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更新遅れてすいません!


 街並みの屋根の上へと駆け上がり、最短距離で移動する。

 そして殺気を感じた場所付近でとある集団を発見した。


「よし、動くぞ」


「了解。ちなみに護衛は?」


「近衛四人、うち二人は待機」


「ってことは、二人だけってこと?」


 いたいたいたいた、数は6人か。

 格好から察するに白昼堂々の暗殺は、市民に紛れて行われるようだ。

 それぞれが当たり障りのない市民服を着ている。

 見た目はおっさん奥さん旦那さんの井戸端会議みたいなもんだ。


 だが俺の目は誤魔化されん。

 ちなみに、鑑定は気取られる可能性があるから使用は控える。

 暗殺者系だったら偽装もしっかりしてるだろうしな。


「多分そうだ。現地護衛の不確定要素もあるが、屋敷の密偵は観光ガイドを釣れるだけらしい」


「ハッ、相変わらず王族はお気楽なこったな。つーか、市民巻き込みオッケー?」


「いや、極力ターゲット以外の殺しは無しだ。脅してつまみ出せ」


「変な正義感もったやつは?」


「それは殺していい。だが、上手く殺せよ」


「わかってるって。これでもプロだぜ、相手が声を上げる前に殺──」


「──こんな風にか?」


 ──ゴズンッ!!


 井戸端会議のまとめ役に調子のいいことを言っていた男の頭を猿臂打ち。

 男は無言で目と鼻から血を流し、座っていた木箱ごと壊れ落ちた。


 魔装を捨てたことで、以前よりもパワーが落ちていると言えど、上空からの一撃だ。

 頭蓋やや陥没、そして頸椎が一つ潰れる手応えあり。

 なかなかの威力、墜身猿臂打ちとでも名付けよう。


「──!?」


 突然出現し、仲間の一人を殺した俺に暗殺者集団は一気に跳び退き警戒する。

 

「だ、誰!?」


「聞く前に鑑定しろ」


 近場にいたババア姿の首を羅刹で刎ねる。

 俺の挙動に愕然とし、全く身動きが取れない暗殺者達。


「俺は偽装も何もしてないからな」


 残り4人。


「……ローレント……知らない名前ね」


 婦人服を着た女が、ジリッとナイフを構えながら呟く。

 その呟きにリーダーと思しき男が反応した。


「ローレント? ……ノークタウンで行われた闘技大会で優勝した奴か」


「そんなことあったか?」


「あったかしら?」


 なかなかに誰にも知られていないプレイヤーズイベントだった。

 まあ王都から遠く離れた場所じゃ、さもありなん。

 って、こいつら王都の誰かに雇われた暗殺者だよな。

 ハリスあたりも知ってたし、情報弱者か!


 ちなみに情報弱者って言葉は、すごい昔掲示板に不満言ってたらトモガラから言われた。

 情報弱者どころか情報失者とかなんとか。


「なんにせよ、さっきのは不意打ちに決まってる」


 一人の男が剣を抜いてジリジリと俺に近寄る。


「王都の闘技場の頂点ならともかく、たかが田舎の大会優勝者が本職に殺し合いで勝てるわけ……無いだろ! ──シッ!!」


 男はその場で跳躍し、裏路地の換気口やらベランダやらの凹凸を駆使し3次元的な攻めを見せる。

 さすが暗殺者。

 撹乱し、裏を取り、懐に入り込み息の根をとめる技術は持っていると言える。

 だが、相手が悪い。


「今は田舎だが、これから栄えるぞ」


「!?」


 流水の道衣の効果で、背後から心臓を狙った攻撃を往なす。

 首ではなく避けづらい胴体を狙ったのも良い手だ。

 そこに動きでの撹乱だけではなく、フェイントも入れておけばなお良しだったがな。


 受け流し、瞬時に体を転身させ、両手で顔を掴んでスペルインパクト。

 激しい衝撃に男の顔が凹む。

 そのまま捻り折って終了、残り3人。


「くっ、ここは俺がやる。お前らは二人で散開して標的を狙え!」


 リーダーと思しき男がそう叫びながら正面からナイフを構えて突進する。

 どうやら余計な動きはやめて真っ向勝負と来たようだ。

 まあ、言葉から行って他の二人を逃して依頼だけでも達成するつもりのようだが……甘い。


「どこへ行く」


「ガッ!?」


「ギャァッ!!」


 反対方向へ散り散りになろうとした二人。

 男の方は銃銛を用いて拘束。

 女の方には羅刹を投げて心臓部分を貫いた。

 崩れ落ちる二人。


「馬鹿が、散開ではなく囮みたいなものだ! 暗歩!」


 俺の両手が逃げ出す二人の対応に追われた隙をついて、残った男が加速し一瞬だけ姿を消す。


「なるほど」


 スキルか。


 てっきり正面から当たってくると思っていたが、どうやら違うようだ。

 このスキルは、いわば暗殺者系職の歩幅系スキルのようなもの。

 間を詰める動きと姿を見えなくする効果が混ざった感じかな。


「バースト」


 出現と攻撃の瞬間を狙って対応しても良かったのだが、バーストを選択。

 どっちにしろ接近し、死角からの攻撃しかない。

 さらに攻撃に備えて、このスキルを逃げの一手に使用されたら面倒だ。


「ぐああっ!?」


 俺の目論見は正しく。

 暗殺者は背を向けて吹き飛んだ。

 逃げに使ったようだな、小賢しい。


「ぐ、こ、殺せ……!」


「お前以外はすぐに殺すさ」


「ッッ!!」


 心臓貫かれた女はともかくして、魔銃で撃った男はなんとか拘束を逃れようとしていたので、羅刹を手元に転移させてあっさり斬り殺す。

 その様子を見ていた暗殺者は、自分の今後を察したようで歯噛みしていた。


「プロなら、わかるな?」


「くっ! ならば自害──「舌は噛まさん」──あがっ!!」


 貫手を口に突っ込む。


「さて、時間には多少余裕があるな」


 この暗殺者くんから情報を洗いざらい吐き出してもらおうか。

 見ろよトモガラ。

 何が情報失者だ。


 これぞ、情報強者ではないだろうか?

 情報強者の極みじゃないだろうか?






ローレント回でした。






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