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いよいよ明日からタイアップイベント週間だ。
ログインしてメッセージを確認して行く。
早めのログインということで、まだ夜明け前。
[ツクヨイ様からメッセージが届いています]
[トモガラ様からメッセージが届いています]
[ニシトモ様からメッセージが届いています]
ツクヨイから。
『この間の魔核について調べたんですが、成長武器という物に食べさせると効果を得るようです。錬金でも扱えるみたいなんですが、まだ私のレベルが足りてないみたいなので、一度お返しします~』
なるほどな。
丁度良いことに、成長武器という物に心当たりがある。
鬼子の長剣だ。
【鬼子の長剣】製作者:???
オーガの系譜に至る魔物の剣。
子鬼であるが、その攻撃力はまさに鬼。
使い手の意志によって下級魔剣へと至る。
・攻撃:26
・耐久Lv5
・耐久78/100
・成長43/100
地味に攻撃力が増しているという暴挙。
快挙ではなくこれは暴挙だ。
切れ味も然ることながら、耐久レベルも申し分ない。
かなり戦闘を繰り返して来たこの長剣であるが、大切に扱っているので、耐久の減りも少なめと言った所。
武器の耐久って本当に減りやすいから困る。
特に剣で硬い物を斬ると、相性が悪いのか著しく耐久が減って行くという話だ。
ダメージが通らないことはまず無いが、木のモンスターには斧が一番通用する。
同じように石系には槌。
ブリアンが扱うシャベルなんかバランスが地味に良い。
鈍器最強説が巻き起こるが、出血ペナルティとか貫いた時に補正が一番高く、取り回しが万能だと言われているのが剣。
刃物では槍とか投げ槍の方が強い気がするけど。
中二心をくすぐる武器だよね、剣って。
さて、話がそれたが、魔核と言う物が成長武器に作用するなら。
素直に返してもらうのが吉だろう。
次のメッセージを読む。
トモガラからだ。
『俺もついに転職した。ってか斧補正付いてるの中級戦士しかない。騎士の道とか剣士の道とか色々と戦士職はありそうだった。樵夫で斧戦士とか、俺は生粋の戦闘民族(山林)として生きて行く。補正うはうは』
そ、そうですか。
それはよかったですね。
と、返信しておこう。
ちなみにトモガラは、斧スキルに一つも振っていない。
身体強化オンリーの戦闘民族だ。
山林の民だ。
それぞれ専門職へと進むことで、大きく武具やスキルに対する補正ができるのだろうか。
戦士とは文字通り戦うことに対して長けた奴らのこと。
まあ、剣士、騎士ってあるなら、流石に戦士は斧とか槌に対してボーナスがあるのかね。
何気に金策のために樵夫のスキルを育てまくって戦士というよりも。
本職樵夫で、たまに戦で戦ってます。
みたいな立ち位置になってるんだが。
それでいいのかトモガラぱいせん。
お次は、ニシトモから。
兼ねて、黒鉄が集まったことは、ログアウト前にメッセージを飛ばしておいた。
それについての返信だろう。
『もうですか、受取準備は出来てますのでありがとうございます。時間が出来次第、精算にお窺いしたいと思います。後、別件なのですがミツバシの教え子として漁師スキルを取得したプレイヤーがいまして、なんと造船技術もノークタウンの商会から学んで来たらしいです。私は商人でしたのでそんなクエスト一言も聞かされてなかったのですが、どうやら漁師は造船クエストを受ける事が出来るそうですよ。かなり前向きに漁師生産やってるみたいなので、生け簀のホワイトリストもそうですが、大会前に顔合わせできたらと思っています』
長い。
が、重要な知らせと言う所だろうか。
漁師が、ノークの商会へ行くと造船クエストが受けれるなんて初めて聞いた。
俺が言った時は何も教えてもらえなかったんだけど。
そういえば、色々お話をお聞かせ願えないだろうかとか。
商会の人に言われた記憶があったような無かったような。
もしかして、それがトリガーだったりするのだろうか。
それに大会前ってタイアップイベントの前だろう。
今日か明日時間とれって言ってんの?
現代を生きる社会人に、急なアポイントメントは失礼だぞ。
とか想像しながら。
ぶっちゃけいつでも空いてるんだなこれが。
ははは、まあ、良いってことよ。
「起きたか、今日の予定はあるのか?」
「プレイヤー拠点ってわかります?」
「ああ、新しい川辺の村か」
NPCは、第一拠点って言うより、ただ新しく出来た自治区。
そう捕らえているのかな。
「そこでようやく造船スキルを獲得した人が居るみたいです。まあ、昨日の大量の黒鉄を引き取ってくれる商人ともそこで落ち合う予定ですね」
「ふむ、最近ちょくちょく魚が流通しとるが……、もしや」
「生け簀作りましたから、ホワイトリストに師匠の名前も入れときましょうか?」
「うーむ、NPCを置くにはお主らの村はまだちと小さいと思うがのう。テンバーの町長であるエドワルドが良しと言えば良しなのじゃろうが、話を聞く限りじゃと、まだまだ自給自足すら成り立っとらんじゃろう……、遊覧船でも出来たら乗ってやらん事も無い」
「そうですか」
「して、それから用事が無く、時間が余っとるなら。ワシと供に森の奥へ行くぞ。時間が空いとる時でよい」
さっそくパシリクエストか?
時間なら十分にある。
今メッセージが来て、ニシトモもミツバシも、新しい漁師仲間も揃って第一拠点に居るということだ。
一度そこへ出向き、再び戻って来よう。
今日の予定が決まりました。
久々に狩りオンリーではございません。
「午後くらいに戻って来ます」
「うむ」
出された朝食のサンドイッチにかぶりつきながら、スティーブンと軽く会話をする。
そしてそのまま外へ向かおう。
道が整備された今なら、安全かつ迅速に第一拠点へと辿り着くのさ。
ついた。
前来た時より色々建物建ち始めてるな。
というか景観を損なうとされたテントエリアに、立派な木造民宿みたいなのが出来てる。
[出来るだけここでログインログアウトしてくださいね。無料施設です]
と書かれた看板がおいてある。
中へ入ってみたい気もあるが、ここは断腸の思いでサイゼミアンへと向かおう。
相変わらずこの時間帯はサイゼもミアンもログインしているみたいだし。
「おはようございます! まだ夜明け前ですけどね!」
「サイゼ、うちは年中無休ですよ」
コック姿でカウンターキッチンから顔を出すサイゼ。
流石に席は半分以上空いてるみたいだな。
適当に座ると、ミアンが水を出してくれた。
「なにやってんだ。こっちに座れよ。待ってるのコッチだぞ?」
「すまん」
普通に食事する気だった。
奥の方のソファ席にニシトモ、ミツバシともう一人が座っている。
料理を軽く摘んでいるという所かな。
俺も水を持ってニシトモの隣に座る。
「初めまして、マルタと言う」
「どうも、ローレントです」
「敬語は良い」
「ああ、そう?」
「なんだか職人の集まりみたいですね」
飾り気の無い俺とマルタの問答に、誰かが注文していたのだろう肉料理を持って来たミアンがクスクスと笑っていた。
「実際にそうですよ」
俺らを見渡したニシトモがコーヒーを飲みながら言う。
「いや、俺は趣味だから、細工師だから」
ミツバシが足を組み直しながらニシトモの言葉に反応していた。
話を戻す。
兼ねて生産職の集まる掲示板にて漁師になりたいという声が上がっていた。
その貴重な人材こそがマルタなのである。
既にミツバシ経由で漁師のスキルをゲットして、メッセージにもあった通り、ニシトモにつれられ造船スキルについてクエストを請け負えていた。
「まあ、ご紹介も予々。是非とも貴方達には船をつくって頂きたくてですね」
「ええ、めんどいなあ」
ニシトモの提案にすぐにミツバシがゴネ出す。
ミツバシには提案よりも現物持って作れと言った方が早いのだ。
目の前にやることがあれば、とりあえずやる人間性だと思っている。
「ローレントさんも何か言ってあげてください」
「予算による」
そもそも造船できるかわからないのだよ。
めでたく内弟子になったから、そのクエストで忙しくなりそうだったし。
「あ、内弟子ですか、おめでとうございます。そうなんですね。新しいクエストエリアなどがありましたら、是非情報をお願いします」
「はい」
「別に一人でも作れるが……」
ニシトモは俺の予算の一言をさらっと流した。
このやり取りを見ていたマルタがおずおずと口を挟む。
「マルタさん、遠慮しなくて大丈夫ですよ。ここの生産職の人達、大体こんな感じなんですいつも、……あ、これ新作です。皆さんで食べてください、サービスしますから」
神の如きゼロ円スマイルを持ったミアンが、ミラノ風っぽいピザを持って来たので、言い合いっこは一旦お開き。
みんなでピザに舌鼓を打つことになったのである。
最近一話一話が短くて申し訳ないです。
アポート、アスポートなんですが、立ち位置が少し特殊で。
物を引き寄せる。
物を飛ばす。
それぞれ別々のスキルとして並んでいます。
スキルマックスボーナスが消えた訳じゃないのです。
わかり辛くて申し訳ないです。
【アポート】
・精度、距離、重量の制限解除。
・無詠唱可能。
・ストレージからセットアイテムの任意転位可能。
【アスポート】
・精度Lv2/30
・距離Lv3/30
・重量Lv3/30
・詠唱Lv1/1
こういう感じですね。
この二つはそれぞれ物を対象にしています。
三次スキルにはもちろん、テレポートが来ますよ。
テレポートは、ついに……。
という感じです笑
※再び八月あたままで休載します。8月の2週目くらいから更新します。
すいません、仕事が忙しい物で。




