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更新停滞してしまってすいませぬ。


 船のチャーターを終えた俺とコーサーは、フラシカから指定されていた待ち合わせ場所にへと向かう。

 待ち合わせ場所は、人ごみを避けた静かなお店。

 なんというか、看板も掲げていないので普通の民家のように思える。


 だが、中へ入るとなんとも小綺麗な内装。

 調度品も良いものが置かれており外面とは大違いだった。


「この度はガイドを引き受けていただきましてありがとうございます」


「どうも」


 奥のソファ席に座っていたフラシカが立ち上がって笑顔で握手を向けてくる。

 俺も初めて会ったように握手を返す。

 そう、これがファーストコンタクトだって手はずになっているのだ。


 ソファに座っていたのは合計3名。

 凛とした佇まいのグレイスの隣に、一人十歳ほどの少女が座っている。


 画家だったり、芸術家肌の人物が見れば。

 その少女は儚げで、可憐で、さぞかし美しく思えたのだろう。

 だが、俺の目には王族なのになんとも覇気が無いように見えた。


 風格。

 それはその人が歩んできた道のり。

 いわば経験が身から滲み出るようなもの。


 では人は生まれた時から皆同じスタートラインかといえば違う。

 風格も血とともに受け継がれて行くと俺は考えている。

 今でこそ、男も女も好きな仕事に好きなように就くが、階級が上になればなるほど。

 その自由は無くなって行く。


 意外なことに、上級市民、エリート。

 そんな言葉でひとくくりにされるものになればなるほど自由は無くなってしまうものだ。


 お金があるから、好きなことできていいじゃない。

 そういう人もいるが、隣の芝は青いってことだな。


「観光ガイドのローレントです。こちらはコーサー」


「エミリオと申します」


 偽名か?

 まあお忍びだし、さもありなん。

 今日はエミリオさんで通せばいいだろう。

 エミリオは少し不思議そうな表情で俺を見つめていた。


「ガイドの……格好には見えませんね……?」


「ああ、もともと流れの武術家で、食うに困って観光ガイドをやってるんです」


「私は弟子ですね。今日は素敵な一日にしますので、よろしくお願いします」


 サングラスを胸ポケットに入れて、爽やかな挨拶を済ませるコーサー。


 そこいらの女性だったらおちてしまってるくらいの輝きだ。

 だがエミリオは特に興味なしといった様子で窓の外を見ており、


「よろしくお願いいたします」


 と、丁寧にそれだけを呟いていた。


 心ここに在らずって感じだな。

 暗殺されかけたのだ、年端もいかない少女なら気が気でも無いだろう。

 だが、俺の目にはどうしてもそれが別の感情のように映る。


「諦めか……?」


 しまったな、思わず呟いてしまった。

 ツクヨイ風に言えばバカバカ俺の口ってやつだ。


「え?」


 そして運が悪いことに聞こえていたのかもしれない。

 エミリオは窓の外から視線を外し俺を見る。

 金とも銀とも言えない輝きを持った瞳が俺を射抜くぞ。

 俺はどうやって言い繕うかひたすら思考しながらじっと王女の目を見つめ返し、少しだけ変な間が空いてしまった。


「とりあえず行きましょう、今日はローロイズの遊覧ですので存分に楽しみませんとね」


 それを察してか、フラシカがそう言って場を一度切り店の外へと出て行く。

 勘定はもう済ませてあったらしい。

 グレイスも王女の手を引いて一緒に店の外へ。


「し、師匠……いきなり何言ってるんですか!?」


「すまん、つい」


「ついじゃないですよ! 王族なのに敬語も使ってないですし!」


「ぐぬぬ」


「ツクヨイさんの真似をして適当に済まそうたって、私には通用しませんからね」


 ぐぬぬ。

 言うじゃないかコーサー。

 とりあえず店の中にいても仕方がないので外に出る。


「……空が青いなあ」


「はぐらかさないでください」


「…………」


 はぐらかしてない、本当に空が青いんだよ。

 ただの感想だ、真実を述べたまでだ。

 こんなに空が青い日は、なんとなく良い事がありそうな予感──、


「──む」


「とりあえず早く行きますよ……って、師匠?」


 コーサーを無視してローヴォに視線を向ける。

 すると、ここから100メートルも離れてない位置に不穏な匂いと気配を感じると意思が返ってくる。

 なんだか一瞬だけ殺気を感じたのだが、これはビンゴでいいな。


 街中の殺気なんて、ちょっと度が過ぎた喧嘩でもよくある。

 だが今回は一瞬だけ発して、それで消えた。


 なんだ?

 暗殺者集団がこれから姫様ヤるぞって円陣でも組んでたのだろうか。

 それで殺気を漏らすだなんて、ど素人もいいところだな。


「ローヴォは、コーサーについててくれ」


「ぐぉん」


「いや、一人で十分だよ。とりあえずすぐに戻る」


 そう言ってローヴォの撫でると、コーサーが小声で話しかけてきた。


「師匠……いったいどうしたんですか?」


「敵を発見したから先に潰してくる。コーサーは先に案内しててくれ」


「ほ、本当ですか?」


「ああ、心配ない。お前のお守りにはローヴォをつけておくからな」


「あっはい」


「まったく……あれだけ殺気をぶつけられて育ったお前が、この微弱な殺気にも気づかんとはな……」


「……逆に感覚マヒしてるんですが?」


「……行ってくる!」


「あっ!」


 コーサーが何やら恨めしげな表情をするもんだから、面倒になって俺はその場を颯爽と後にした。

 言い訳はコーサーが適当にしていてくれるだろう。


 さて……。

 ──今日はいい日だ。






=====


「どうしたと言うのだ?」


 颯爽と行ってしまった師匠を見て、グレイスさんが眉をひねりそう呟いていた。


「ああ、忘れ物をしたとか何かで」


「忘れ物だと? しっかり準備しておかぬか……まったくこれだから……」


 ブツブツとそんなことを呟くグレイスさんは放っておいてフラシカさんにだけ事情をこっそり告げておこう。

 この人は話が通じるからです。


 正直、グレイスさんみたいな女性は少し苦手ですね。

 見下すならば、もっとこうアンジェリック姐さんみたいにやってくれないと調子が狂うと言うか、なんと言うか。

 さて、そんなことはさて置いて。


「フラシカさん」


「どうされました?」


「師匠が早速敵を発見し、そのまま先手を取りに行きました」


「……仰天するほど早いですね……さすがは賢者の弟子」


「はい、あの方ならば問題ないですし、エミリオさんの側にはローヴォさんもついてくれてます。私たちは問題なく街をゆっくり観光しつつ、船着場を目指しましょう」


「わかりました。早速脅威を取り払っていただけまして大変嬉しく思います。これで心置きなく観光を楽しむ事ができますよ」






早速ローレントセンサーに引っかかりました。

これが安心と信頼のローレント保険。





ローレント「俺のローレント保険がダメだって?」


コーサー「ダメとかそんな問題じゃないんです」


ローレント「なんでだ。詳しく」


コーサー「詳しくとか、そんな感じじゃなくて、みんな本能で保険!?ってなってるんですよ」


ローレント「そんなはずは。絶対に命だけは助かるぞ」


コーサー「だけはってなんですか、だけはって」




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