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 森の奥深くは、流石に人の手の及ばないテリトリーと化す。

 薬草の群生地帯も新たに発見した。

 ゴブリンの魔の手がかかっていない群生地帯だ、マップを確認すると、シークレットエリアの丁度真っ直ぐ東の位置になる。


 森と藪の境目を進んで行くと、大きな切り立った崖へと辿り着いた。

 モンスターの変化はどうだろうか。



[個人掲示板-0001]


7.【南東の藪】

◇昼夜

・スワンプスネーク

・ジャイアントホッパー


◇昼のみ

・ヒノワトンボ

・オニヤンマ

・オーガヤンマ(オニヤンマのクラスチェンジ先)


◇夜のみ

・ヨイイブキ

・ギンヤンマ


◇ドロップ

・翅類、触覚(錬金素材)

・麻痺毒(蛇)

・銀、銀翅(ギンヤンマ)

・魔核(オーガヤンマ)

・切り裂き翅(オーガヤンマ)



 なんだかんだ、個人掲示板と言う物を発見して、そこへ書き込んで覚えておくことにした。

 メモ帳機能として利用している。

 他の人が見てるのかと聞かれれば、ホワイトリスト化すれば閲覧可能らしい。

 まあ、認知症一歩手前みたいなメモを見られるくらいなら、ホワイトリストは最初から最後まで俺一人になるだろう。


 メモのレベルもまとめレポートというより。

 ただのメモ。

 本当に走り書きレベルだ。

 一応どんな地形だったかもメモってある。

 マップをスクリーンショットして、現在地としてアップロードも完了した。


 コピペして継ぎ足して行く方式なので、下に行けば行く程最新データが載る。

 使い勝手はあんまり良くない。

 まあ良いでしょう。


 そんな中で、忘れちゃ行けないリスト。

 というか、取っておいてる素材類がある。



18.【レアっぽいの】


・オーガヤンマ

【切り裂き翅】

魔力を通すと、震動し、切れ味が増す。

取り扱いには注意が必要。


【鬼魔蜻蛉の魔核】

驚異的な自己回復力を生む核。

一定のレベルの魔物は心臓の他に核を持つ。


・ドッグプレーリー

【肥大した肝】

魔力を宿した肝。

みなぎる活力の元。

様々な効能を生む。


・レア・ゴブリン

【小鬼の魔結晶杖】

レア・ゴブリンマジシャンの持つ杖。

無属性魔力を上げてくれる小さな魔結晶が付けられている。

・無属性魔法スキルの威力向上(中)



 昼間に出たレアゴブリンの報酬はもうとっくに追加しておいた。

 こうしておけば忘れないでしょう。

 アイテムボックスも出来るだけ余計な物を入れないようにしないといけない。

 そうだ、蛹と繭も追加しておこう。



・蛹と繭

【幻想燈虫の蛹】

幼虫が成虫に変態する時の物。

繭を剥がすと死んでしまい素材となる。


【幻想燈中の繭】

この糸は異常状態耐性を持つ。

中の蛹を守る為の万能の糸。



 これでよし。

 新しく追加しておいた。


 ちなみにカッコイイ漢字が当ててあるが、俺はこれをずっとモスピラーだと思っている。

 東南東の森にモスピラーとモスチート以外のこういう系統の虫は出て来ない。


 だからこれはモスピラーなんだ。

 カッコいい名前過ぎるので無理矢理モスピラーで納得するんだ。


「どうしたんですか?」


 黙ってウィンドウを操作していた俺を、心配するように覗き込む十六夜。

 丁度書き込みが終わった俺は、適当に相づちをうつと目の前の影に目を向けた。


 そうか、シークレットエリアにも滝壺があったし、真南へ進むと山になっているから、こう言った段差に打ち当たるのも仕方ないのだろう。

 船で川を上る計画は無しになってしまったな。

 むしろ、川の最後の集落がこのテンバータウンだったから水運とか重要視されずに廃れてしまったんじゃないか。


 ノークタウンの川幅はもっと広かったし。

 それを考えると、テンバータウンにモンスターを狩ってまで水運を繋げる意味は無いと思えて来た。

 あったら便利程度だったのだろう、昔は。


 時代も変わった。

 森には魔物がうようよと、商人のルートにも熊が出てくる始末。

 御都合主義だが一体どれだけのNPCが犠牲になったのか。


「無視ですか? 悲しいです、ごめんなさい」


「そんなことは無い」


 泣きそうになる十六夜をなだめながら、この先をどうするか話し合う。


「森の中から、崖の上に行けるんじゃないか?」


 ブラウが言った。

 ここから先は山になっているので、回り道していけば行けないことも無いが、滝壺がそこそこ西へ向かわねば無い位置なので、些か遠回り過ぎる気もする。


「ローレントの話だと、かなり遠回りじゃないの?」


 エアリルが面倒だと斬り捨てた。

 そしてアルジャーノが言う。


「……登れ」


 皆が、ええまじかよ。と【リットライト】に照らされた夜の崖に目を向ける。


「なら先に見て来ましょうか」


 何故か満更でもない十六夜が、ブルーノを飛ばすのだった。

 そして「異常はないみたいです」の一言で崖越えが決定したのだ。


 まあ、良いか。

 簡単だし。


「ちょちょっと、どうやって登るのよ?」


「え? 普通に登りますよ」


 十六夜が顔と身体に見合わない野生児を発揮する。

 彼女の顔は彫りが深く美人。

 そして金髪で狩り人すがたで弓を背負っている。


 だが忘れている。

 コイツの運動能力を……!


 テイムモンスターが傍に居るとはいえ、俺と同じようにソロで夜の森を走り続ける奴だ。

 いや状況が違うな、プレイヤーキラーというストーカーから逃げ回りつつ、狩りを続けるだけのポテンシャルを持っている奴だ。


「嫌よ、パンツ見えちゃうじゃない」


「そこかよ」


「何よブラウ、その股間にエアカッターお見舞いしようか? 是非決闘しましょ」


「ひえ」


 十六夜と違って、魔法職の二人、エアリルとアルジャーノはスカートにローブを羽織って杖を持っている。

 崖を登れるかと言えばやってみないとわからないが、高確率で俺とブラウがどっちかを下から上に押し上げなければならないかもしれない。


 パンツが見えてしまうな。

 冷静にそう考えた。

 冷静にね。


 冷静に考えた結果、ローヴォも流石に厳しいことがわかった。

 ならば、簡単な方法があるじゃないかと俺はアイテムボックスからロープを取り出す。


「あ、私が先に行って縛って来ましょうか?」


「いやいい」


 十六夜に縛らせたら、どうなるかわからん。

 信じるのはテイムモンスターだよ、君。

 ってことでブルーノを狩りて、ロープを掴んで崖の上へと飛んでもらう。

 力強く飛んだブルーノは、ロープを持ったまま十六夜の元で戻って来た。


「ちゃんと強そうな木を一周して来ました」


「どうも」


 ロープの端同士を結べば、結び目は解けないか心配しなくていいロープの完成だ。


「じゃ、おさき」


 それだけ言って俺はロープを持って上を目指した。

 ローヴォは?

 久々に背負ってますよ。


 登りきると真っ暗でした。

 下から【リットライト】が照らしているが、それでも崖が影になって余計に見えない状況になっていた。


「なにかいる〜?」


 エアリルの暢気な声が聞こえてくる。

 そして、下ではブラウが最後尾を登ると言い張って、それに対して再びエアリルが憤慨の声を上げていた。

 セクハラ魔人ブラウ爆誕。

 本人はそんなつもり毛頭無いと思うがね。

 アルジャーノ辺りは全く気にせず登って来そうな雰囲気もある。


「何も見えな——」


 不意に風を切る音が聞こえた。

 ローヴォの短く吠える声。

 それは危険を告げるものだった。


「フィジカルベール!」


 ギリギリで発動が間に合った。

 身体を固める、急所を守る。

 右肩に強い一撃を浴びてしまった。


「く、そ!」


「何があったの!? ちょっとローレント!!」


 夜目のスクロールを起動しなければ。

 その前に、ストレージから松明を数本取り出して、火をつけなければ。


 火種に使っていたカンテラは?

 アイテムボックスの中だ。


 アルジャーノの【リットライト】に頼り過ぎていたかもしれない。

 暗闇からの奇襲が俺を襲う。

 聞こえて来るのは唸り声と、短く息を吐く音。

 ローヴォの息づかいに似ている。


 そんなローヴォは俺に纏わり付く何かに対して食らい付いた。

 その隙に、カンテラを取り出して、中身を松明にぶちまける。

 ガラスが割れる音、そしてごうごうと燃え移る火の粉。

 正体が映し出された。



【コボルトクリフ】Lv14

ゴブリンに似ている人狼の亜種。

崖の上に巣くう魔物、ハイコボルトとも言われている。



 ゴブリン程の体躯に、狼の獰猛な顔。

 顔と身体のバランスが不自然な程悪く、それが更に不気味さをかもし出していた。

 食らい付いた箇所は、脛と腕。

 丁度脛当てと手甲に守られている部分だった。


 痛みと共にHPが減って行く。

 フィジカルベールでガードできないもの、つまりナイフが肩に刺さっていた。

 かなり錆びたナイフ。

 意識すると激痛が押し寄せて来た。


「登ってくるな!!」


 下で騒ぐ連中に大声を上げる。

 わらわらと出てくるコボルト達。

 流石に手に負えなくなってローヴォの戦線も硬直し始めた。


「げふっ」


 ゲップのような声でコボルト達は連携をとり、襲いかかる。

 俺の得物は六尺棒とレイピアか、どうしようか。

 先に【アポート】で目の前に松明を転移させる。

 足止めからの、腕と脚に食らい付くコボルトを蹴散らして行く。


「邪魔だ!」


 HPが全損するまで食らい付いてくるって、どんだけだよ。

 少し焦りながらも【ブースト】にて身体強化。

 そして、抜いたレイピアでひとつきふたつき。

 後は、脛に食らい付いた一体という所で、ローヴォの保っていた均衡が崩れた。


「グルルルル!!」


 威嚇するも、群がるコボルトにはどうしようもないみたいだ。

 そのまま崖の端まで追いつめられるローヴォ。


 いかん、落ちるぞ。

 案の定、コボルトの突進に押されて身を投げ出された。


「ローヴォ!!!!」


 身体が真っ先に動いた。

 十メートル以上ありそうな崖の上から、俺は躊躇せず飛んだ。

 片足にコボルトを付けたまま、ローヴォを抱える俺は……。


 数十メートルの崖を真っ逆さまに落ちた。

 地面がすごい早さで迫ってくる。


 スティーブンがサイクロックスにした所業を思い出した。

 あれ、こんなに怖いもんなのか。


 ローヴォを庇うように、俺が下になって叩き付けられた。


「ローレント!」


「ブルーノ!! 上を警戒!」


「上に何か居るぞ」


「……脚に食らい付いてる魔物かも」


 そんな声を聞きながら俺のHPは全損した。

早め更新でした。

ちょっとずつ感想返信していきます。

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