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【クリアオニキス・ブレスレット】
銀製の腕輪に、無属性魔法補正効果を持つ、クリアオニキスをはめ込んでいる。
銀によってオニキスの効果が僅かに上昇している。
・無属性魔法補正(中)
・耐久100/100
なんだかんだ落ちる時間となったので、すぐにスティーブンの部屋へと戻り終了。
そこから一度寝て、色々済ませてご飯を食べてログイン。
クリアオニキス・ブレスレットという名前の装備品。
さっそく腕にはめる。
ふふ、どうだよ。
と、言わんばかりにローヴォに見せつけてみる。
「フンッ」
鼻息一つで返される。
テイムモンスターめ、今一度、主人の強さと言う物を教えてやろうか。
格の違いとやらをな!
冗談はさておいて、スティーブンを探す。
ゲーム内でも腹を満たしておきたい所である。
「なんじゃ、もう起きとったのか」
「ええまあ」
「飯か? まっとれ」
卵、ハム、野菜、パンが乗せられた皿が降って湧いた様に出現。
スティーブンめ、テレポートを使ったな?
というか、朝食作るの面倒くさくなったのか?
「何が言いたいんじゃ?」
「いえ、暖かい物がいいなと思っただけです」
「たわけめ、師匠に作らせる弟子がどこにおる」
「ここに」
「破門じゃ」
「冗談です。頂きます」
「うむ」
たまにはいいね。
レタス、ハム、卵をパンに挿んで食べる。
ローヴォにもよそっておく。
この駄犬、サンドイッチは一丁前に食べやがる。
「うむ、次から朝食はこれじゃ。これが楽じゃ」
「ええ、賞味期限は大丈夫なんですか」
一番気になる所はそこだったりする。
それを聞いたスティーブンは眉を上げて言った。
「あんまり気にしなさそうじゃが……?」
「自分の食べる物と皿には気を使うタイプなんで」
「難儀な奴じゃのう」
別に潔癖という訳ではない。
だが、自分で食べる時って基本的に皿に埃一つつけたくないよね。
絶対洗うタイプだ。
でも大勢で居酒屋に言った時とか、回し飲みには抵抗は無い。
腹も十分満ちたことだ。
ソファに座ってパイプをふかすスティーブンに尋ねてみる。
「今日は暇なんですか?」
「どうしてじゃ?」
「最近忙しそうにしていたみたいなので」
「ああ、幾つかの町周辺の調査があってな、指揮を取っておった。エドワルドは、テンバーで行われる闘技大会の準備に奔走せねばならん、王国側からの指示である限り、他が動かねばならん状況でもあったのじゃ」
スティーブンは、ソファに深く座りなおすと。
少し疲れたように大きく煙を吐き出した。
「古代牙獣……」
「おぬしにはまだ無理じゃな」
きっぱりと言われてしまった。
話題にするのも時間の無駄だとでも言わんばかりに、再びパイプをふかす。
なんというか、こういう対応は川の向こうへ行った時を思い出す。
やはりレベルが足りないというのだろうか。
さて、本題だ。
「暇なら、もう一度あの荒野で修行を修めたいです」
「ほう?」
「連れて行ってください」
出来ればレベル上げを兼ねて行ってみたい所。
果たして、連れて行ってくれるのだろうか?
スティーブンはパイプの中に残っていた灰を落とすと、立ち上がった。
「良かろう、久々にな」
指がパチンとなる。
そして荒野へ。
どことなく久しぶりの感覚だ。
丁度、ワイルドベイグランドは目の前にいた。
野良でフラフラ荒野を彷徨っていたのだろうか。
【ワイルドベイグランド】Lv10
荒野を徘徊する人型の魔物。
荒野の砂埃や石が、長い年月をかけて動き出した。
今の俺からすれば、随分と弱く感じる。
「ほれ、挑まんか」
スティーブンが顎で促した。
俺も一つ頷くと、そのまま補助スキル無しで挑む。
ローヴォは待機で。
相対するワイルドベイグランドは、相変わらず鈍い動きで振り返り、腕を振りかぶる。
どうしようか。
得物はレイピアと鬼子の長剣を装備したままだったりする。
石相手に、流石に厳しいだろうか。
よし、素手で戦おう。
このレベルの相手を素手で倒せなければ、師匠に笑われてしまうからな。
「ふん!」
大振りのフックを頭を下げて躱す。
そのままタックルして、押し倒す。
レベルアップと共に、身体能力にも裏ステータスが効いて来ているだろう。
何の為に基礎訓練と称してフィールドを駆け回り、武器を握って戦って来た。
体感は、前より軽い。
押し倒して、ワイルドベイグランドの顔面に掌を当てる。
魔法スキル版発勁【エナジーショック】を当ててみる。
「エナジーショック!」
詠唱パラメーターを上げきって、格段に使いやすくなったな。
横目でスティーブンを窺うと、ほうとした顔つきであご髭を撫でていた。
衝撃がワイルドベイグランドの顔面に直撃する。
ゴガゴっと石が擦れる音がして、ワイルドベイグランドのHPは全損した。
当初、【エナジーボール】もそこそこ効いていたのだし、俺の今のレベルで威力重視の【エナジーショック】を急所に当てれば一撃なのも必至。
「やはり、得ていたか」
立ち上がった俺に、スティーブンが声をかける。
はい、と答えておく。
「ふむ、ならば次は全力を持ってしてかかれ」
「え?」
指が鳴る。
そして再びワイルドベイグランドが目の前に現れる。
そのワイルドベイグランドは少し違っていた。
無骨な石ではなく、少し光沢がかかった質感が見える。
造形は、ガタガタしてるのに。
どことなく滑らかな、……手触りがありそうだった。
【ワイルドオブザウィル】Lv1
荒野を徘徊する人型の魔物。
荒野の砂埃や石が、長い年月をかけて動き出し。
そして意志を持った。
土属性の魔法を扱う。
「え!? 上位種あるんですか!?」
「あたり前じゃ」
ぶっちゃけ、ワイルドベイグランドのことは修行用のモンスターだとばかり思っていた。
実際に、プレイヤーと同じレベル帯が用意されたモンスターというのは居る。
それぞれ師事するNPCから行くことの出来るエリアに、そう言ったモンスターが居るのだ。
十六夜が師事する弓師兼猟師のNPCは、腕を確かめる為に動く藁人形【ストローパペット】というモンスターが出現するエリアに連れて行ってくれるそうな。
ツクヨイから聞いた魔法使い協会は、【ウッドドール】という動く木偶人形が居るエリアでスキルの練習が可能。
だから、ワイルドベイグランドってプレイヤーに相対した修行用モンスターだと思っていたのに。
違うのかー、まじかー。
「ここへ召喚したんじゃ、相手は待ってくれんぞ」
スティーブンがそう言った瞬間。
足の裏から何かが蠢く震動を感じた。
慌てて飛び退く。
地面が隆起し、鋭い刺状を作る。
もろに下半身に受けてしまえば、急所攻撃だなあれ。
玉がヒュンとした。
「ブースト」「フィジカルベール」「メディテーション・ナート」「エンチャント・ナート」
補助スキルを掛けて行く。
そして今のウチに得物を取り替えておこう。
剣は流石にダメかもしれん。
三節棍とヌンチャクだ。
牽制がてら、一緒に取り出しておいた銛を投げてみる。
……弾かれますよね。
「——ッ!」
煽られたと受け取られたのだろうか。
銛を弾かれてすぐ、石の球体が飛んで来た。
地属性魔法の【ストーンボール】って所かな?
ヌンチャクでうち返しておく。
うち返した石球はワイルドオブザウィルの胸に当たって怯む。
ざまぁみろ。
見を低くして近づく。
プレイヤーと同じレベル帯を行くモンスター。
そして30レベルで名前が変わるとするならば。
俺の一つ上のレベル。
そして二次転職した、次の職へと足を進めたプレイヤーと同程度の実力だとでも言うのだろうか。
殴った感触は、かなり硬い。
「エナジーショック!」
ゴガンと衝撃音がする。
HPは削れているのか?
一割も減ってない!
「属性魔法を扱うという事は、それなりに魔法耐性を持っておる事と同義じゃ」
なるほど。
それを聞いて戦法を変えないといけない。
距離を取って三節棍を振るうのだが……。
「ワイルドベイグランドよりも遥かに硬い。小手技の打撃武器でどうなることじゃろうな、わしの魔樫の六尺棒を勝手に折りよって」
バレてましたか。
三節棍を小手技の武器だというスティーブン。
確かに、六尺棒よりも携帯性が重要視された武器だけどさ!
単純な殺傷力、打撃力、扱いやすさで言うとまだ棒武器の方がいい。
ある種、ロマン武器として名高い三節棍だが。
「成熟し、水魚を経て、そして龍尾と成る」
「ふむ?」
俺の一言に、スティーブンが首を捻る。
修行回でした。
ローレントが何を修めて、何ができるのかとかは気にしないでください。
武器扱えるのに、なんで剣が苦手なんだとか。
理由有るんで。
言葉に深い意味はありますけど、どこから引用とかは全くしてません。
それっぽい事を言ってるだけです。
あとがき追加もしかしたらあるかもです。




