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 それからゴブリンが集まる場所を目ざとく見つけて全てを破壊し尽くした。

 それこそ、影も形も残らんほどに。


 奴らは弓を用いて上空に攻撃を仕掛けようとしていたのだが、当たることはない。

 それくらい迅速な行動で奴らを消しとばしてやったからだ。


 そうしたら、ね。

 こんな称号が手に入ってしまった。




【破壊者】称号

地形が変更する規模で、モンスターの同時大量キルを行なった者の称号。

STRの大幅補正、破壊系の与部位欠損率上昇、アイテムやオブジェクトへの耐久ダメージ倍増。




 なかなか良い称号をゲッチュウしてしまった。

 文字通りこれは悪称号の一つなのだろうか。

 まあ、なんでもいいのだが、急所クリティカルが入りやすくなったと考えればいいだろう。

 オブジェクトとか装備の破壊よりも、関節技決めたら確実に破壊。


 これが一番効果がでかかったりする。

 最近ほら、VITあげで耐久度化け物みたいになってるやつ多いから。

 俺は近接スキルを全て失ってしまったようなものだからな、少しでも補正してもらえたら嬉しい。


「あわわわ、ついに私まで悪称号を持ってしまいました」


「だからさ、マフィアのボスだろ」


「そうでした」


 コーサーさっきからテンションがおかしいというか、なんというか。

 確かに俺の弟子である、だがそれ以前にマフィアを背負うボスでもある。

 悪称号の一つや二つ、受け入れてほしいね。


「なんなら外道称号の取り方教えてやろうか?」


「それだけは絶対に嫌です。どうせ子供に手をかけるんでしょう!?」


 ……当たりだ。

 コーサーの中での外道は、子供に手をかけるってことなのだろうか。

 まあ子供好きっぽいしな。


「っていうか持ってるんですか? 外道」


「うん」


「…………師事していいのかわからなくなりました」


「まあ、好き好んで子供は手にかけないぞ。しかも取れたのは事故みたいなもんだしな」


 たまたま殺したパンダに子供がいたってだけで。

 俺は外道になりたくで外道になったわけじゃない。

 胸を張ってそう言えるね。

 でも、容赦はしないよ。敵にはね。


「まあ、師匠の人柄はもうわかってますから今更何も言わないです」


「そうか。理解者ができて嬉しいよ」


 素直に嬉しい。

 ゲームやっててよかったって思う一瞬でもある。


「いや肯定してますって意味で、理解はしてません」


「…………」


 それは素直に嬉しくねえ。

 上げて落とすのは、下衆のやることだって習わなかったのかなコーサー。


「とりあえず次行くぞ」


「ゴブリン達はほとんど殲滅したのでは?」


「いや本命がいる」


 眼科を見下ろせば、ゴブリン達がいた場所からさらに先にうごめく虫どもがいる。

 蟻だなあ、あれ。

 ギジドラがいるぞ、ギジドラが。

 やっぱりあいつがこの魔物の扇動に一つ噛んでいたんだな。


「うわっ、なんですか……あのでかい蟻……しかも南の方で見る蟻とは違って……羽が生えてる──ハッ!」


 そこで気づいたようにコーサーが言う。


「どうするんですか! 羽が生えてたら空中の地の利が生かせないですよ!? 飛んできたら、ど、どどどどうするんですか!?」


「もう遅い。下じゃなくて前を見ろ」


「へ?」


 すでに巨大な羽蟻がいっぱい飛んでるんだよな。

 羽蟻集団を率いて、一番でかい羽蟻にギジドラが乗っている。


「ロォーレントォーーーゥ!!! 好き放題やってくれたなぁ〜!!」


 どうせなら蜂にしとけば、テンバー北の森のクエストエリアをコンプリートできたものの。

 律儀に羽を生やした蟻とは、さすが蟻の王である。


「律儀だな」


「なにがだよ?」


「いや、わざわざ指揮して空に来てくれたからだ」


「あん?」


 首をひねるギジドラ。

 対空手段を得て、一気に攻勢に出た、ようにも思えるが。

 迂闊に空には行かないほうがいい。


「ブラスト」


 重複して羽蟻の集団に撃ち込む。

 咄嗟に躱した蟻もいるが、そこそこの数を巻き込めた。


「あぶね! ──うおっ!?」


 ギジドラの乗っていた羽蟻の頭が潰れる。

 ストレージから転移させた石柱をワイズブラストの上に隠していたからだ。


「蟻どもが助けるのが早いか、遅いか。まあ邪魔するんだけどな、コーサー」


「はい」


 マフィアのボスであるコーサーが試作兵器を持っていないわけがない。

 闘技場では一から教えるためにそういうのを制限していたが、空で暇そうにしているから狙撃用の魔銃ライフルを使うことを許可する。


 パンッ──、と弾ける発砲音。

 なんとも、ギジドラの額をぶち抜いていた。


「よし! 意外と当たるもんですね、これ」


「そ、そうか」


 あっけらかんとしてそういうコーサー。

 ルビーがホバリングで空中ぴょんぴょんしている状況なんだが、まさか普通に初手で当てるとは思わなかった。

 狙撃銃ってある程度の技術と当て勘的なものが必要だと思うし、完全にその辺は才能プラス錬磨した努力のはずなのだが、まさかコーサー……そういうことか。


「初めて撃ったんだよな?」


「ええまあ」


「……そうか、ちょっと貸してそれ」


「どうぞ」


 借り受けたライフルで狙いを定めて羽蟻を売ってみる。

 命中。

 まあ、こんなもの造作でもないのだが、それによって散開した羽蟻供を撃ってみよう。

 避けるために動いているとなると、どうだ?


 パンパンパン。

 うん、一発外したよな。

 一応ローヴォの悪運効果が相手に働いてると思うのだが、直接的な一対一の戦闘になってない分、こんな感じで外す時もある。

 普通の人ならエイムアシスト的なものがついていたとしても難しいだろう。


「次コーサー撃ってみ」


「はい」


 発砲音が3回。

 そして三発とも命中だあ!


 ……。


 思わぬ才能を発見できたというか、なんというか。

 それだけでも敵対プレイヤーが騒動起こしてくれてありがとうというべきだろうか。


「全部命中です師匠! こ、これってもしかして師匠越えですか?」


「……ふんっ」


 とりあえずナイフ10本くらい投げて全部命中させた。


「じょ、冗談ですよ……はははっ……」


 やっぱり俺はこっちだな。

 自分の肩の方が信じられるというか。

 そもそも転移でノータイムで視認した場所に落下物を送れる。

 断じてコーサーの才能に嫉妬したとかそんな感じじゃない。

 そんな感じじゃないやい。











とんでもない称号を獲得したローレントさんでした。






あとがき小話

銃で撃ちあうゲームをしてると、なんというかすごい疲れてる時って画面の中で流れて行く風景が追えないというか、目が回るというか……とんでもなく年を感じますね。

プロゲーマーの動体視力とか反射神経とか、そういった類のものが若い時限定だと言われている意味が腑に落ちるようです。


ちなみに昨日はブダイとか、ドンコの煮付けとか、めちゃくちゃ魚食べました。

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