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本日二更新目です。
さて、次はどこを目指そうか。
このまま東へ崖伝いに向かえば、コボルトクリフの居た崖の下へ向かうのだろう。
もう日が明けているしこのまま崖伝いに西へ。
ん?
なんで西かって?
ここから崖なら、東へ向かってもずっと崖に決まってる。
西へ、そして山を登って東へ。
そうすることで崖の上に行けるのではないかと、踏んでいる。
トモガラからも了承を得て、少しの休憩を取った後進みだした。
狙いは?
コボルトクリフ也。
あの日の屈辱、晴らさで置くべきか。
この長剣のサビにしてくれるわ。
レイピアを控えにして、取り回しやすいヌンチャクを控えに、長剣を持って先を進む。
「いいな、その剣。ずるくね?」
「なんかゴブリンソードマンからドロップした剣」
「へえ、なら俺のヒーラーロッドって書いてる杖はヒーラー系のゴブリンからドロップしたやつなんかな。高値で売れそうだ」
ぐふぐふと含み笑いするトモガラと共に、まずは南の山へ。
そして方向を変えて東へ進め。
珍しく久々にオークと遭遇した。
三体のグループだった。
俺、ローヴォ、トモガラで一体ずつ片付ける。
俺は、自分の獲物に先制攻撃とばかりに剣を投げた。
肩口に剣が刺さったまま、オークお手製の槍が鋭く突かれる。
【ブースト】と【フィジカルベール】だけで容易に動きについて行ける。
何レベルだと思ってるんだ、26レベルだぞもう。
手甲を使って容易に捌く。
HPは?
全く減ってないね。
いい調子だ。
捌いた手で腕を掴み、引き寄せる。
猛然と牙をむくオーク。
手元に鬼子の長剣を引き寄せると、そのまま首元を薙いだ。
長剣は置くだけ。
前のめりになったオークの首筋は、刃というレールを走る。
そして頭と身体がバイバイした。
抜群の切れ味、こいつは良いぞー。
トモガラは斧でまっ二つに。
ローヴォは、背中に食らい付いて動けなくしてました。
うむ、俺らを前にしたらオークはただの豚肉でしかない。
「トンテキゲット」
「わおん」
トモガラの声に喜ぶようにローヴォが反応した。
今焼いて食ってもいいんだぜ、肉。
俺が調理してやる。
さて、冗談はさておき。
再び手頃なモンスターを索敵させつつ先へ進む。
出来るだけ猿は回避したい案件だ。
クラスチェンジ一歩手前なサップリングマンやら、ノイジーチックやらを倒しながら東へ向かって進む。
モンスターに少しだけ変化があった。
【喧し鶏・オス】Lv2
うるさいだけの鶏が、クラスチェンジを経て凶暴になって煩わしくなった。
雄の方が身体が一回り大きく、力が強い。ハーレムを築く。
【喧し鶏・メス】Lv1
うるさいだけの鶏が、クラスチェンジを経て凶暴になって煩わしくなった。
別名、ヒステリーチック。卵を産むともっとうるさい。
「ピカタが作れるぜ!」
とトモガラは飛びかかるのだった。
確かに、卵を産む雌がいれば作れないこともないよなあ。
なんて思いつつ、羽根を毟る作業がスタートする。
激しい雄の抵抗に合いつつも、六体グループを無事狩りきった。
「卵だ、卵掛けご飯が食べたい」
俺も食べたい。
米があればなああああ!!!
【喧騒鶏の肉(腿)】
騒音鶏とあまり変わらない味。
【鶏卵】食材
普通の鶏卵。
しっかり管理すれば雛が孵るかも。
アイテムボックスに大事にしまう。
帰ったらサイゼに渡しましょうかね。
ちなみに雌雄揃って生まれた卵って、雛が孵ったりしないのだろうかね。
「ああ、調教スキルマックスでその辺はある程度カバーできるようになるらしいぞ」
「調教スキルなのに?」
「まあ鶏の卵くらいだったら無印調教でもいけるんじゃね?」
「どこで聞いたんだよ」
「ノークタウンの調教師」
なるほどな。
と心の中で納得しておく。
ちなみにスキルを上げているのかと言えば、お互い一ポイントも振ってない始末だった。
これは食べるようだな。
もし調教スキル上げしてる物好きが居たらまた取りにくれば良いや。
再びローヴォが見つけて来た喧し鶏を狩りつつ、更に東へ。
おっと、こんなモンスターも発見。
【マイナースタンプ】Lv3
動く切り株。切り株の振りして人を襲う。
稀に斧が食込んでいることがある。
「俺の出番だぜ!」
まっ二つでした。
流石樵夫、木に強い。
【板材】素材
凡庸性の高い板材。
「しけてやがるぜ!」
酷い物言いだった。
マイナースタンプだって頑張って生きてるんだ。
お次はマイナースタンプにサップリングマンが三体座っている光景だった。
レベル的にマイナースタンプが従える立場だよな。
ここもトモガラ無双。
トモガラ無双シリーズだ。
森では最強に強いぞトモガラ、いけいけ。
最早観戦状態だった。
巨大な戦斧はアイテムボックスにしまってあり、鉞片手にサップリングマンの四肢を伐採。
丸太にして息の根を止めると魔力を含んだ丸太の完成。
高値で売れる。
マイナースタンプは薪割りの如くパッカンしていた。
「川に網でもはれればこのまま滝壺まで行って流すのに、一々もって帰るのが面倒だ」
「検討しとく」
向こう岸付近って、キバウオめっちゃ居るから網なんかすぐに食い破られそうなんだけどな。
あと百メートルを超える横長の網なんて、流石に糸が足らん。
誰かを常駐させて丸太を拾うのが一番手っ取り早いと思う。
「NPC、雇うか?」
「できんの?」
「村として機能すれば出来るってレイラ言ってただろ、だったら俺が雇うのも可能じゃん。採算が取れればアリだ」
その発言は、一生ここで暮らします宣言だな。
アイテムボックに関して、イシマルも言っていたが……。
どうしても重量オーバーするようなアイテムが有る場合、生産職は特定の素材ならば一つだけアイテムボックスに入れておける。
巨大な石材、巨大な丸太、巨大な魔物、巨大な魚。
石工、樵夫、猟師、漁師な訳だ。
俺は別に高値で売ることを目的として無いので、捌いてアイテムボックスに入れる。
トモガラの場合、魔力を含んだ木を加工する技術が無いので、丸のままで木工所へ持って行かないと行けない。
サップリングマンの四肢を切り落とした良い感じの素材は、ギリギリアイテムボックスに収まらない重量なのだ。
ドロップアイテムの板材はアイテムボックスにスタックできるが、丸素材は無理。
謎仕様がある限り面倒くさいことこの上ない。
売価を知るトモガラはそれを惜しみ、必ず手で運ぶ。
俺を使うときもある。
なんて奴だ。
「仕方ねぇ、持てるのは俺とお前で三本までだから、後は割ってアイテムボックスに入れとくか。割ると普通の木になっちゃうんだよなあ……」
ほらな、自然とカウントに入れられてるだろ。
最早諦めてる。
そして崖の上へと辿り着いた。
コボルトとは遭遇しない。
崖の上からの景色はそこそこ、遠くに町は見えない。
森だった。
「お前がやられたのは?」
「もっと東かな、森と薮の境目だったから」
一通り景色を堪能しながら、そろそろ良い時間なので昼飯とした。
作り手はトモガラだ、何故か率先してくれた。
そう言えば、七年くらい前に、どこぞの山中で俺が炊事当番したんだが、その時も次の日からトモガラは飯は作るから他の準備をしろと言っていた。
これじゃ俺が飯マズみたいじゃないか。
焦げてても食えるだろ。
流石に悪いのでストレージから火種を出す。
焚き火を起こすと、オークから手に入れた豚肉を網の上に乗せて焼いて行く。
簡単バーベキューセットだ。
硬いパンも添えて。
ふむ、豚肉も良い物だ。
鶏肉も焼くぜ、なんだかんだ楽しんで食べ過ぎてしまった。
【コボルトクリフ】Lv13
ゴブリンに似ている人狼の亜種。
崖の上に巣くう魔物、ハイコボルトとも言われている。
匂いに釣られてか、コボルトクリフが数体引き寄せられていた。
ついに現れたな。
「あいつか、腹ごなしに丁度良い」
「ブースト、フィジカルベール、メディテーション・ナート、エンチャント・ナート」
補助スキルを使用しながらトモガラの言葉に頷いて、長剣を投げつける。
ついでにヌンチャクも投げてやれ、銛もだ。
先制のアドバンテージを獲得して、そのまま手元に長剣を引き寄せると【スラッシュ】で一閃。
「スラッシュ!」
「グフシュ!」
コボルトクリフのHPは一瞬で蒸発。
今回はトモガラも、ローヴォも居る。
先遣隊として現れた、コボルトクリフ六体を相手取る。
返す刀で怯んだコボルトクリフを斬り捨てる。
剣術は、そこまで得意じゃないがある程度は修めている。
鬼子の長剣は、血に飢えているのだ。
「使えるじゃん!」
「お前程じゃないけどなッッ!」
狙いは全て急所。
と、言ってもフェイントを織り交ぜて確実に斬れるようにして行く。
つくり、くずし、かけ。
この三要素ではトモガラよりも俺の方が勝る。
しのごの言わさず初手にて全力で押し切るトモガラ。
俺は後の先を取るタイプだったりするのだ。
例えば……、警戒してこちらを窺うコボルトクリフが居る。
短剣を構えて、隙がない。
ようにも思えるが、まずは”つくり”。
剣を下し自然体へ。
そして一見無防備でありながら、気は常に張っておく。
三百六十度、全てに対応できるように。
初動は相手だ、そこへ合わせるように構えを取る。
相手を投げるためであれば、流れに逆らわず、組み取る。
今回は剣だ。
コボルトの一撃を、剣の腹で捌き受け流す。
刃先のレールを沿わせるように。
コボルトの腕がぱっくりと裂ける
これで”くずれた”。
そのまま剣を振り抜く。
狙いは首だ。
血が噴き出すと共に、HPも急激に減って行き、倒れ臥した。
さて、ここまでやってみて俺の中では何点かというと。
三十点にも満たないのだ。
百点満点では既にコボルトが攻撃態勢に入った時点で、こちらが攻撃態勢を整えている。
うむ、中々剣も上手く行かない物だ。
「終わった?」
「まずまずかと」
トモガラが死体に座ってこっちを見て言った。
剣から血を払うと、鞘に戻す。
「見せてやるよ」
ローヴォが苦戦していたコボルトを見据えたトモガラは、それだけ言って立ち上がった。
ローヴォに戻るように指示をする。
HP残量を見る限り、ローヴォに少し分があったみたいだな。
息を呑んだコボルトは、逃げ道が無いと知ると、一人でも飛びかかった。
トモガラは鉞を両手に持っている。
そして飛びかかるコボルトに……。
「ハッ!」
一瞬で振り上げ、そして一瞬で振り下ろした。
それはまさに剛能く柔を断つと言うのだろうか。
いや、力のぶつかり合いにて問答無用で叩き潰す。
そんな感じた。
「フギャッ」
一刀両断、手に持っていたナイフが圧し折れている。
何と言うパワーだろうか。
「まあ、斧だからヒットポイントさえ覚えてれば剣より簡単にまっ二つだな」
さて剥ぎ取りしよう。
コボルトクリフ六体の死体が消える前にね。
【狼魔の牙】素材
それなりの硬さを持つが、中途半端な素材。
虫歯になった歯は呪術に使えるという。
【魔石(小)】
色々な素材として利用できる。
価値に比例して大きさと色艶が変わってくる。
【魔石(中)】
色々な素材として利用できる。
価値に比例して大きさと色艶が変わってくる。
ほお、魔石(中)がドロップするなんて、中々優良な獲物じゃないか。
見た所、魔石(中)がドロップしたのはレベル十六の個体だった。
残りの個体はレベル十五から十三だったので、何となく法則がわかってしまった感。
あと二話でローヴォクラスチェンジします。
とだけ、報告しておきます。
ご要望、ご意見ありましたら御感想頂けると嬉しいです。
全て読んでいます!
ご返信する時間は余りございませんが!
ではまた零時に。




