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「よこせ!」
「嫌だ!」
取られそうになったので即使用する。
[スキル強化の書を使用します]
[対象となるスキルを選択してください]
◇スキルツリー
【エナジーボール】
・威力Lv1/5
・消費Lv1/5
・熟練Lv1/5
・詠唱Lv1/5
[エナジーボールの強化パラメーターを選択してください]
[威力Lv1からLv2へ強化しますか? yes/no]
咄嗟に選んだスキルはこいつだ。
いっけえええええ!
[スキル強化の書は、不思議な光を放ちながら強化に成功しました]
よっしゃああああああ!!!
きたぜえええええええ!!!
◇スキルツリー
【エナジーボール】
・威力Lv2/5
・消費Lv1/5
・熟練Lv1/5
・詠唱Lv1/5
【エナジーボール】の威力が2になった。
相変わらず使えない魔法だが、牽制程度に詠唱レベルを上げといても良い。
そんな考え方とは異なるように、威力を上昇させる意義。
それは【スペルリジェクト】というスキルが欲しいからだ。
レベルアップした分のスキルポイントもこの際振っておく。
◇スキルツリー
【フィジカルベール】
・軽減Lv5/5
・熟練Lv5/5
・消費Lv3/5
・詠唱Lv5/5
次のレベルでフィジカルベールがマックスだ。
長かった。
スキルに関しても半端無いくらい蛇足してる気がする。
いや、色々振り過ぎてるのか?
攻撃スキルに振ってないだけかもしれんな。
集中して振れるスキルがあればかなり使い物になるのか。
いやでも自分好みのスキルを作れるとか謳いながら、マックスボーナスとかいう結果的に全部振らなあかんやんシステムがあるから、意味無い。
グローイングスキルオンラインのオワコンシステムである。
昔、というかテスト版の時は一つのパロメーターを永遠に弄れたとか何とか。
スラッシュ一発でとんでもないことになってたとかなってないとか。
まあスキルレベルがマックス派生解放の上位スキルって基本的パラメーター弄らなくても前のスキルより強かったりする。
解放だけ済ませてサブを取得しても良いな。
取得制限なんて今の所無いし。
めちゃくちゃ取りまくってる奴とか要るんじゃないかな。
「ちくしょうめ!」
トモガラの悔しがる声が森に響いた。
ざまぁ!!!!!
そしてローヴォのレベルも上がっていてよ。
◇テイムモンスター
テイムネーム:ローヴォ
【グレイウルフ】灰色狼:Lv8
人なつこい犬種の狼。
魔物にしては珍しく、人と同じ物を食べ、同じ様な生活を営む。
群れというより社会に溶け込む能力を持っている。狩りが得意。
[噛みつき][引っ掻き][追跡]
[誘導][夜目][嗅覚][索敵]
[持久力][強襲][潜伏]
テイムモンスター装備
【合わせ翅と翡翠の首輪】
※躾けるには【調教】スキルが必要。
順調ですね。
トモガラが自分の宝箱の中身を見ながら呟いた。
「まあ俺も魔結晶なんて一度もでなかったんだけどな」
今までで、一番良かったのはクラスチェンジゴブリンの装備が入っていたり、ゴブリンの溜め込んだ薬草が変質したであろう魔薬草というハイカラなもんだったらしい。
ちらほら一段階上のアイテムが出て来ている所から、そろそろ次の段階へと進めそうな気がして来た。
宝箱の中身も報酬もクリアした時のランクによって変動する可能性があるな。
「ちなみに、スキル強化の書、釣りしてたら一個釣れたぞ」
「竿を寄越せ」
「え?」
「釣り竿、寄越せ」
お、おう……。
トモガラの手が、俺の肩をつかんで離さなかった。
そして、何気に【ハイブースト】と【マッシブ】をかけてやがる。
半ば脅されるような形で、俺は最新式の釣り竿をトモガラに献上した。
それから東へ。
東南東の森で素材集め。
トモガラが居る場合は、基本的に繭を探して木を揺らし続ける。
何度かチェインバイパーまで振ってくる始末だったが、レイピアで木に縫い付けといた。
五時間くらい森を巡回し、夢中で狩り続けるといつのまにかもう一度レベルが上がっていた。
中々に早いレベルアップだ。
シークレットエリアでのクリアが中々良さげな経験値になったのだろうか。
トモガラは23。
そして俺は、
プレイヤーネーム:ローレント
職業:無属性魔法使いLv22
信用度:80
残存スキルポイント:2
生産スキルポイント:1
ようやくレベル22といった所。
こいつとのパーティプレイは意思疎通もし易いし、無駄口叩かなくていいから楽だ。
そう言う訳で【フィジカルベール】がマックスになりました。
◇スキルツリー
【フィジカルベール】
・軽減Lv5/5
・熟練Lv5/5
・消費Lv5/5
・詠唱Lv5/5
スキルレベルマックスボーナスが付いた。
【フィジカルベール】LvMAX
・軽減値60%、熟練度100%まで上昇。
・装備制限解除。
・派生スキル【魔素流々】への効果継承。
……魔素流々。
なんだそれは。
スキルを確認してみた。
取得できるスキルが大きく連なっている。
とにかく沢山取れば良い、取ってしまえという意見もある。
スキルツリーがゴチャゴチャするのが嫌いなんだよな。
後は、一応攻撃スキル制限はついてないものの、適正職じゃなければスキルの効果は下がる。
というか適正化しない状況でスキルを取るとマイナスになる可能性もある。
育てればプラスになるが、一時的なマイナス補正はデカ過ぎる。
魔素流々の項目が増えていた。
そして光ってない。
ということは、取得条件を満たしていないのだろうか。
うーん、カテゴリーって一応取得できるスキルが載る筈なのに。
なんで取得できない魔素流々が載っているのか。
謎は謎のまま、考えることを辞めた。
スティーブン辺りに聞いてみれば良いだろう。
トモガラは即行夜釣りに行った。
俺もそれを見送ると、南東の藪へ。
狙いはもちろん、ギンヤンマ。
意気込んでいたら先客が居ました。
「あら、ローレント」
「こんばんはです!」
「……久しぶり」
「またここで合うなんて、すごい偶然ですね」
沼を周回していたのはエアリル、十六夜、アルジャーノ、ブラウ。
この間の三人に、十六夜を足したパーティだった。
「珍しい」
「ああ、十六夜ちゃん? いつも一人だから誘ったのよ」
アルジャーノがボソッと言う。
「……テイマーは、ぼっちがおおい」
「す、すいません」
例によって十六夜が謝る。
いや、俺はトモガラとパーティ組んで狩りしてたから、ボッチじゃないから。
ローヴォが居るから。
「がうがう」
「……ごめんなさい」
ローヴォの自分も居るという抗議の声に、アルジャーノは呆気なく陥落する。
首元の一番ふさふさした部分をもふもふ撫で回しながら、謝っていた。
そして俺を向き直ると、
「……レベル、高すぎ」
「本当ね、私達も廃人だと思ってるけど、更に上を行くってどうなのよ」
「二十超え!?」
エアリルとブラウも驚きの声を上げている様だった。
まあ、虫は経験値が良いからな。
経験値が良いというよりわらわら湧いて出てくると言った方が良い。
「……興味深い」
海王星みたいな色と丸さを持った瞳が俺を真っ直ぐ見据える。
どうやら興味を持たれたらしい。
「珍しいわね、アルがこんなに喋るなんて」
「そうなんですか?」
十六夜も首を捻る。
「僕達のパーティでもアルジャーノはスキルと詠唱くらいしか喋らないことで有名なのさ」
パーティ内のみで有名とはいかに。
彼等は友達なので気軽に教えておくか。
「……そのレガース」
「ああ、あの神経毒もこの森で取れるのね」
アルジャーノとエリアルが頷いている。
俺達は今東南東の森にて、夜の狩り続行中であります。
ちなみに俺の連続ログイン時間は十時間を突破しそうな勢いである。
そろそろ週末か?
だとするならこのまま今日は夜が続く。
ギンヤンマが狩り放題だというのに、なんで俺はこんな所へ。
というか、女性陣は虫が平気なのだろうか。
興味深い所である。




