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感想ありがとうございます。

タイトルポンポン変えて申し訳ないです。

もう変えません!

「この赤いキノコがマナポーションの材料になるマジックマッシュルームよ」


 レイラが手にもってみせるのは、傘が大きく開いた赤に白の斑点模様が付いた見るからに毒々しいキノコ。

 おぞましい模様だ。

 よく見ると細く短い毛が無数に生えてる。



【マジックマッシュルーム】

マナポーションの材料になる希少素材。

薬草よりも魔素が濃い場所でしか育たない。



「よって、このキノコがなっている場所に生息する魔物は強く凶暴になると言われているのよ。まあ、図書館だったり、役所の資料室で気軽に調べられるわよ」


「北の森、豊潤説」


「いや、それは無いわね。食材で言うなればちゃんとした生態系がある南に分があるわよ」


「ああ、生態系ぶっ壊れ」


「そう、クエストエリアみたいなもんだし、凶暴な蟻と蜂しかいないから、テンバーもノークも余り手が出せないみたいね」


 そこへ、虎のイベントモンスターときたもんだ。

 南の森より危険が一杯なんじゃないだろうか。

 そんなことを思いながらも、キノコを採取して行く。


「東はキノコが多くて、西は木の実が多いみたいよ。みんな癖が強い奴ばっかりだけど」


「蟻と蜂がそこで関係しているのか」


「うーん蟻がどうかはわからないけど、蜂の方は何となく想像できるわね。……後ろ」


「ぐわォッ」


 レイラが俺の背後を指差す。

 どうやら後ろからマーダーアントが迫って居たらしい。

 単体でいるのは言わば偵察、もしくは広範囲に渡って歩き餌を探す役割の個体だ。


 ローヴォが唸りを上げてマーダーアントの一体をかみ殺す。

 触覚を食いちぎり柔らかめの胸の辺りを粉砕して行く。

 こっちの索敵はローヴォに任せておけば問題ない。



[テイムモンスター:ローヴォのレベルが上がりました]



 これでレベル12を達成である。



◇テイムモンスター

テイムネーム:ローヴォ

【グレイウルフ】灰色狼:Lv12

人なつこい犬種の狼。

魔物にしては珍しく、人と同じ物を食べ、同じ様な生活を営む。

群れというより社会に溶け込む能力を持っている。狩りが得意。

[噛みつき][引っ掻き][追跡]

[誘導][夜目][嗅覚][索敵]

[持久力][強襲][潜伏]

テイムモンスター装備

【合わせ翅と翡翠の首輪】

※躾けるには【調教】スキルが必要。



 ふむ、特に変わった物は無い。

 とうとうレベルが十を越えているのだが、クラスチェンジは一体いつになるんだろうか。


「移動するわよ」


「うい」


 まだ全て取りきっていないが、マーダーアントに遭遇し、倒した場合はすぐに移動をしなければならないというルールが存在する。

 襲われた人が語るには、ファミリアントなんかの比じゃないくらいマーダーアントは集まってくると。


 アントトループと呼ばれる軍勢は、その数によって脅威度が変動する。

 脅威度って何、アントトループって何。

 疑問は一度置いといて、集まる数はざっと五十体以上。

 とんでもない時には百体程の軍勢にもみくちゃにされたプレイヤーも居たらしい。


「ワンちゃんが居ると楽ね」


「がうがう」


 ローヴォがいれば、出来るだけ策敵してマーダーアントが少ない所に辺りを付けて戦闘を回避できる。

 今回の収穫は中々大きいそうだ。

 俺としては、やや不完全燃焼気味だけど。


「マーダーアントの素材で使えそうなのはありますか?」


「うーん毒針と甲殻かしら? 見たことは無いけど、蟻蜜なんかあったりしてね?」


「だったら西は蜂蜜?」


「ありえそうよ」


 確認したいなあ。

 そんなことを考えながらマーダーアントと連戦していると、レイラが言う。


「あんまり深くまでは行かないわよ。今日はもう十分なんだから」


「うーむ、薬草も十分?」


「これは薬草じゃないわ、日輪草っていう効能を高める為に用いる素材よ」


 ほらみて、と上を示す。

 裸一貫で北の森の入り口を進んだ時には、木の隙間から青空が見えていた。

 南の森の奥地と同じように、北の森の奥も鬱蒼として昼間でも薄暗い。

 そんな中、ぽっかりと木の隙間から木漏れ日が射していて、僅かな光を一身に受けた深緑の草がひっそりと自己主張していた。


「夜は月夜草が取れるのよ〜」


 とか言いながらブチブチと抜いて行く。

 何気に薬草系の知識が深まる道中でもあった。

 キノコ類のモンスターはいないんだなぁとか考えつつ、キノコを毟っていると。


「きゃあっ!」


 何とも色気のない悲鳴と供に、バインという弩の弦がつがえた矢を放つ音が聞こえた。

 一体どうした。


「大きめのマジックマッシュルームがあったから引き抜いたら、蟻の死骸に寄生してて……」


 指差す方向を見ると、地面に縫い付けられた蟻が一体。

 その身体にはびっしり大きめのキノコや小さめのキノコが生えており、かなりグロテスク。

 そしてピクピクと足が動いていて、まだ死んでないみたいだった。


「き、キモい」


「たしかにキモいな、燃やす?」


「火の魔法でも使うの?」


 即行ストレージから松明を出す。

 ついでに火をつけておいたロウソクも。

 部屋にある間はロウソクやカンテラの火は消えない。

 こうやって手元に引き寄せるとロウソクなら一時間で消費してしまうのだが……。


「ああ、便利ね」


「おかげさまで」


 ロウソクの火を松明に移して、ごうごうと燃える松明の火を蟻のキノコに近づけてみた。

 ある程度マジックマッシュルームは採取してある。

 寄生された死骸は僅かに揺れ動きながら燃えカスへと至る。


「くっさ、あ、ダメローレント、吸わないで」


「へ?」


「マジックマッシュルームを燃やすと幻覚症状を生むガスが発生するのよ」


 はれほれ。

 なんかそう思ったら、急に頭がくらくらと。

 気付けば、レイラの隣にコボルトクリフが居た。


 崖を落とされた思いでが蘇る。

 コボルトは、四足歩行で噛み付いて来た。


「痛って!!!」


「ワォン!!!」


「は、ローヴォか」


 HPが二割減っていた。

 幻覚症状ってこういうことか……。


「良かったわね、ワンちゃんがいて」


「あ、ああ」


 ガチ噛みされたけどな。

 ローヴォのひと噛みの痛みで目が覚めた俺の足に、レイラが回復ポーションをかけてくれる。

 痛みは消え、徐々にHPが回復して行く。


 幻覚症状でコボルト見るとか、かなり恨みつらみが溜まっているみたいだな。

 いずれ蹂躙しに行ってやる。

 そう誓った。


「そろそろ帰るわよ」


 ローヴォのお陰で、マーダーアントを上手い具合に巻きつつ帰路につく。

 十二分に素材類は確保できた、レイラが背負っている籠にはたんまりだ。

 グロテスクなキノコ類と薬草類がたっぷりとたっぷりと。


「グルルルル」


 危険を知らせる唸り声。


「どうしたの?」


 レイラはローヴォの急な唸り声に少し驚いている様だった。

 何かが来る、警戒するようにレイラに言って、盾になるようにローヴォが唸る方向とレイラの間に入る。


「グルア!」


 出た、虎だ。

 そして有無を言わさず飛びかかって来た。

 どうやら狙いはレイラ。


「ブースト! フィジカルベール! メディテーション・ナート! エンチャント・ナート!」


 そして事前に詠唱していた【エナジーボール】も間に合った。

 タイミングよく、虎の顔面に魔力の塊が打つかる。

 バチッという音がして、虎が怯む隙をついて、ローヴォが大きく声を上げて食らい付いた。


 狼と虎じゃ、足の太さが段違い。

 ローヴォじゃ無理だと判断して、三節棍を振りかぶって応戦する。

 猫パンチと牙に気をつけて、ローヴォを援護して行く。


 レイラは?

 最初はびっくりしてたが、弩を構えなおすと構わず撃ってでている。

 剛胆だな。


「回復のスクロール居る?」


「頼む!」


 レイラからフェアリーが舞う。

 そして揉み合いですり減ったHPが徐々に回復して行く。


「グルルル!!」


「グワオ!!」


 首元は三節棍を回してどうにか抑える。

 今のうちに虎を鑑定する。



【キラータイガー】Lv14

フォレストタイガーの上位種。

どこから来たのかはわからない。

人の味を覚え、そして飢えている。



 クラスチェンジ後だとしたらローヴォと同格くらいか。

 三節棍の他に予備で装備していたレイピアを持ち首筋に突き立てる。

 既に身体には数本の矢が深く刺さっている。

 頭部は俺が抑えているので、ローヴォは後ろ足に食らい付いている。


 暴れる相手の上を取り抑えて行く。

 押さえ込みでは負けんぞー。

 レイラの毒とも相俟ってそこそこ早いペースで虎へのダメージを蓄積して行き。

 最後は喉元深くから、悔しさの籠った低い唸り声を上げて息絶えた。



[テイムモンスター:ローヴォのレベルが上がりました]



「……倒しちゃったわね」


「レベル的には下だったよ」


 奇襲にローヴォが対応できたのも大きい。

 蟻が来ないうちにちゃっちゃと解体しておこう。



【人食い虎の牙】

長く鋭く発達した牙は、研ぐだけでナイフになる。

軽くて丈夫。


【人食い虎の爪】

細く鋭い、研がなくとも切れ味は抜群。

軽くて丈夫。天然の暗器。


【人食い虎の皮】

フォレストタイガーの皮は、装備に向かない。

だが嗜好品として高値が付く。



「……欲しいのある?」


「うーん、皮貰っていい? 後は上げるわ」


「了解」


 装備に向かないなら要らない。

 美味く高値で捌けそうなレイラが持っている方が良いだろう。

 そのかわり、俺は爪と牙を受け取った。


 ゴツい猛獣なだけで、特殊効果はないみたいだ。

 まあいいでしょう。


「そうだ、クラリアスだっけ? 討伐隊の編成と物資の準備は一応終わっているわよ」


「ついに来たか」


「ええ、後はしっかりした船か筏を作って、操船できるプレイヤーを増やして、川を下るだけね」


「もし筏が壊れた場合は?」


「泳いで森へ戻らなきゃね」


 聞くだけでも装備を付けたまま泳いで戻るなんて難しそうだった。

 そして更にレイラは続ける。


「ただ、……北の森の東側に戻る形になるのよね」


 マーダーアントの巣窟であるこの森だった。

 失敗したら、どう転がっても地獄みたいなものか。


「もうちょっと準備が必要だと思う」


「そうよねぇ」


 中々前に進まなくてもどかしいが、みんなで進むクエストは、戦いは、入念に準備するべきだと思う。

 一人で行く分には突貫でも構わんが。


「わおん」


 抗議を上げるようなローヴォの声がする。

 俺の考えがわかったというのか。

 それとも顔に出ていたか。


「また頼むときがあったらよろしくね」


 それだけ行ってレイラと別れた。

 さて、今日はこの辺にしておこうかな。

 地味に闘技大会も近くなって来ている。


 バトルコミュニケーション・オブ・エンカウント時代の友達も参戦すると聞いて。

 少し熱が入るよな。

 レベルあげ頑張ろう。

 今週でレベル三十まで上げたいのが本音。



そろそろ闘技大会が始まるよー!

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