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更新遅れてすいません!
「餌はこれだ」
ウニョウニョウニョウニョウニョ……。
取り出したのは、バケツいっぱいのミミズ。
見てください、この量。
そしてこのウネウネ感。
言うなれば生きてるひき肉とでも例えようか。
さて、あんまり臓物感とか、グロ描写にこだわると、やっかみが増えかねない。
エミリオもこれにはドン引きかなと思って、即座に市販の練り餌を出そうとしたのだが……。
「これを……この釣り針に刺せばいいのでしょうか?」
「あっ、うん」
予想に反して、肝が座っているようだ。
むしろフラシカが、ドン引きしている。
だが、目上の人がミミズを気持ち悪がらずに手で掴んで針につけている状況。
退くに退けないといった形で、恐る恐るミミズを摘んでいた。
「私は師匠が出し損ねたそっちの練り餌の方を使わせて……」
「いやコーサー専用のがあるから良い」
「はい?」
なんとも内面が強かになったコーサーは、さりげなく俺を立てる言動に交えてミミズ回避をしようと考えたらしい。
だが、残念ながらコーサーはコーサーでまた別の餌を準備しているのである。
「コーサーは、大物を手釣りしてもらう」
「は、はあ……」
「ってことで、これはただの生肉なのだが……せいっ」
コーサー用の針はかなりデカい。
これまたガストンに頼んで特注で作ってもらった鋼性で攻撃力も兼ね備えた釣り針なのだが、このドデカな代物に鶏丸々一匹分の肉をぶっ刺し糸で縛って……そのままモニュメント域の外へとぶん投げた。
「ちょ!?」
「頑張って魔物釣れよ」
「いや、し、師匠!? 今日観光ですよ!? 観光ガイドですよ!? なんで修行になるんですか!!」
「ほら、娯楽的な感じで……?」
目の前で大きな魚が釣れたら、見ている人も楽しい。
釣りとは釣って楽しむこともあれば、見て楽しむこともできるのだ。
フィッシャーガーが川で暴れていた時は、駆除の度に物見遊山がチラホラいた。
「ダメですよ! 危険が大きいですってば!」
沖にぶん投げた釣り糸を必死で手繰り寄せるコーサー。
うむ、この手繰る動きも拳の回転力を早めるための鍛錬となる。
故の手巻き竿なのである。
「まああれだ。その巻き軸は俺が昔作ったものだから、ヤバイものがきたら巻き軸ごとリリースして良いぞ」
「ぬぐわああああ!! 来ないでヤバイのおおお!!」
さてと、コーサーが頑張っている間に、エミリオとフラシカは釣りの準備ができたようだな。
「二人は、そのまま並んで釣り糸を真下におろしてみると良い。重しが海底についた感触がしたら、糸が緩む。そしたら糸がピンと張るまでリールを巻いて、そこから三回ほど巻けば海底すれすれにいる魚が狙い目だ」
地元の海でこれやったら、だいたいベラが釣れる。
臭い魚だとよく言われることもあるが、釣れる場所によって味が変わる魚だ。
俺はホロリとした白身がすごく美味しいと思っている。
まあ、果たして釣れるのがベラなのか、まだわからないけど。
「こうですか?」
エミリオはやや緊張した表情で釣り糸を深い海の底へと垂らして行く。
そして俺の説明した工程を行い待機。
フラシカも同じような動きをしたところで、早速エミリオの釣竿に当たりが来た。
「わっ……わっ……!!」
ブルブルと震える竿先に、慌てるエミリオ。
なかなか良い当たりだな、現実でのベラも大きさに似合わずいい暴れっぷりをする。
「落ち着け。まずはしっかり食いつかせよう」
「は、はい!」
慌てる姿を見ると、なんとも年相応に思えるな。
エミリオはゴクリと生唾を飲んで慎重に魚を釣り上げる。
フラシカも固唾を飲んでその様子を見つめていた。
「釣れました!」
【ブルーベラード】Lv1
ローロイズ近海で釣れ、よく食べられる魚。
「おおっ……!」
ベラード……、ベラか?
見た目もベラだよなこれ。
大きさは20cm程度。
色が青いので、メスだろう。
ベラは確か、赤と青ってのがあって。
オスが赤、メスが青なのだ。
大きさも、オスの方が大きい。
「わっ、わっ!」
釣り上げられてバタバタと暴れるベラード。
ガシッと掴んで掛かった針を取り、そのまま海水を入れておいた少し大きめの生け簀にドボン。
こうして生かしておけば、まだ新鮮さを保っていられるからな。
「わあ……」
「わ、わ……ロ、ローレントさん、私にも当たりが!」
「……いや、お前はいい大人なんだから自分でなんとかしろよ……」
フラシカも釣り初めてみたいだから、手伝ってやらないこともないけど。
さてと、そんな感じで二人とも初釣果だな。
大きさ的にはフラシカの方がやや大きく(オスのベラードだから当然っちゃ当然)、それに対して少しだけムッとしたエミリオが再び釣り糸を垂らし、釣りバトルっぽいことがスタートする。
「次は私が大物を釣り上げます」
「その意気だな」
「私は素直に喜んでいいのかよくないのかわかりませんが、とりあえずやったーとだけ言っておきましょう」
「フラシカさん、あとで吠え面をかかせて見せますから」
「ならば私はもっと大きな魚を釣り上げましょう」
近衛は王族を直接警護する存在。
完全に主従関係が結ばれているのかと思ったのだが、意外なことにコーサーファミリーに蔓延する家族感とそう変わらないものを感じだ。
日がな日中、側に仕えているわけだから。
さもありなん、と言ったところ。
グレイスもフラシカも見た目は若い。
エミリオから見て、側にいてくれるお姉さんお兄さん感覚なのだろうか。
「よし、どんどん釣っていけ。どんどんだ」
「わかりました! フラシカさんに勝利してみせます!」
「ふふ、負けませんよ!」
ただ塩で焼いてもベラは美味い。
ああ、こんなことなら……料理できるやつを連れて来ればよかった!
仕方ない、久々に俺が自ら調理すっか。
「い、嫌な予感がします!? っていうか師匠! どれだけ遠くまで投げてるんですかあああ! たぐってもたぐっても全然近づいてくる感じしないんですけどおおおお!!」
更新遅れている件に関しまして、もう土下座してます。
とりあえず東西南北全ての包囲に土下座していますので。
ここはひとつ。




