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無事タッグバトルのランク入りを果たした俺たちは、入り口で待っていたハリスと一緒にささやかな食事会をすることになった。
ランク入りおめでとう会です。
ハリスのおごりだ!
「ま、また食事ですか……」
「運動したしな」
「……速攻だったじゃないですか……」
コーサーの文句を聞き流して、目の前にある肉を食べる。
すげえ、うまい。
「ここ美味しいですよねえ! 最近できて貴族街からわざわざ食べに来る人もいるらしいですよ!」
「そうなんだ」
俺としては、どこかで食べたような味だった。
なんにせよすごく上手いからいいんだけどね。
「すごいですよねここ。肉も野菜も美味しいですし、なんて言いますか……カレー? とかすごく美味しいって最近屋台通りでも人気になってるものも置いてありますし……サンドイッチもえらく豊富ですしねえ」
サラダをもしゃもしゃと頬張りながら美味しそうな表情を作るハリス。
サンドイッチねえ、思い浮かぶのはサイゼのサンドイッチだ。
あの屋台と同じように、サイゼミアンと同じようにたくさんのサンドイッチがある。
これは、リスペクト店か?
と、思っていると。
「あれ? ローレントさん来てたんですか?」
奥からサイゼが出てきた。
そんな感じの馴染み感にハリスが首をかしげる。
「知り合いなんですか?」
「そうだな」
「もともとテンバータウンで料理屋やってたんですけど、いろいろあってローレントさんに王都に連れて来てもらいました! で、ようやく自分の店が持てたところなんですよー!」
そんな感じでサイゼがハリスに自己紹介する。
王都に来てからまだ十日程度しか時が経ってないはずなのだが……もうお店を持ってしまうとはおそるべしサイゼである。
「早いな」
「居抜き物件ですからね! 王都の建物高くて、ギリギリだったんですけども!」
「ミアンはいないのか?」
「ミアンちゃんは今テンバー西側の農地のお店に出張中です!」
いつものエプロンを身につけながらハツラツとしたそういうサイゼだった。
一応ここもミアンとともにやっているのだが、ミアンはテンバーの農地で調理師NPCを育てるという重要任務に赴いているらしい。
それでこっちでは店内スタッフは王都のNPCをバイトで雇い入れて、サイゼは料理長として厨房の奥に君臨しているとのこと。
「何気にローレントさんって、人脈すごいというか……あのカシミのオーナーとも実は知り合いだったんですよねー?」
「ああ、あれはただオーナーの母が近所のおばちゃんというかな」
別に大したつながりとか、そんなものではない。
だが、カシミとの繋がりは大事にする。
もうすでにニシトモが今度来店して見たいとのこと。
奴につなげれば、なんというかやばいことになりそうな気がしないでもない。
「それで、今日はどうされたんです?」
「闘技場のタッグバトルでランキング入りしたからな! それの祝いみたいなもんらしい」
「はい! なんと最速ランキング入りですよ! 素晴らしいです!」
柔道の段位試験で言えば、抜群というものだろうか。
まあ、賭けで設けられたから良しとしよう。
「さすがローレントさんですねー! よし、今日は特別サービスしておきますよ!」
「いいのか?」
「いいんです! でもたまには食材集めとかよろしくお願いしますね?」
「わかった」
最近その辺はおろそかになっているからな。
生簀も取り込んで、ストレージに入れて、マルタや親方たちのいるノークタウンに転移させて持っていった。
その時、魚は全て水揚げして、レベルの足しにしながら、一気にニシトモと売りさばいてある。
今ニシトモとミツバシが再び安定供給を行うために色々と対策に走るものの、他にも色々とやっていることがあるらしく、なかなか難航しているとのこと。
まあ順序立ててやっているので、必ず成し遂げはするのだろう。
だが、すぐにはできない、という状況なのだ。
そういうことなので、今度手伝いに行こうと思いました。
ってことで、食べるのを再開しよう。
特別サービスと称して、ガンガンガンと食事が運ばれて来た。
コーサーは横で卒倒。
そしてハリスは勝手にデザートを頼み、俺は俺でローヴォとともにガツガツモシャモシャ。
ガツガツガツガツモシャモシャモシャモシャモシャ。
「ぉぃ ……」
「ガツガツガツガツモシャモシャモシャモシャ」
「……ぉぃ……おい!」
なんか声が聞こえるな、と思って後ろを振り返ると。
知らない人がいた。
「?」
誰だろう。
「お前がローレントか?」
「そうだけど」
「……冒険者ギルド監査官のバニシグだ」
なんだか物々しい立場の人間が来たものだ。
「その監査官とやらが、いったい何の用だ?」
「魔物扇動の罪が貴様にかかっている」
「はあ?」
「王都から西の森の奥地にて、ゴブリン達の大きな動きの兆候を観測した。その前の期間で、ゴブリン討伐を行っていた冒険者ギルド所属のもの達に、話を聞いて回っている」
それに対して、ハリスとコーサーが言い返す。
「でもそれって、罪があるわけではないんですよね?」
「そうです。あなたの言い方だと、師匠が罪を被ったような言い方じゃないですか。訂正してください」
いいぞ、お前ら、やれやれ。
するとバニシグは、
「ぐ、確かにそうだが……ギルドカードに記録される討伐録が物語っている!」
「……あー」
そういえば、そんな便利なシステムっぽいのあったな。
討伐した魔物の記録があるので、物的証拠を持ち込まなくても報酬がもらえたりする。
もっとも、素材が売れるので、基本的にみんな持ち帰るんだけど。
「とにかく話だけでも聞かせてもらう! こい!」
そんなわけで、俺はバニシグに連れられて冒険者ギルドへと向かうことになった。
誤字修正などは後々させていただきます。
その際は、感想返信も同時にさせていただきます。
あとがき小話。
仕事終わり、新宿を歩いていたら、ピットブルとすれ違いました。
おー、ピットブルだ。と思って見たら。
なんと首輪してないという。
飼い主っぽいおばちゃんが「噛みませんよ」「おとなしいですよ」とか言いながら横を寄り添って歩くわけでもなく、勝手に前に進もうとする犬の尻尾を掴んでいました。
二度見して戦慄しました。
あぶねえ……。
ちなみにGSO世界のテイムモンスターは基本的にはむやみに人は襲いません。
(でも飼い主によりけりなので、例外もあります)




