪に説明してもらった。

 GSOの公式でタイアップイベントが終わってから拠点製作に関わるアイテムが大量解放されるのと、新しくクランと言う物を実装するんだと。


 ギルドではなく、クラン。

 共通するもう一つの名前だそうだ。

 規模によってボーナスが付くらしく、日刊GSOでも特集されている。

 今見た。


「アタシと一緒になろうっていってんの!」


「……は?」


「ッッ! 〜〜〜〜〜〜〜!!」


 顔を赤くして手でおさえ、足をバタバタさせる十八豪。

 俺の肩をぽこぽこ殴りながら、弁明しているようだ。


「今のは例えだバーカ! 別にプロポーズじゃないから!」


「いや、それはわかるよ」


 話の流れ的にそうだろうな。

 そう言い返すと、十八豪は再び顔面を手でおさえてガックリ肩を落とす。

 今日は忙しい奴だな……。


「いいのさ、わかってるよ。勝手に自滅したアタシが悪いんだ」


「っていうか、皆は今日ログインしてこないのな?」


「ああ……、お前が二次転職したって掲示板で話題になってたから、みんな気合いを入れてレベル上げしてるんだってさ。タイアップ前にログインしてくるだろってわかってたし」


 何となく気分でログインして来るのは、お見通しだったようだ。

 六頭星も、伊藤飲茶も、マイマイも皆GSOにハマってんのかな?

 ふと思う、そんなに面白いゲームだっけ、と。


「まああいつらは色んなゲームやってるからな。大体お前もハマってるだろう? ローレントがハマったゲームだって聞いて、みんな興味持ってやってるらしいよ」


「そうなのか」


 NPCとの関わりが強いゲームだから、ソロでも十分にプレイが成り立つ。

 それに、珍しく初めから知り合い、仲間を作れたのでやる気に繋がっているとも言えるな。


「なんだい、こっちにゃあんまりログインしなかったくせに」


「すまん。まあでも向こうで会えるじゃん。フレンド登録だってしてるし?」


「連絡よこしなよ? ダメだよ、女を待たせちゃ」


「……狩りなら付き合うぞ」


「ならイベント終わったら付き合えよ……、いや今のは狩りに付き合えって言っただけで他に意味は無い! 無いったら無いんだからな!」


「……知ってるよ」


 そう言うと彼女は立ち上がってコーヒーカップを片付けに行く。

 何気に俺の分まで片してくれて、良い奴だよな。


「まあ、色々あるのは知ってるけどさ、たまにはお喋りだけでも付き合えよ」


「狩r」


「狩りながらじゃなくて茶店だよ茶店」


「う〜ん、良い店を知らない……」


「そのくらいならアタシが知ってるわ! バーカ」


 それだけ言って、彼女はログアウトした。

 ログアウトしたと同時に予め設定されてたであろうメッセージが表示される。

 チーム奔放流の仲間達からだった。


『お前GSO楽しみ過ぎ、俺も行くわ』

『知らなかっただろ? 俺らがGSOやってるってな!』

『ごはーん! もっと美味しいもの供給しなさいよ第一生産拠点組!』

『十八剛ーーー!! よりもどしてくれー!』

『トモガラからみんな誘われたんだぜ、お前の面白い話も待ってるよ』

『まあ、皆名前伏せてるのはロマンが無いからだ! ソロスタートで基本的に似た様な名前にしてるけど、偶然出会うまではアクションしない! それがロマンだ!』

『めんどくせーんだよそれ!!! 早く戦おうぜ、うずうずしてやがる』


 皆ここにくる前にメッセージでも残していたのだろうか。

 最後にトモガラと十八豪のメッセージが浮かび上がる。


『クエストエリアずる過ぎ、俺も連れて行け』


 いつもと変わらんメッセージだな……。


『みんなローレントに会いたがってるみたいだよ。もちろんアタシも、みんなも、今回のイベントは優勝を狙いに行くからね! 優勝したらプレゼント待ってるよ? 飛び切りのをお願いね、アタシは高い女だからさ、バーカ』


 よし、寝るか。





あれ、ヒロイン化した?

おろろ?


ってか、マッチポンプ式テイミングを言い当てられるなんて、どれだけ先を読んでくれるんですかねぇ。

百点満点ですよほんまにー。



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