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聞くところによると、エニシの元パーティメンバーたちであるジュンヤきゅんとやらをそそのかしたのが、ヴィリアンと呼ばれる闇の組織に属するプレイヤーらしい。
そして、この騒動を引き起こしたのもそうだ。
完全に裏ギルドとは分離された組織かと思いきや、そうではない。
繋がりがあるというエニシの言葉もしかり。
それが例えば裏ギルドお得意の誤情報だったとしても、ギジドラがいたから繋がりは確定だ。
いや、そもそもの話だ。
ゴブリンどもにローレントローレントと嫌がらせ並みに言わせる輩である。
繋がりがあってもなくても、どっちにしろ攻撃対象にはする。
大方騒動を押し付けるつもりだったのだろうか。
どっちにせよ、ジュンヤきゅんとやらはそれを引っ被る形ではあっただろうな。
悪役プレイに混ぜてもらえるし、貴重なアイテムももらえていたようだが、最終的にはトカゲの尻尾切りに合う運命なのはお察しだろう。
そんな奴らだ。
悪役ギルドとか、そういうチームってこういうところは容赦ない気がする。
下手すれば俺が相対してきたあの達人連中よりも、ことゲームにかけてはその辺シビアだろうな。
リアルではどんなもんかはわからん。
だが一つ言えるのは、こうして別の世界で鬱憤を晴らすほどにチンケなリアルなのだろう。
ま、それも定かではない。
現状を単純に認識するとするならば、敵と味方と……それ以外って感じだ。
そういえばいつだかミヤモト君がいっていた達人連中がこのゲームに来てるって……その話はどうなったんだろうな。
結局はゲームに疎い奴らだろうし、色々と躍起になっているんだろう。
こういう事柄に強いのは、若手だったあのカマホモ野郎兄弟の弟くらいだろうし。
さてとさてと、そんなことを考えながらもアジトっぽいところにたどり着いた。
奴らはこんな森の奥深くに、ホームモニュメントで小さな拠点を作っているようだった。
ゴブリンがいる箇所でもそこそこ奥深いのに、そのさらに奥とは……。
どれだけ熱心なんだろうな、裏の人たち。
ちなみにアップデート後からは、モニュメントポイントは消えてないけどモンスターが侵入して建物を壊したり荒らすことが可能となった。
そのモニュメントの範囲内にポップすることはないけど、壁作って囲っておかないと面倒なことになる。
「わりかし大きい建物ですね!」
石で円柱状に作られた建物は、おそらく魔石を大量につぎ込んで堅牢に作られているはずだ。
もはや城砦とでもいえばいいのだろう。
城壁の上から待ち構えていたようにクロスボウを持った男達が俺とエニシを見下ろしていた。
さっと樹木の陰に身を隠す。
蟻が勝手に動くかなと思いきや、なんと俺の後方で動きを止めていた。
聞き分けが良くて助かるな。
「ずいぶん早いな」
「相手はローレントだからってこと留意しとけ」
「ってことは……ギジドラの対空部隊は全部やられたのか……」
「あ、上層部から結構前にやられたって連絡きてたぜ」
「そういうのは早くこっちに情報流してもらわなんと」
「まあいいや、とりあえず上にいるやつだけで面攻撃しようぜ」
「PvPのローレント撃退イベントとかいったらギルドに入る奴も増えそうだ」
なんだか余裕の表情だな。
人様を勝手にイベント化して収穫するとは、なんつー奴らだ。
これはキツイお灸が必要だな。
「行くぞエニシ」
「はい! って、正面突破ですか!? ちょっとまってください! 僕が道を作ります!」
「いや必要ない……コーサー!」
「はい!」
発砲音が響いて、一番後方の高台で狙っていた奴らが即死する。
まだどこにも発表してない試作の魔銃を味わえばいいさ。
そうやって意識が上に向いた一瞬を使って、身を隠していた樹木から飛び出す。
エニシは土魔法スキルで坂道を作るつもりのようだが、それはやや発動が遅いしマトになる。
城攻めは、真下からハシゴをかけるのがいいのだ。
もしくは、壁を走って登ればいい。
「先に行くぞ」
空蹴を連用し、一気に登って行く。
そして俺の後に続いて蟻達がさも当然のように壁を垂直に登る。
さすが虫だ。
その背中にローヴォもさりげなく乗っかって後に続いていた。
「えっと……その……僕もっ! 蟻さんごめんね!」
そういいながらエニシも蟻の上に。
みんなで蟻に乗って、大軍を率いて、城攻めである。
「う!? うおおおおおあああ!?」
「蟻!? な、なんでギジドラ寝返ったのか!?」
「いや、死んでるはずだ!! な、なんだこれ!! なんだこれ!!!」
慄くPK達。
アジトの外壁を蹴散らすと、中に控えていた野郎どもがわらわらと出てきた。
数にして……百人規模だな。
プレイヤーにしては多すぎると思ったら、NPCもいる。
盗賊NPCだな。
「くそっ!? どうなってんだ!! お前ら対応しろ! ほらさっさと行きやがれ!!」
眼帯つけたいかにもお頭っぽいやつが怒鳴って人員を動かしていた。
「あんまり壁に傷つけんなよ!! ここはミッションが終わったら俺らがアジトとして使っていいって言われてんだからよ!!!」
「で、でもお頭!! 数的には……向こうの方が多いです!!」
「蟻くらい一人で三匹蹴散らせば300百くらいはいけるだろ! それ以外はあのヴィリアンとかいうキモい男の連れてきた奴らにやらせとけ!!」
「は、はい!!」
「ったくよお……女もろくにいねえけど……あのプレイヤーの男にはそういえば懸賞金がかかってたよな? しかも裏ギルドからだ! あのローレントとかいう男は蟻とともに優先して──ねふぇ、っ──ぇ……?」
「俺を優先に狙うんだな? ほら狙えよ」
なんとなく偉そうだったので、勢いつけてひとっ飛び。
そのまま羅刹で首を刎ねとばした。
盗賊のお頭は何が起こったのかわからない様子。
「……は? ……え?」
「お、お頭あああああああああああああああ!!!!」
「お頭がやられた!! お前ら!!! 仇討ちしろ!!!」
「あの男だ、あのよくわからんスカートみたいな格好の男を狙ええええええええ!!」
スカートではなく、袴なのだが……まあいい。
趣がわからん奴らにはこうだ。
石柱を繰り動かして叩き潰して行く。
血しぶきの中、石柱の上に飛び乗って、見せてやる。
俺の右手にもたれているこのお頭に見せつけてやる。
仲間が、蟻達に、ローヴォに、コーサーに。
ルビーに、エニシに、どんどん奢られて行く様子である。
羅刹ノ刀から湧き出る邪気が、蔓延して行く。
それにて狂い、さらに状況は悪化して行く。
「お前達はついてないな、運が悪い」
まあ、そこで俺を敵に回したとは思わない。
ただ単純に面倒なプレイヤーと取引したってことについてだ。
「ぁ……ぅ……」
「よく見ろ」
「ぃ、いやだああ! いやだああああ!!」
「いや、見ろってば」
眼帯に指突っ込んでくりぬいたら、普通に綺麗な目玉をしていた。
なんだこいつ、もしかして眼帯はファッションだったのか?
目の当たりに刀傷もないし、箔付けのための眼帯か?
「うぎゃああああ!!!!!」
「見ないなら俺が自ら目を潰す」
「あ……ふ、ぅぅ……」
「これがお前の目玉だけど、これはこうだ」
噛み締めると口の中でプチュンと弾けた。
味は別に普通。
そもそも蟻の臓物の匂いでよくわからん。
それを目の当たりにしたお頭は気が触れたように笑い出した。
「ぁ……は……? あは、ぎゃは、あぎゃはははは、め、目玉が、お、俺の……俺の目玉がぷちゅんって、くへへひひ、クヒヒヒヒイヒヒヒヒ!!」
「お、お頭アアアアアアアアア!!!」
狂ったか。
周りで蟻と激闘を続ける手下どもはその様子を見て固まっている。
そしてそのまま蟻に飲まれていった。
よし、次。
「ロ、ローレントさんさすがだ、さすがでエグすぎる……こ、これが魔王……掲示板に書きたい、書きたいけど、書いたら怒られるかな……?」
あっさりと
死にくゆ野盗の
親分氏
ローレント「いい句ができた」
コーサー「……いや、それ……あの……」
コーサー(首切って 目玉抉って それ食べる って感じなんですけど……!!!!!)
あとがき小話(読み飛ばしていいです)
FPSは未だ疲れ目によって復帰できず。
今はアクアリウムを作って遊ぶゲームをしています。
癒しが必要ですからね。人間ってば。
GSOは到底癒しとはかけ離れた文章ですが、読んでいただけまして誠にありがとうございます。
えげつない描写も、何もかも、自重しないようにしようと心がけています。
がんかたとか銃剣術とか、色々と感想にアイデアをいただいてますが……さて、果たしてどうなることやら。
でも、軍服を身につけているので、ライフル持ってって状況だと……アレになりそうですね。
明日もまた更新します。
休んでたのに、また更新したら読みにきてくださる方がいて、嬉しいです。




