表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
610/626

-610-


『たこ焼きでも作ってるの? とりあえず乾燥昆布はストレージに入れておいたわよ。カツオを早めに送ってくれればこっちでなんとか節にしておくわよ? もしくはイワシね。タコと一緒に送られてきた魚、マルタからすれば全部底の方にいる魚らしいじゃない? 海面付近を回遊する青物(?)だっけ、それを釣りなさいよ』


 みんなを乗せた船に戻る途中。

 ストレージに乾燥昆布が入れられたことを告げるメッセージが届いた。


 さすがレイラである。

 仕事が早い。


 そして、次は青物のご所望ということだ。

 とりあえずそれは今度なんとかしとくから、さっさと味噌の開発に取りかかってくれと返事をしておこう。


 でも醤油があるなら味噌だっていけるんじゃないのだろうか。

 そういえばそうだよ、味噌あるはずだよ。


 歴史だって、確か味噌が先なはずだってば。


『味噌ね。あるわよ』


 衝撃的な事実だ。

 あるんかい。

 味噌汁のみたいです。

 懇願します。


『そっちはたこ焼きかもしれないけど、こっちはタコの唐揚げと、焼き魚とアラカブ(?)の味噌汁とお米で食卓を彩ってるわよ。やっぱりこの歳になると魚よねー。はい写真……[画像][画像]』


 生産組のメンツで食卓を囲っている写真が送られてきた。

 なんともまあ、にこやかな食事風景だろうか。

 くそっ、俺もそっちに行きたい。

 もうローロイズの登録はしてあるから、一旦フレンドリストからあの場所に転移して、それでまたローロイズに戻ってくればいいのでは、とも思うのだが……護衛の件があるからなあ……。


『じゃ、美味しい魚もっと持ってきてね。こっちでニシトモと生け簀に生かしておく以外の保存方法を模索しておくから』


 そんな感じでメッセージは途絶える。

 ……冷蔵庫かな?


 今ある魔法には四大属性と呼ばれる基本属性に追加して無属性の五つ。

 それに二極と呼ばれる光と闇。

 あとは、上位プレイヤー陣のいずれかに、亜種派生と呼ばれる属性スキルを身につけたプレイヤーがいるそうだ。


 亜種派生を持ったプレイヤーに関しては全くもって知識はゼロ。

 なんだろうな、いったいなにがあるんだろうな。

 氷属性とかあるんだろうか。

 だったら、冷蔵庫とかすぐにできそうなもんだが、生産組でそんな属性スキルを持ったやついたっけな。


 まあいい。

 レイラとニシトモがなんとかするといったら、基本的になんとかなる。

 楽しみにしておこう。


「あっ、お帰りなさいです師匠」


「うん、ただいま」


「ちょっと遅かったですね?」


「昆布が強くてな」


「昆布が強い!? どういうことですか!?」


 海に潜ればわかるぞ、コーサー。

 俺がいない間、暇を持て余した残りのメンバーは船酔いから立ち直ったグレイスも含めて適当に談笑しつつ釣りの続きをやっていたらしい。


「さてと、たこ焼きの出汁になりそうなもの持ってきたから、コーサー頼む」


「はい」


「釣りが続けたいなら、その間俺がやるけど」


「師匠は休んでいてください!」


 そ、そうか?

 だったらたこ焼きができるまで釣りでもさせてもらうけど。

 船のヘリに座って、水平線を見ながら領海(GSOの場合はモニュメント海域)ギリギリに釣り針を落とす。


「コーサーさん、手伝いましょう」


「無いとは思うが毒を考慮して私も手伝う。しかし、さっきから気になっていたのだがこれはいったいなんだ……?」


「たこ焼き機ですね。お手軽で美味しい食べ物が焼ける料理器具ですよ」


「ほう……タコとは?」


「それです」


「!?」


 フラシカとグレイスが手伝いを申し出る。

 そんな折、中に入れる具材を見たグレイスは青ざめてしまった。

 軟体生物って確かに躊躇するよな。


 ウニとか、ナマコとか、イカとかタコとか。

 最初に食べようと思った人が不思議だってよく言うし。


 さて、そんな様子を見つつ俺は釣り糸を垂らす。

 すると、隣にエミリオがやってきた。


「ガイド様」


「ん?」


「み、見かけによらずすごい体つきですね?」


「ああ、そう?」


 そういえば、装備全部とっぱらって今海パン一枚だったな。

 俺の体をチラチラ見ながら、やや顔を赤くする王女様。

 年頃ゆえに、やはり異性の体が気になってしまうのだろうか。


「これでもだいぶ衰えてるんだけどな」


「ええ、それで?」


 現実との対比の話である。

 少し前までは、魔法職でもスキルを使って現実と同じくらいの体を得られていたのだが……魔闘家の称号スキルが消えてしまった今、再び前のもやしに逆戻りだ。


 多少はレベルアップ時のステータスを伸ばすためにトレーニングを続けているものの、魔法職である体はどれだけ鍛えようとも筋肉肥大が起こりづらい。


 近接職なんか、最初からむきむきに設定できるし。

 スキルを使ったり戦闘を続けていれば、さらなるビルドアップが可能となる。


「すごい、腹筋です」


「質だけはしっかり鍛えてるからな」


 ボディビルダーの筋肉はよく見せかけだと言うが、その通りである。

 まあ見たまんまのポテンシャルはあるのだが、細かい部分での応用が利かなくなる。

 それを解消するために、トレーニングに対しては逐一行動を伴った形にすることを念頭に置いている。

 いわゆる実戦形式だ。


 ガチガチに肥大した筋肉がなくとも、引越し屋はものを持ち上げるし。

 ミニマム級のボクサーだって、筋力トレーニングに重点を置かなくても相手やミットを殴り続けていればパンチ力はかなり上がる。

 科学的に分析し、より理想の筋力を得るためにフィジカルトレーニングを取り入れるのはアリだ。

 だが、まずは持つ、掴む、殴る、投げる。

 その正しいやり方を学んだ上じゃないと、ただパワーを求めてもそれを発揮することはできない。


 やはり実践がいいのだよ。

 そこに関しては実践による経験と、自己の積んだ経験をよく反復する。

 柔道で言えば打ち込みよりも乱取り派ってことかな。


「すごい……」


「あの……」


 いつまで俺の腹筋を触ってるんだろうか。


「はっ!? す、すいません!」


「いや、いいけども」


 特に筋肉信仰はしてないのだが、こんなお粗末な腹筋でよければ堪能しても別に構いはしない。

 だが、なんかこうしてベタベタしてるとお目付役の人がうるさそうだから……、


「こらっ! 何をしている!」


 フラグ回収。

 グレイスが目ざとく俺とエミリオの絡みを見つけて小言を言いに来る。


「いやその」


「だいたいそのような薄い格好でエミリオ様の近くにいることが汚らわし……む? 細身だが、意外といい筋肉をしているな。どれ……ふむふむ、なかなかだ。やはり筋肉とは大きければいいと言うものではないな。この筋肉は実践でのみ得ることのできる部分を多く持っている」


「……」


 筋肉信仰しているやつがいた。

 グレイスも俺の体をペタペタと触りながら、やや鼻息を荒くしてそんなことを宣う。


「魔法職の癖に、なかなかやるではないか。見直したぞ」


 よくわからないところで見直されてしまった。

 まあ、結果オーライということにしておくけど。


「魔法職? ガイド様って、武術家ではなく魔法職なんですか?」


 グレイスの言葉を聞いて、驚くエミリオ。


「ああ、そうだよ」


「私の知っています魔法職の方々には、こんなすごい筋肉を持った人はいませんね……たいていの人は少しぽっちゃりしていたり、もしくは病的にガリガリです」


「そうなんだ?」


「ええ、魔力の使用は精神に負担がかかりますから。気力的にどっと疲れてしまう故に、知っている方々は基本的に高カロリーなものを摂取して有事に備えるのが習わしらしいです」


「へえ」


 知り合いってことは宮廷魔術師ってことか。

 王都の宮廷魔術師NPCたちは、ほとんどがデブかガリガリってのが判明してしまった。

 MPが枯渇すればするほど、疲労感が上乗せされる仕様だから、さもありなんだな。


 身体強化一強時代っていうのは、MP管理が容易だったり。

 そう言った他の疲労度っていうのをあまり考えなくていいお手軽仕様だからできたのかもしれない。


 ステータスが導入され、さらに身体強化一強時代が加速するが……。

 そろそろ調整どっかでいれとけよ運営、とも思う。

 でもこのゲームはナーフよりも基本的にスキルによる一発逆転的な感じの調整いれて来ることが多いから。

 期待はしないでおこうかな。


「ちなみにこんなこともできるぞ」


 船のヘリに捕まってそのまま片手倒立。


「わあ!」


「ここから、こうだ」


 そしてグッグッグッと片手倒立腕立て伏せしつつ、指を減らしていく。


「すごいです! ガイド様!」


「くっ、私も負けて要られない!」


 張り合ってきたグレイスが、ガチャガチャと鎧を脱いでアイテムボックスにしまいインナー姿になる。

 鎧に隠れていたが、意外とあるんだなこいつ。

 アンジェリック並み。


「ほっ」


 そして両手で船のヘリを掴んで倒立するのだが……、


「あ、二人だと船のバランス一気に悪くなるぞ」


「わぷっ!?」


 揺れる船。

 グレイスはバランスを崩してザブンとそのまま海に落ちてしまった。

 俺はヘリを両手の握力で頑張って掴んでバランスを保つ。

 掴みのレベルが上がった。


「すごいガイド様! ほとんど海に体が投げ出されてるような感じですのに!」


「そう?」


 武術家でもなんでもない器械体操選手だって、こんなこと容易にできると思うのだがね。

 まあエミリオが陰鬱な雰囲気をやめてきゃっきゃと喜んでいるみたいなのでよしとしよう。


「……ほとんど曲芸じゃないですか師匠……」











お待たせしてすいません!

しばらくリアルが忙しく、おやすみしておりました。

これからまた更新重ねていきます。



そしていつの間にか50000PT超えてました。

これも、平素皆様のおかげでございます。

皆様のおかげで、更新を続けることができます。

ありがとうございます。


今後とも応援のほどを、何卒よろしくお願いいたします!

(書籍版もよろしくお願いします。売れようが売れまいが更新続けてますけど、売れた方が嬉しいので……まあ、ライフワークの一部になってますので更新はずっとするんですけどね。感想とかご意見いただけてすごく嬉しいし)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ