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「とりあえずコーサー。お前は空中から支援しろ」


「前線で戦った方が鍛錬になるんじゃ……」


「いや、それは闘技場で改めて行う。今は後方射撃を頼む」


「了解です」


 そんな感じでコーサーを空中に残して、ギジドラが落下した場所へ向かう。

 生きているのか、死んでいるのか。

 もっとも、額ぶち抜かれてたみたいだから、死んでいるとは思うのだが……この世界ではレベルが上がれば上がるほど人間離れして行く。


 だからしっかり殺したか確認しないとな。

 首の骨をへし折るか切断。

 はたまた頭を確実に潰したり心臓抉り取ったり。

 それだったら相手の死亡も確認しやすいのに。


 遠距離攻撃はこれだから!

 なんて、そんなことを思いながら下に降りるとしっかり死んでいるようだ。

 蟻が群がってるので蹴散らして、まだ残ってるギジドラアバターの頭を潰しておく。

 光の粒子になって消えていったギジドラ。


「さて、次は俺の番だ」


 この蟻に寄せ玉が効くのだろうか?

 アイテムボックスから取り出してにぎにぎ。

 反応なし。


「チッ」


 とりあえずギジドラが乗っていた一番でかい蟻の元へ寄る。

 頭を潰したが、胸と腹の方は残っている。

 ケツのところに分泌液的なものがあるだろ。

 とりあえず解体前にナイフでぐちゃぐちゃに切り裂いて適当な内臓器官を取り出す。


「…………」


 ここからどうすればいいんだろう。

 まあ、とりあえず俺によってくればそれだけでいい。

 従わなくても俺によってきて大軍となればそれでいいのだ。

 ってことで、ぐちゃぐちゃになった分泌液的なものを適当に全身に塗りたくる。


「師匠何やってんですかーーーーー!!!」


「内臓塗ってるだけだけど」


「はあああーーーーー!?」


「うるさいな……」


 ツクヨイとかが見たら卒倒する光景かもしれないが、今はいないのでオッケー!

 周りからキチキチブンブンと羽蟻の音がする。


「行くぞ蟻ども!」


 そう言って駆け出すと、蟻はしっかりついてきた。

 俺を捕食しようとしているのか、それとも女王蟻と間違えているのか。

 わからないけど、とりあえずついてきているのでオッケー。

 俺は黒一色の羽蟻たちと、一陣の風のようになりて森を蹂躙する。


 敵は裏ギルドだ。

 裏ギルドだーーーー!!!


「グォン!!」


「ローヴォ!」


 森を走っていると、ローヴォが俺の隣に姿を現した。


「……ぐ、ぐぉん……」


 そしてすぐに嫌そうな顔をして少し距離をとった。


「……え? くさい?」


 くさいのか。

 くさいんだな?

 臭いんだろ?

 ああいいよ、俺は臭いよ。

 確かに臭い。

 でも仕方がないだろ。


「けっ」


「きゃうんきゃうん」


 汁を鼻先に少し飛ばしてやったら転んでた。


「ローレントさん! ってうわっ、くさっ!?」


「……」


「し、失礼しました!!」


「いや、いいよ……」


 少し心に響いたけどな。

 まあ、内臓被ってるし、素材化した生物なまものは腐ってくし仕方がない。

 こいつ掲示板の住人とやららしいのだが、書かないでほしい。

 まあ、さすがにそういうところは尊重できる奴だとは思うから、書かないだろう。


「そっちは、どうやら終わったみたいだな」


「はい! ちなみにこの先に、騒動を引き起こした黒幕──闇の組織がいます」


「闇の組織?」


 ものすごく香ばしい名前だな……。

 なんだよ、闇の組織って。

 作ったやつは中二病かと思いきや、現実世界にはそんな感じのものが多々ある。

 さもありなんさもありなん。


「ヴィリアンというプレイヤーに、純也君たちはそそのかされていました。僕も個人的に調べたら、裏ギルドと通じていると思しきことがわかりました。本拠地も確か、メトログリードで……」


「バッチリ嫌な条件が揃ってるな」


 まあ、ゲームの世界だし、マナーとかモラルとか。

 そういうのが低い人がいるのはよくわかる。

 現実世界にもいるしな。

 たっくさん。


 そういうのはシカトしておくのが一番いい。

 だが、一度喧嘩を売られたなら、きっちりやり返す。

 それが普通だろ。

 倍返しも甘い。

 完膚なきまでに滅ぼす。


「ってことで、行け蟻ども」


「ってことで? ってうわあああ、すごい蟻が後ろから!!」


 俺の後ろをぞろぞろとついてくる蟻達に、エニシが仰天していた。

 乗り物っぽいやつから落ちそうになりながらもなんとか土属性の魔法スキルで道を作り態勢を立て直す。


「それいいな」


「そうですか? 乗ってみます?」


「いや、森だと走った方が早い」


「ですよね」


「今度ぜひ乗らせてもらいたい」


「ええ、構いませんよ。でも似たようなものなら、ローレントさんも持ってますよね? 原理は違いますけど」


「?」


「魔導推進器ですよ。船の。僕も一度乗せていただいたことあります」


「ああ、あれか」


「王都の流通路とか、大きな道には、馬車以外にもそういった類の地上を走る乗り物が稀に来てますよ。噂では、この国のどこかにそういった機械の都市とか、もしくは機械の国が隠されていて、まだそこには行けないとか、第三弾アップデートでそれがくるだとか、もしくは王都のイベントを終わらせたらそこに行けるだとか、いろんな推測がされてまして、僕はやっぱり機械帝国とかそういう国があるんじゃないかなって説を推してるんですけどね? あっ、まあまだ推論の域ですけど、そういったプレイヤーを助けてくれるアイテムとか、俗にいうアーティファクトとか、そういった類のものが稀にレアアイテムとしてプレイヤーの手に渡ったりしているっていう状況があるもので、うんぬんかんぬんかくかくしかじか──……」


「あ、うん……そっか……」


 興奮したようにベラベラを一人で喋るエニシ。

 なんだこいつ、と正直思った。

 そういう情報じゃなくて、できれば敵の情報が欲しいのだが……話題を変えようにも喋りの途中に隙がない。

 初めて、こいつできるって思った。


「ローヴォ、状況は? 臭いで何かわかるか?」


 放っておいてローヴォに尋ねる。

 空のコーサーにも上から見た状況を教えてもらうことも考えた。

 だが、空からざっと見ても、一部ひらけた箇所に人影はなかった。

 潜伏の線が正しいってことは、ローヴォの鼻を信じよう。


「ぐ、ぐぉん……」


 首を振るローヴォである。

 どうやら、お前が臭くてわかんねーよって言っているようだった。

 ……そうか。


 だったら気配だよなあ……。

 でも蟻達が邪魔だなあ……と思っていると。


「アフィース、ソナー」


『はい、マスター。マスターが探す人物とよく似た魔力を前方500メートル近辺にて補足』


「ありがと。……ローレントさん! こちらです!」


「む?」


 なんだその丸くてふわっとした奴は。

 フェアリークリスタルのようにも思えるが、どうも言葉を話すようだ。

 そして、敵の位置を教えてくれているようで、すごく便利である。

 なんとも侮りがたい男だな、このエニシというプレイヤー。










立て込んでるのであとがき小話は無しです。

すいません。

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