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 巨大なタコの魔物を倒した後。

 船の上には丸い窪みがたくさんつけられたホットプレートが設置された。

 歪などデカイ鉄板を見て、呆気にとられた表情をするフラシカ。


「こ、これは?」


「たこ焼き機だ」


 そういうとコーサーが苦笑いを浮かべながら言う。


「師匠、それだけ言ってもわからないと思うんですが……」


「ふむ?」


 たこ焼き機はたこ焼き機だろうに。

 ああ、そうか。

 コーサーは生産組でたまに行われるバーベキューとかこういったタコパに参加したことがあったので知っているのであって、普通のNPCは知らないのか。


 ちなみに燃料は魔石。

 そしてそれを火属性の魔石によって鉄板に熱を加えて焼きあげるスタイルである。


 これは業務用みたいなどデカイタイプだから、ゴツゴツとした見た目であるが、ミツバシ・ガストン・ツクヨイが合作して、現実にある市販のものと対して見た目も変わらない小型化した物も作られ、プレイヤーやNPC向けに売られてる始末。


 ご丁寧に、魔石は合成されカセットガスみたいな形にリアレンジされていたりする。

 そこまでやるか、って感じなのだが、それを伝えると三人に「お前(兄弟子)に言われたくない(なのです)」と言われた。


 あっ、タコパタコパと言っているが、タコがなかったので基本的には女性陣が甘味を入れて手軽に楽しんでたよ。

 俺はどうしてもたこ焼きのイメージが強かったので食べなかったけどね。

 どうせならたい焼き機とか、大判焼き機とか、そう言うのの方が良かったんだが、まだ小豆がない。

 ならタコもないのにたこ焼き機かとも思うのだが、これは俺のよく知らないところで女性陣の権力が動いた結果のことだったのだ。


「よし、俺が焼──」


「──調理は私が担当しますね師匠」


 食い気味のコーサー。

 いったいなんだというんだ?


「焼けるの?」


「まあ、昔姐さんと生産組の女性陣がこれで丸いものを作っていたのを見ていましたっていうか……教えられて作らされましたからね……」


「あ、そうなんだ」


 俺がコーサーをアンジェリックに預けている間に、体の良い召使い役をさせられていた訳だな。

 それで、せっせと働いているうちにこういった細々とした従属系の仕事を覚えてしまったという。

 なんという、ボスなのに、ボスじゃない仕事を覚えているってことか。

 でもまあ、現場を知るのが何よりも大切な事だと俺は思うぞ、コーサー。


「でもやっぱたこ焼きは自分で作っ──」


「──なら師匠のスペースは真ん中の9個だけです」


「……中心のか?」


「はい、そうです」


 どーやってひっくり返せってんだよ。

 でかい鉄板なのはたくさん作れてすごく良いのだが、やばい欠陥を発見してしまった。


「まあいいや、今回はコーサーに作らせるのを任せよう」


 俺とローヴォは食うの専門だ。


「ぐわふぅ〜」


「……」


 なんでローヴォは安心しきったようなため息をついているんだ。

 この駄犬め。


「えーと、チーズとかチョコレートとか果物でやらない場合は……っと」


 引き下がった俺を尻目にコーサーはテキパキと準備を整えて行く。

 俺があらかじめ出して箱に入れておいた材料を混ぜ合わせ生地を作り終えた。


「あー甘くないたこ焼きというのは、削りがつおとか、出汁になるものが必要でしたね……それは今はないみたいですね師匠?」


「あ、うん」


 そうか、たこ焼き一つにしてもなんか色々と足りないものがあるのか。

 出汁だ、出汁。

 味噌汁を作ることになって、この出汁がネックとなるな。

 特に魚系(と言うより海産物系)の出汁が必要不可欠。


 しまったな。

 捌いたタコを生産組連中に送ったは良いが……これでは物足りなさが半端ないことになる。


「無くてもいけますかね?」


「待ってろコーサー」


 カツオとか煮干しはない。

 イワシ系の魚は頑張れば釣れるかもしれないが干す時間はねえ。

 そこで昆布を考えたのだが、基本的に昆布もな?

 生昆布だと出汁が出ないと聞く。


 だったらどうするか。

 今はちょうど引き潮の時刻のようだ。

 ちょっとローロイズの岸壁を探して引き潮で天下にさらされて勝手に干された昆布を採ってくるほかない。

 あるのかはわからないが、ないと始まらないのだ。


「え!? ロ、ローレントさん!?」


「ガイド様!?」


 流水の道衣を脱いでインナー姿になると、目の前に立っていたフラシカとエミリオが驚いた顔をする。

 エミリオに至っては顔が真っ赤なのだが、全裸じゃないから別に良いだろうに。


「師匠……流石に年頃のお嬢さんの前でそれはちょっと……」


「仕方ないだろ。今から出汁になりそうなもの採ってくるんだから」


「へ?」


「ちょっと待ってろ。すぐに戻る」


 そうして俺はダイブした。


 そういえば、海パンがアイテムボックスにあったな。

 インナーじゃ無くてこっちに切り替えればよかったか。

 海中でぱっぱと装備を切り替え、泳いで岸壁を目指す。


「空蹴」


 水かきみたいに、ガボンガボンと加速しようと思ったら。

 なんと、インフォメーションメッセージが届いていた。


[海中での特殊スキル【空蹴】使用によって、新たなスキルが解放されます]

[解放スキルは【鰭脚】になります。カテゴリーはサブスキルです]


 おお!

 漁師スキルが、ついに本領を発揮したとでも言うのか?

 若干泳ぐ速さが増した気がする。

 サブスキルと書いているから、面倒なパラメーターは存在しないと見た。


「楽チンだ」


 海パンの水中補正もあるが、絡みつく海水をものともしない機動性。

 そのまま適当に海底にいる貝類を採取しつつ、船のある方へアスポートさせて行く。


 泳ぎつつ、海の中を見て回っているが、昆布はしっかりと存在していることを確認できた。

 これもいくつか確保して、ミツバシあたりにメッセージ入れて倉庫に転移させておこう。


 管轄的にはレイラなのかもしれないが、その辺はミツバシがうまく渡りをつけるだろう。

 薬師とか錬金術のスキルで一瞬で乾燥昆布にできないだろうか。

 できたら一番楽なんだが、それもメッセージで伝えておこうかな。


 さて、あとは岸壁に付着した昆布とかがあればいいのだが……。

 ……む?


 岸壁の藪にて、不審な船を発見した。

 船は不審じゃないけれど、なんとも雰囲気が不審な奴らが船に乗り込もうとしている。

 こっそり息継ぎをして、再び海中から船の下へと潜り込んで確認しよう。


「……ったく、海の上とか面倒だぜ?」


「だよなあ。双眼鏡で確認したら愉快に釣りしてるみたいだわ」


「はっ、王族も自分が狙われてるってのに、呆けた奴らだぜ」


「まあ、逆にこっちが狙いにくくするって狙いもあるのかもな?」


「面倒くせー面倒くせー」


「ベンゼルさん達も、岸に追い立てる役目を俺らに押し付けてさあ」


「やってらんないよな?」


「まあでも、船転覆させてこっちで処理しちまえば……特別報酬とかでるんじゃねーの?」


「そうだな。追い立てる役目だが、別に俺たちがやっちゃいけないって話じゃないんだし」


「不慮の事故ってことにして、仕掛けてみるか?」


「ベンゼルさん達は、追い立てるだけでいいって言ってたけど、手柄独り占めしたいだけだろうに?」


「ああ、こっちでうまい具合にやってやろうぜ?」


「だな」


 ほう、まごうことなき不審な奴らだった。

 昆布を探しに来たら、暗殺者を見つけてしまったとはこれいかに。







海だあ!

更新遅れてすいません!





海の幸編になるか、暗殺者編になるか。

さーてどっちだ。

真実はいつもひとつ。






言い忘れてました。

2巻の電子書籍版でてます。

感想でもちょくちょく内容について言われてますが、

WEBと書籍は全く別物として思ってくれてかまいまセヌス。

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