表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/626

-59-


 初めに訪れたのは、ガストンの居る鍛冶屋。

 その折に公園を通ってみたのだが、サイゼとミアンが居る屋台の姿は無かった。

 メッセージに書いてある通り、第一拠点へと移動してしまったのだろうか。


「来たであるか、これを付けるのである」


 渡された物は、魔甲虫の甲殻で作られたレガースだった。

 脛当てとも言う。

 近接格闘もメインとしてやって行くならば、急所の装備を固めるのも大事だろう。

 脚を完全に覆い尽くすタイプのレガースではなく、前面を多い、太ももの部分はリバーフロッグの舌という伸縮素材を使用したバンドタイプ。


「簡単に付ける事が出来るからいいね」


「であろう?」


 ちなみに、そろそろ敬語はやめるのであると言われたので、少々砕けた口調になっている。

 ガストンの方は相変わらずと言った模様。

 角張った椅子に座って脛当てを付けた脚を動かしながら確認して行く。

 軽いね、良いよこれ。

 虫素材の軽さは良い。



【魔甲殻の脛当て】製作者:ガストン

持ち主の魔力によって硬度が変化する。

かなり軽く、硬度も中々。

・防御Lv4/5

・耐久Lv1

・耐久100/100



 そしてこの性質である。

 ガストンが言った。


「基本的にマジックプロテクトを使う魔法使いには必要ないのである」


 そりゃそうだ。

 被ダメージの割合MP肩代わりであるマジックプロテクトは防御をする必要が無い。

 いや、防御の練習をする必要が無い。

 つまるところ、受け技なんで要らない。

 よけでもし当たってもMP肩代わりでなんとかなるわ。って感じのスキルだからだ。


「使いどころが難しいであるが、見事にマッチングしてるであるな」


「……想定内だったのか」


 ふと思った。

 道場へ入門も許されてるし、魔法職での近接スキル取得もオッケーと来た。

 前衛魔法使いって、はなっから用意されてるジョブなのか。

 師匠であるスティーブンも適応するスキルがあると、地味にフラグを建てていたような気がしないでもない。


 フィジカルベールと息吹を鍛えろ。とな。

 魔法職的な瞑想ではなく、道場での瞑想でスキルをゲットできた点も怪しい。

 これは、確定かもしれん。


「この後はどうするであるか?」


 大量のマジックビートルの素材をガストンに引き渡す。

 この後はセレクの所へいくつもりだ。

 蜘蛛の糸とか沢山あるんでね。


「ならば、少し期待すると良い」


「なにを」


「それは行ってからのお楽しみである」


 何やら怪しげなガストン。

 それ以上は何も語らぬと口をつぐんだ。

 一体なんなのか。

 とりあえず、肩をすくめておどけると、鍛冶屋を後にした。


「やっと来たわね」


 セレクが仁王立ちで待っていた。


「お久しぶり」


「さ、早くこっちに」


 腕を引かれて中へと入る。

 既に飲み物と茶請けが準備されていた。

 ……クッキーだ。

 甘味じゃねーか!!!


「食べて良い?」


「いいわよ。はい、あーん」


「自分で食べる」


 甘みは物足りないが、サクサクしていて美味しかった。

 一体これはどこで……。


「ミアンちゃんが作るの得意なんだってさ」


「へえ」


「女性陣プレイヤーが定期購入してるくらいの出来映えよ」


 と、言いながらセレクも席についてサクサク口に運んでいた。

 そして無言の時が流れる。


「あの」


「ローレント、これ、プレゼント」


「え?」


 手渡されたのは手甲でした。

 指の部分は自由に動かせるように解放されていて、これも同じようにリバーフロッグの舌素材を使ったバンドで簡単に装着できるように工夫が成されている。


 そして何よりも。


「ピラルークの鱗ですか?」


「そう、ガストンから少し譲ってもらったの。向こうは甲冑を作るみたいだけど、何となく閃いて一枚一枚彼に加工して穴をあけてもらった鱗を縫い付けてみたのよ」


 まるで、手の甲から肘にかけて、魚の鱗が生えたように感じる。

 関節部の稼働に違和感は無い。

 ピラルークの鱗は外面からの打撃を弾く硬さを持つが、内側から良くしなり軽かった。


「これはいい、すごくいい」


「そう!? そう言ってもらえてよかったわ……」


 セレクはホッと息を付いた。

 さて、問題である。

 俺には支払える程のグロウが無い。

 ここは、糸を大解放スペシャルすることにした。


「お返し。スパイダーシルクと蜘蛛の糸」


「え、いいの?」


「そりゃこっちのセリフ」


「あ、ありがと……」


 手渡された糸素材を抱きしめるセレク。

 ふむ、裁縫系の生産職がこんなに喜んでくれるなんて、糸を取って来て良かったと言える。

 セレクからすれば、生産職冥利に尽きる。

 そんな所だろう。


「大事に使う」


「いや、出し惜しみして死なないでね」


「心得てるよ」


 そんな感じで、適当に小話した後。

 セレクの居る呉服屋を後にした。

 ちなみに手甲はこんな感じである。



【鎧魚の小手】製作者:セレク

鎧魚の鱗を一枚一枚丁寧に繋げて作られたもの。

軽い、並の剣では刃がたたない。

・斬撃耐性Lv3

・防御Lv5

・耐久Lv3

・耐久100/100



 今の所、セレクの作る装備は飛び抜けていい物が多い。

 素直に尊敬できる腕だと思う。

 魔力に応じて防御が変化する魔甲虫の脛当ては防御レベル5まで上昇する。

 そんなの関係無いとばかりに、鎧魚の小手はレベル5だった。


 防御、耐久が上がると、装備の密度も上昇する。

 その結果、重さに繁栄されるのだが……。

 取り回しが行いやすいこの小手はかなりの業物だと言えよう。


 そして、数々の生産職から業の深い装備を頂いて。

 その恩恵に戦慄した。


 俺は?

 何を?

 返せる?


 ひたすら愚直にエリアを開拓し、彼等の生産域を広げて行く。

 新素材を見つけてくる。

 こんな所だろうか。

 正直言って、船が無い漁師なんか、生産性の欠片すらない。

 乗ってなんぼの世界やん。


 うわぁ、頑張ろう。

 船の見通しが立つまでは、地道に資金稼ぎとレベル上げだろう。



 それからトモガラと落ち合うと、そのまま南の森へ。

 虫狩りは?

 後回しだ、今回、トモガラを二人でホブゴブリン討伐へと乗り出すのだ。

 トモガラの潤沢な資金は、毎日の如く木を苅り卸し、毎日の如くシークレットエリアに入り賞金を確保するという鬼のような肯定によって生まれている。


 サップリングマンの素材は些か魔力を含んだ木としては小さいらしいが、夜のナイトトレントは狙い目なんだとか。

 樵夫の世界にも色々あるのね。

 ってな訳でローヴォに頼んで出来るだけ最短距離で、向かうのだった。



[シークレットエリア”滝壺裏の集落”です。制限時間は1時間になります]

[入場しますか? yes/no]



 イエスを選択して、パーティ申請を組んでいた俺とトモガラはシークレットエリアに飛ばされる。

 レベルが軒並み上がっているせいだろうか、出現するゴブリンは軒並み高レベル帯だった。



【ゴブリンファイター】Lv3

戦いに長けたゴブリン。

斧やこん棒を使う。



 普通のゴブリンがいない。

 一様に一段階クラスチェンジしたゴブリンであるという。

 だが、こちらも負けていないがな。

 ゴブリンファイターのこん棒や斧を【フィジカルベール】と【ブースト】で強化した身体で捌いて行く。


「お、いいなその装備」


 手甲にてゴブリンハンターの矢を弾いたり、フェンサーの剣を受け流したりしていると、トモガラが興味を持ったようだ。


「素材は大量に卸してるから、頼めば作ってもらえる」


 そう答えながら、魔甲虫の脛当てでゴブリンを蹴り飛ばした。

 新装備のデモンストレーションかよ。


 今回の装備は、六尺棒と大剣。

 大剣は既に背中には無く、適時転位にて引き寄せ、ゴブリンの攻撃から身を守る盾として使っていた。

 まあ死角を任せるような物だ。


 ローヴォは遊撃に当たる。

 子犬の時よりも格段に素早い動きで、ゴブリン達に爪を立て牙を立て致命傷を与えて行く。

 洞窟内では天井を駆け上がり、右翼から左翼へ切り返していた。

 俺とトモガラで二人並んで前進するので、そうやって横っ面のサポートを両面ともやってくれるのは大いに助かった。


 残り時間が二十分。

 俺達の進行はかなり早い。


 洞窟の奥へいくと、一つの宝箱がある。

 回収しますかのインフォメーションメッセージが届き、トモガラが迷わずイエスを選択した。


「とりあえず、第一関門突破」


「なるほど」


 そう言って洞窟を折り返す。

 インフォメーションメッセージで、シークレットエリアクリアの文字が浮かび上がっていた。

 シークレットエリアは奥にある宝箱をゲットするとクリアになり、折り返しでモンスターを倒しながら制限時間内を強制退場まで生き残るか、最初の入り口まで戻らなければならない。


「エリアボスってのは、クリア理由じゃなくて、一定確率で出現するただのボスモンスターだった訳だ。俺も後半何度もクリアしてるが、四〜五回しかエリアボスは出なかった、最初の一回は奇跡だな」


 倒したのか?

 今回もボスを狙うのか?

 問うてみると。


「だからお前と来てるんだろ。まあ、出ればの話だが……」


 残り時間は十分。

 どうやらトモガラは未だにホブゴブリンを倒せていないらしい。

 ソロじゃ絶対に難しいもんな。

 そこへ、インフォメーションメッセージが到来。


[一定討伐数を越えました、エリアボスが出現します]


 トモガラがニヤリと口を歪ませていた。

 洞窟内から既に出ている。

 いつのまにか雑魚ゴブリンは消えてしまって、目の前に現れたのはホブゴブリンと三体の連れ立つゴブリン。



【ホブゴブリン】Lv12

希少種の中から更に暮らすチェンジしたゴブリン。

恵まれた身体と統括する能力を持つ。


【レア・ゴブリンフェンサー】Lv12

系譜の違うゴブリン。

剣技に長けている。


【レア・ゴブリンマジシャン】Lv12

系譜の違うゴブリン。

魔法に長けている。


【レア・ゴブリンヒーラー】Lv12

系譜の違うゴブリン。

回復知識に長けている。



 くそ強そうだった。

 レアって何だよ。

 以前はレベル8のクラスチェンジゴブリンだった筈。

 全てがレアになっている。

 天才肌のゴブリンだということか?


後書き無し。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ