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 移動は楽だった。

 スティーブンが指を鳴らすだけで魔法使い協会の個室に瞬時に移動できる。

 テレポート、マジでレベルが上がれば利便性の高いスキルである。


 流石に人が多い時間帯は、受付前に強制転移とは行かないようだ。

 個室に置いてある灰皿にパイプの中身を落とすと、服の中にしまってドアを開ける。


「あら、スティーブンさんにお弟子さん、本日はどういったご予定で?」


 気付いた受付のお姉さんが朗らかに声を掛けてくれた。

 魔法使い協会に、プレイヤーの姿はまばらだがある。

 変な目で見られるので装備はアイテムボックスに閉まっておこう。


 いい加減、他方からの視線は慣れたと思った居たんだが、流石に魔法使い協会内部で近接武器を持ったままというのは、些か景観が悪いのだろうか。


「がう」


 じーっとこちらを見ていた小さいプレイヤーに、ローヴォが吠えた。

 本人は、挨拶程度の鳴き声なのだろうが、小学生くらいの男の子は「ひっ」と声を上げて、柱の奥へ引っ込んでしまった。


「……」


 そんな悲しそうな顔をしても、無理だぞ。

 あの子、完全に怖がってる。

 と、思って視線を向けると、若干震えながらも柱の影からこちらを窺っている。


「こっちから近寄らなければ自然とよってくるだろ」


「くうん」


 落ち込むよりも先に転職だ。

 無論、ローヴォも一緒に来るだろう。

 テイムモンスターは最初から最後まで一緒なのである。


「あら、もう二次転職ですか? スティーブンさんのお弟子さんは勤勉ですね」


 スティーブンは支部長に話があると別の個室へ去って行った。

 俺も受付の美人さんに奥の部屋へと案内される。

 少しだけ、二次転職の下りでロビーがざわめいていたが、もう気にしたことか。

 早く転職クエスト終わらせて、黒鉄集めと洒落込みたい。


「すいません、レベル三十までのスキルポイントは全て消費できますか? これ、決まりに成っててまして」


「はい」


「安心してください、ボーナススキルポイントを獲得できますので」


 一応取っておいたが、何にせよフルとしたら【エナジーショック】の威力のみである。

 美人さんも安心しろと言っているのでさっそくスキルポイントを振る。



◇スキルツリー

【エナジーショック】

・威力Lv3/15

・消費Lv1/5

・熟練Lv1/10

・詠唱Lv5/5



 威力を十分に発揮する為には、熟練も上げなくてはいけない。

 バランスよく熟練と威力に配分して行こう。

 【エナジーショック】が一次スキルという立ち位置なら、二次スキルは何が出るのか。

 楽しみだ。

 なんとなく……、察しは付くけども。


「それでは、こちらの石盤に手を当ててください」


「はい」


 プルダウンメニューでも開かれるのかと思えば。

 普通に石盤が光るエフェクトが起こり、収束して行く。



[二次転職クエストを受けますか?]

[yes/no]



 とりあえずイエスを選択しておこう。

 これは一体なんだろう。

 そう美人さんに尋ねようと顔を合わせてみると。


「大変だと思いますが、スティーブンさんのお弟子さんならきっと勝利できると思います」


 ニコッと笑って頷いていた。


「え?」


 視界が暗転。

 そして、見たことない空間へと視界が変わる。

 湖の畔で晴れ空が広がっている。

 花や草木が生い茂って湖の周りを囲んでいる。

 テンバー東の川よりも遥かに澄んだ水。

 泳ぐ小魚が見える。


 黙って釣りでもしたいな。

 そう思いながらマップを確認する。

 ふむ、マップに映っているのは、木々で囲まれたこの湖だけだな。

 二次転職クエストとか言うけど、何のヒントも無い。


 一体どうしろと。

 そう思った時、ふと後ろに気配を感じる。



【ミラージュ】Lv???

鏡の古代精霊。

全てを映す鏡となって、試練を与える。



 振り返ると、真っ白な人型が立っていた。

 パーツが無い人型は、不気味を通り越して神々しかった。

 どこから発音しているのだろうか、綺麗な声が響く。


「試験を受ける者?」


「はい」


 頷くと、人型が再び美しい声を発する。


「——古の契約に従い、試練を与えん」


 身体の中を何かが突き抜ける感覚。

 そして人型は光に包まれて、朧げな姿をくっきりとさせて行く。



【ローレント・ミラージュ】Lv30

鏡の古代精霊。

全てを映す鏡となって、試練を与える。



 誰かに似てると思ったら俺だった。

 鑑定しても俺だ。

 誰がどう見ても俺だけど、こんなのありかよ?

 むしろ、俺より神々しい気がする。

 神聖な俺って感じ。

 俺が俺を見て俺以上だって言ってるんだから。

 俺もあのくらい俺……。

 よくわかんねぇ。


「エナジーボール」


「うわ!」


 いきなりですか。

 自動追尾してくる【エナジーボール】を腕でガードする。

 武器は?

 無い。


 肝心な時に装備するのを忘れていた。

 マジかよ……。

 アイテムボックスから出す暇もなく。

 というかアイテムボックス使えないんだけど。

 自分の実力で勝負しろと、ドーピングは許さないということか。


 武器くらい装備させてくれ。

 さて、冗談はこのくらいにして、俺が武器を持たないということは、相手も武器を持たない。

 コンピューター風情が、俺に無手での勝負を挑んでくると。

 片腹痛いかもしれんね。


「エナジーショック!」


「ッ!?」


 ミラージュ版俺。

 強いて言うなら俺ミラージュ。

 冗談だ。


 遠くから【エナジーボール】ばっかり撃ってるミラージュに接近して、胸元に【エナジーショック】を当てに行く。

 残念、躱されてしまったか。


「ブースト」「フィジカルベール」「メディテーション・ナート」「エンチャント・ナート」


「ブースト」「フィジカルベール」「メディテーション・ナート」「エンチャント・ナート」


 真似された。

 まあ良いでしょう。

 【ブースト】で速くなったミラージュの掌が、俺の胸元に接近する。

 【エナジーショック】だと予想できる。


 弾く?

 迎撃?


 距離を取られたら面倒だな。

 掴んでしまえ。

 そして引き込む。


「——キャッ」


 キャッ?

 太い声で情けない声出してんじゃねーよ!

 ミラージュの右手首を左手で掴み、引き込む。

 そして肘を内側から回して、引き込む勢いと供にぶつける。


「ぐえっ」


 内股から足を掛け、相手の喉元に体重をかけながら押し倒す。

 小外ギロチンだ。

 倒れ込みながら右ひざは股間へ。


「ぎゃっ!!!!!!」


 相手のHPは、そこそこ減っている。

 だよねー、俺だってやられたら大ダメージだと思う。


「このたわけが!!!」


 おいキャラ変わってんぞ古代精霊。

 目つぶしが来たが避ける。

 御丁寧にチョキで目つぶしだなんて。

 本当の目つぶしはこうやるんだぜ。


「あう!」


 目は非常にデリケートな部位。

 力を込めなくても、五本指でさっと撫でてやれば良いのだよ。

 バシッと指で弾いてやれば、人は反射で目を閉じる。

 次に狙うのは……。

 いや、先に【エナジーショック】を当てておこう。


「エナジーショック!」


「ぐはっ」


 HPの減りは、そこまででもない。

 やはり前衛ばかりと言えど、魔法職。

 魔法耐性は、かなりの物であると言えよう。

 作戦を切り替えて、マウントポジションからコングパンチだ。

 ミラージュのHPを全て削り終えて終了。


「うぐ、ひっく」


「俺の恰好で泣くなよ……」


「しらんわ!」


 白い神々しい人型に戻ったミラージュは、俺にある物を投げ渡した。

 なんだこれは?

 輝く光の玉でした。



【試練を乗り越えし者の証】

自分と同じレベル、同じスキルを持つ鏡の精霊を倒した証。

二次転職が可能になる。



 おお。

 と言うことは、無事に転職クエストはクリアという所だろうか。

 常に自分を乗り越えて来た人生だった。

 ゲームの中でも同じだなんて、良い設定だよなこれ。


 所詮ゲームで能力を同じにしても、心は違うだろう。

 苦節を乗り越えた俺からすれば、ミラージュ。

 お前は魔法使いなのに前衛スキルとかしかない俺の身体でよくがんばったよ。

 相手からすれば、とんでもないビルドだっていうし。


 ここは、完勝。

 ということで、いっちょ転職したらサイゼミアンでたらふく食べようか。


「古の契約に従いー、貴方に新しい力を授ける資格を—、与えますー」


 やる気無いなコイツ。

 まあいいだろう。


「早く帰れ」


 美声も形無し。

 そのまま一言も答えを返すことが出来ずに、俺は再び魔法使い協会の一室へと戻って来た。

 帰って来た俺を見て、ご丁寧に待っていてくれた美人さんがニコニコと微笑んでいる。

 眼福。


「お帰りなさいませ、無事、試練を乗り越えられたようですね」


「もし失敗した際は、どうなるんですか?」


「死に戻りです」


「え?」


「冗談です。一日のクールタイムを挟んで、試験に最チャレンジは可能ですよ。さて、それでは証を石盤にかざしてください」


「はい」


 かざすと、スッと光の玉は消えて行った。

 そこを起点に光が石盤を包み、そして石盤に書かれた読めない雰囲気だけの文字が光りだす。

 触れてみる。



◇現在職業:無属性魔法使い

☆次の職業を選択してください。

[魔法使い(火)]※選択できません。

[魔法使い(水)]※選択できません。

[魔法使い(土)]※選択できません。

[魔法使い(風)]※選択できません。

[魔法使い(光)]※選択できません。

[魔法使い(闇)]※選択できません。

[中級魔法使い(無)]



 まあ、そうだよね。

 っていうか、今からでも【エナジーボール】マックスにしたら魔法使いの属性変えれるのか。

 その選択肢は全くないけど。

 属性専用スキルとかあるのかな?

 だとしたら一杯スキル取ってる人とかいるのだろうか。


 闇雲に取ったとしても、管理大変そう。

 結果的に、どのスキルにパラメーターを降るかによって効果は変わって来そうだよね。

 光属性でヒーラーする為に光魔法使いに転職して、スキルを経てから他の魔法使いへ。


 例えば火属性を選んだら、回復ができる火属性。

 みたいになるんだろうか。

 んなこた無いか。

 俺も考えててわけわからなくなってる。



[中級無属性魔法使いに転職しますか?]

[yes/no]



 もちろんイエスで。



[職業が無属性魔法使いから中級無属性魔法使いになりました]

[スキルポイントボーナス5ポイント獲得]

[二次スキル解放]

[一次の類似スキルが上書きされます]

[称号”達成者”を獲得しました]

[称号””資格を有する者”が消滅します]



 おお、色々とスキルにも変化があるみたいだ。

 ますます期待が膨らむよね!

 そしてスキル関連で諸々やるべきことが残っている。


 アスポートに、魔闘スキルに。

 たくさんあるなあもう。




早めの更新です。




[称号”達成者”を獲得しました]

[称号””資格を有する者”が消滅します]

を追加しました。

思いっきり書くのを忘れていた称号です。



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