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 結局ギルドに入るか入らないかの話はなあなあで終わった。

 オルフレインはヘソを曲げたような顔を終始していたようだが、GMイオタは華麗にスルー。


 これが街とか都市にダメージとかだったら仕方ないとも思える。

 だけどたかがフィールド破壊でお金取られるのは、なんとも納得がいかないと思えた。


 クソゲーと罵るやつはごまんといるが。

 結局のところ、クソと思うか思わないかは人それぞれだろう。


 だが、お金をこうして請求された瞬間。

 クソゲーだ!ってのが頭をよぎってしまった。

 でもギルドから解放された瞬間、クソゲーって思考は忘れた。


 やっぱGSO最先端かもな。


 聞いた話によると、別に狩りとかレベル上げとかそういったものを主としなくても、単純にログインしてその中でもう一つの人生とか、ゆっくり適当にプレイするとか。

 友達とこういった世界観の中でだべるとか、そんな使われ方も今はしているらしい。


 リアルさ追求するとRPGはセカンドライフになるとはよくいったもんだ。

 俺もなんというかそんな感じになりつつある。

 廃人だ、廃人。


 ゲームってそこまで興味あるかないかで言えば、うーん……って感じだったけど。

 トモガラに勝てた瞬間楽しくなった。


 さてと。

 王都の冒険者ギルドから闘技場へと向かう。

 やはり、寝ても覚めても十傑入りのことを考える。

 そのことが、裏ギルドにしてやられたあの件から全てを忘れさせてくれるのだ。


 戦いは楽しい。

 漁師どこいったのやら、と思うが。

 漁師になりたくて漁師選んだわけじゃないんだよなあ。

 最初の頃からは仕様もすごく変わってるし。

 

 とりあえず罰金の支払いはニシトモに請求書が届くようにして。

 それをメッセージで伝えて、フレンドリストに新たに追加されたエニシにも伝えておく。

 あいつは冒険者ギルドに出入りしてるBランクだったと思うし、いきなり言われちゃびっくりするだろうしな。


「お、ニシトモから返信か」




=====




『請求書の件了解致しました。敵勢力が素直に徴収に応じるとは思えませんけどね』


『その辺は問題ないらしい』


『と、言いますと?』


『応じない場合、取引の際のあらゆる金銭的受け渡しから差っ引くようになるって』


『それはいいですね。もっと破壊して徴収金額奪ってやればよかったのでは?』


『合計額が1億7000万らしいから、均等割しても一人700万以上の罰則になるって』


『ふむふむ、こっちは少人数でしたから……それは面白いですね……』


『このシステムがのしかかるのはプレイヤーだけだから、総数で行けばこっちは二人、敵は……とりあえず十人以上だから、1億以上の損害になると思う』


『ちなみに一緒にいた方の名前はわかりますか?』


『縁っていうプレイヤーだった。フレンドリストにはあるよ』


『彼の分はこちらでフォローしましょう。どうでしょう?』


『それでいいと思う。良い奴だったから』


『あなたに良い奴と評価されるなんて、こっちともなかなか馬が合いそうですね』


『かもな』


『あ、そう言えばノークタウンとテージシティをつなぐ河川にて、新しい生簀が作られましたので、一度きて欲しいとマルタさんがいっていましたよ?』


『わかった』


『後ですね。テンバータウン元第一拠点周りの湿地帯の買占めを行っていますので、できればもう少し余剰資金を準備しておきたいところなのですが、素材の収集等をお願いできますか?』


『最近闘技場にずっといるから、素材集めは間に合わない』


『それは存じております。が、ちょっと価格の高騰が予測されますので……あの拠点は周りは確実にものにしておきたいので、お願いします』


『なるほど。王都でもっと商売するのは?』


『そうですねえ……生産組の皆さんが落ち着いてから動き出そうと思っていたんですが……』


『メッセージ面倒だから今すぐそっちに行く』


『あっはい』




=====




 直接会って話した方がいいので、闘技場にいたコーサーに十分な休息と自主練。

 あわよくば、下位ランクで適当に戦って慣らしておいてと伝えて、あとをハリスに託すと、俺はそのままフレンドリストからニシトモの元へと転移した。


「相変わらず便利ですね」


「ここまで来るのに苦労はしたよ」


 テレポートを取得するまで苦渋を舐めてきたといってもいいのだ。

 大器晩成は後から強くなる。

 だから最初に苦渋を舐めさせられるのは仕方なのないことである。


「そしていつもの格好と違っていたので驚きです」


 ニシトモは俺の道衣を見て、興味深そうな表情を作る。

 相変わらず糸目なんだけどね。


「セレクがせっかく作ったから着てくれって。で、調子を見てくれって」


「ほうほう。彼女が一歩リードということですか」


「なにがだ」


「いえ、こっちの話です」


 あっそう、まあなんでもいいけどな。


「とりあえず話を先に進めますが、収支報告を見ますか?」


「いやいい。そういうのには慣れてないから」


 簡単にどこがどうなってるのか口頭で説明してもらうのが一番だ。

 ニシトモは信頼できるから。


「ならとりあえずマップを見ながら簡単にご説明です」


「うん」


 今いる場所は調度品が並んだニシトモの執務室のような場所。

 確かテージシティにある、コーサーファミリーの拠点の一つに作られていたと思う。

 裏はマフィアだけど、表向きは信頼と実績のテージシティを治める貴族に認められた商会。

 すでにテージシティに住む人々の生活基盤のようなものになっていて、なんかいつだか見せられた一日の売り上げとかそういうものはとんでもない数字を叩き出していた気がする。


「このマップはテンバータウンのものです」


「うん」


 壁に大きく貼られた地図は、ニシトモの思うがままにテージシティの地図からテンバータウンの地図へと切り替わった。


「すごいなこの地図」


「レアアイテムですよ。掘り出し物です」


 どうやら、テージ、ノーク、テンバーをリアルタイムで表示してくれるものらしい。

 これだけの規模を表示してくれるのは、ユニークアイテムなんだとか。


 そしてテンバータウン周りの地図を見て、一つ思ったことがあった。


「あれ、西の農地……こんなに広かったっけ……?」


 前までは農地の先に平原が広がっていたはずなのだが、区画整理された畑があの崖近くまで侵食している。

 なんだこれ……。


「ブリアンさん達が頑張ってくれました」


 ニシトモはテンバータウンの町長エドワルドに多額の投資を行い、農地を大きく広げたそうだ。

 テンバータウン周りの仮設プレイヤー拠点も、街と一体化してテンバータウンは隣町のノークタウンよりも一回り大きな街へといつの間にか成長している。


「自給率は驚異の500%、余剰分で米と日本酒の制作を、十八豪さん主体で行なっている感じですね」


「……すごい情熱だ」


 いや、本当にわけのわからん情熱だけど。

 これだけの規模になってくると尊敬できるな。

 十八豪ってソロ活動が好きなプレイヤーかと思っていたんだけど、こうやってまとめることもできるんだな。

 ただの酒豪かと思っただけに、見直した。


「ただ、やはりそこで出てくるのが水問題なのですよ」


「なるほど」


 水路を作るとなると、川の大規模工事がいる。

 だが、それを行うためには拠点を確保する必要があるのだが、現時点でそこを抑えられている。

 なくとも工事は可能だが、拠点化していればその工程を高速化できるのだ。


「だから湿地帯を買収しているのか」


「そうですね。それもそうなのですが、元第一拠点の孤立化を図り買収しようかと」


「ちなみに現時点での水の運搬って、みんなで手分けしてやってるってこと?」


 前に大鷲を倒した時に、そんな話を聞いていたけども。


「はい、護衛をつけてこっそりやってるってところですね。なんとも元第一拠点のPKさんがたは、水を取りに来たプレイヤーを攻撃しろという命令をお金をもらって受けているらしいですよ」


「へえ……」


 クエスト感覚でのPKがまだ横行してるのか。

 まあ、そういうプレイ方針が好きな奴らが結束してならず者非認可クランみたいな感じに徒党を組んでいるのだろう。


「まあ、多少食料を多くノークタウンに渡して、そこから水を自分たちで運べばいいので問題はないのですが、私個人として癪に触るんですよ」


「俺も癪に触る。一度攻撃を仕掛ける?」


「どっちかというと、貯水関係で仕事をしてもらえると助かります。プールとして使っていた堀と池ってこういう時のための貯水池でしたしね。でもちょっと心許ないので、農地の端っこをみてください」


「うん?」


 緑一色で小麦と米と農作物の表示がされている地図の端に、真四角の土色が目立っていた。

 広さ的に、これは後で何かを植えようとしている開墾予定地なのかなと思っていたのだが、ニシトモは言う。


「とりあえずの貯水池を作ってみました」


「で、でかくない?」


「まあ、いつまであの元拠点を取られたままなのかわからないのでね。とりあえず大きめに作って、必要なくなったら埋めるか、他に使えばいいのですよ」


「そうなんだ……」


「それに一応拠点が取れてテンバータウンがさらに大きくなり、東の川ものみこめれば……上流からここまで大きな水路を人工で作成します」


 すごい計画だった。


「で、西側にもう少し手を伸ばして放牧地帯を作ります。そしてその先のケンタウロス達とも手を組みたいと思っているのですが、その辺はまだまだ先のことですね」


 さらにすごい計画だった。


「取り急ぎ、貯水用の入れ物は準備してますので、湿地帯の水を農地の貯水施設にまで輸送する。それがローレントさんのお仕事です。受けてくれますか?」


「もちろんだとも」


 二つ返事に決まっている。

 そして、すでに準備は整っているということで、俺はニシトモを連れてテンバータウンへと転移した。












策略で必要なものが全て揃ったニシトモに勝てるはずがない。






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