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『さあ! 今回はタッグバトル久しぶりのランク戦だー!』
ランク戦ともなれば、かなりの人が入る。
ついでに実況もついて、大盛り上がりの闘技場。
『それもランク圏外から破竹の勢いで駆け上がってきた二人組、ローレントとコーサーの師弟コンビ! ランク替え戦だからチェックしてない人もいるだろうが、そんな人には彼らの試合中継をダイジェストー!』
ファンタジーな世界観を置き去りにする大画面に、映し出されるのは今までの戦い。
俺が血まみれにした初戦の相手も写っていた。
若干引いた声が上がるが、
『圧倒的新星コンビ! すごい、すごいぞ師弟! なんと戦いながら解説までしてくれて、実況大助かり!』
ちなみに、モニターの下に世界情報機関という名前がついてあった。
WIOだな、多分運営AIの誰かがやってるんだろう。
こういう機会ちっくなものを貸し出してるのは彼らだし。
『では挑戦者よ! コメントをください』
「む?」
マイクを向けられているようだった。
遠くからなのだが、通じるのだろうか。
「師匠、なんか喋ってくださいって言ってますよ?」
「お前が喋れ」
こういう面倒なのはコーサーにぶん投げる。
するとコーサーは、
「あ、あの……ええと、頑張ります!」
『ズコー! ちょっとベータ先輩に聞いてたのと違うんですけどー! とりあえずローレント選手からもコメントをいただけますかー!』
うるせー女だな。
ベータ先輩って、もしかしなくてもあいつ運営AIなんだろうか?
とりあえず、返しておく。
「無論狙いは優勝だが、ここはあくまでコーサーの修行場所。俺たちは基本的に無差別クラスの頂点を目指す」
そういうと、観客席からどよめきが上がっていた。
「タッグバトルなめてんじゃねー!」
「無差別トップって、十傑ごえだろ!? 無理に決まってんだろー!」
「ホラ吹いてんじゃねーよ!」
すごいバッシングだな。
それだけ十傑という高い壁は観客に広まっているのだろう。
正面に立っている俺たちの対戦相手も額に血管を浮かばせピクピクさせている。
ピクピクコンビと名付けよう。
名前はなんだっけな、ニンニク・ギョウジャとランサフーイヌだっけ。
呼びづらいから、行者葫と犬洎夫藍と呼ぼう。
ぎょうじゃにんにくってすっげー美味しいけど、イヌサフランが混入すると本当に見分けがつかない。
匂いを嗅いでも、ぎょうじゃにんにくの匂いが移ってまず見分けれないから、毒耐性なかったら食うなよ。
マジで、死人出てるから。
「……すごいバッシングですね」
「そうだろうな。まあ気にするな」
「やっぱりわざと煽ってるんですね……」
「そうだ」
今回のランク戦はハリスも見にきている。
彼女はタッグバトルは適当にならし程度のものだろうと考えていたようで、ランク戦があるぞと伝えると、「もうランク戦ですか!? 早すぎません!? ってか言ってくださいよ!?」と、目を丸くして驚いていた。
そんなハリスに、俺は今持ち合わせていた全財産を俺たちに賭けるように言ってきた。
ランク戦が戦うときは、必ず賭けが行われる。
圏外からランク戦に上がるのはかなり難しく、オッズもかなりのもんだ。
稼がせていただきましょう、闘技場さんよ。
適当に煽ったおかげでリアルタイム表示の倍率が伸びて行く。
戦いがスタートしたら倍率は固定、勝負の後に配当という形。
「ぐふふふ」
「こ、こわい。師匠怖い」
「まあ、戦い相手を煽っておくのはいいことだぞ、コーサー」
戦いにおいて、相手を尊重するのは戦いの最中でいい。
それだけしのぎを削りあった、実力をぶつけ合った、そんな相手には勝利を持って賛辞を送れ。
それが死合いのルールである。
逃げるものは追わないが、死にたいは奴は確実に殺せ。
相手も死ぬ気だ、それを生かすことは侮辱となる。
「お前も煽れよ、コーサー」
いい子ちゃんぶるな、と後押しすると。
コーサーは煽っていた。
「お前らは本当の恐怖を知らないチャンチャラピーだ」
なんだろう、チャンチャラピーって。
まあいい、それと同時にバトルスタート。
なんだかよくわからない、煽りであったが……
「くそがああああああ!!」
「殺すううううううう!!」
ランク100位の二人は、結構怒っていた。
本当にランク100位なのだろうか。
怒りすぎじゃね?
『さー! チャンチャラピータッグが速攻で前に出る!』
実況も煽っていた。
俺とコーサーは二人で前に出て一対一の状況を作る。
チャンチャラピータッグは、ともに両手剣を持ったタイプ。
革と鉄の混合装備を見るからに、バランス型の戦士タイプだろう。
「師匠! 作戦はありますか?」
「ない。でも今回は俺も一人を相手してやるから、そっちの一人は素手で倒してみろ」
「はい!」
ランク100位とはいえども、レベル帯はコーサーよりも上だ。
さらに戦士タイプならば、力もコーサーより勝ると思う。
さて、どう戦うコーサー。
だがその前に、
「余裕ブッこいてんじゃねーよ!」
ランサフーイヌが急に姿勢を変えて四足歩行に。
剣は背中にすげている。
そのままピョンピョンピョンと不規則な歩行を用いて撹乱し、俺の背後へ。
「俺は獣人の血が少し混ざってんだぜ? グルルア!」
低い姿勢のまま、背中の剣を引き抜いて俺の足を刈りに来る。
「タッパがでかいと下からの攻撃に弱いだろ!」
「ふむ、ならば俺も」
「!?」
俺はその場に正座した。
居取である。
座した状態で護身する、極の形。
手甲と流水の道衣を用いて、両手剣を受け流し、そのまま犬男の腕をとって投げる。
「げげっ!?」
「躾てやる」
そのまま、仰向けに倒れた犬男にの頭に取り付いて三角絞め。
確か俺の話をどこぞの誰かが本にして書いてたが……柔道技たくさん使わせてたな。
なんて知り合いに教えてもらったファンサイトの駄文を想像しつつそのまま絞め殺した。
落とす、ではなく絞め殺す。
閉めた状態からぐるぐる回るといいぞ。
遠心力が効くからな。
相手も何が何だか分からなくなってパニックにで死ぬ。
「さてと」
コーサーを見やると、両手剣の一撃をナイフで捌いて近接を仕掛けていた。
持ち方は逆手。
順手の方が細かな応用が効くのだが、力の入り具合的に逆手がいい。
グリップごと相手を掴んで投げることも可能。
それで結局転がして上から下に刺す場合、一番グサグサしやすいのだ。
組み側重視ってことだな。
「たかがナイフごときが!」
「たかがナイフごとき? あなたにナイフの何がわかるんですか!」
そう言いながら、相手のふるった長剣をコーサーはナイフで受け流した。
逆手で持つことで、斬撃を外側に逸らすことができる。
刃の曲線を利用した技法もあるのだが、単純これはコーサーだから教えた。
日本人と欧米人の力の違いとして、引く力と押す力。
その違いがあるのだが、これを話すと色々と細かいことになるので、またいつかにする。
結論を言うと。
欧米人の体格、筋肉は基本的に押す力の方が強い。
なので引き込んで、と言うよりも攻撃を押し弾くことをコーサーに仕込んでいた。
それをうまく実践して、長剣がナイフで弾けるのかって話だが。
弾けないと死ぬぞコーサーって感じでランク戦前に教えておいた。
「あなたはわかるんですかナイフの素晴らしさが!」
弾いた腕を曲げてそのまま顔面に、横っ面にフックを叩き込むコーサー。
「ぐふ!?」
「武器がないと! なにか身を守れるものがないと、薄皮一枚で刻まれて行く気持ちがわかるんですか!?」
次は腹に前蹴り。
「ごふ!?」
「長剣持ってるあなたはたいそう心に余裕があるのでしょうねえ!? ほら! ナイフですよ! たかがナイフですよ! ナイフごときですよ! それでも命一つ守るために必須の武器として存在してるんですよ! っていうか僕にはナイフしかないんですけど!? それをわかってるんですか!? 長剣なんてチャンチャラピーですけど!?」
そのまま押し倒して滅多刺しにしていた。
……。
そうか、攻撃をナイフで受ける特訓がよほど怖かったんだなあ。
ごめんなコーサー。
「しかもこの長剣そんなにいいもんじゃないでしょ!! 本当に切れる名刀っていうのは、持ち主が本当に斬る気が無かったとしても勝手に命を奪おうとしてくるんですよ!! それに比べたら、それに比べたらああああ!!」
恐怖心を煽るために羅刹ノ刀までつかったもんなあ。
マジでごめんなコーサー……。
『ランク戦も圧倒的だあああああ!!! 師弟タッグ、タッグバトルランキング100位おめでとう!!』
そんな感じの勝利だった。
まあ、コーサーよ。
順調に強くなっているようで何より。
タッグバトル編もそろそろ終わりってことで。
まあここでトップにたつよりも、先に十傑目指した方がいいですしね。(二人の名前考えないといけないのがアレなもので……ってのは内緒)
それでは駆け足で十傑へ。
ですが、その前にフラグっぽいものを一つ拾っておきましょう。
次回、王都でことが起こります。
(ストレスたまる話ではないです。これは嘘じゃないです。本当です)




