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「さてコーサー。宣言してしまったから……さっそく戦いに行くぞ」


「ええ!? 今からですか!?」


 驚くコーサー。

 何をそんなに驚いているのだろうか。


「お前とデュアルは良きライバルになればいいと思っているからな」


 競争というものは、人を強くする。

 いや、人ではない生物全てを強くするものだ。


「ち、ちなみに……あのデュアルさんは今ランク帯はどのくらいですか?」


「知らん。でもかなり上じゃないかな?」


 そう言いながらハリスに目を向ける。


「11位です。この間は惜しくも敗れましたが、十傑に届く存在としていまだに人気です。と、いうよりも、ローレントさんとライバルになるかなって思って私はある意味お誘いした部分もあるんですが……」


「いや、コーサーでいく。俺はその前にさっさと十傑入るから」


「な、何を根拠に……?」


 やや動揺しながら首をかしげるハリスに教える。


「デュアルの戦いはこの間見て、感じたことなのだが……今のままだと十傑入りするのは相当先になるだろう」


「いやだから……何を根拠にと……」


「それに、今日再び会って見てわかったが……何かに悩んでいる節があるだろ?」


「え?」


「デソルを倒すために足りないものに気付いているが、どうするべきかって感じなんだろうな」


「まあ……確かにデュアルさん、最近小難しい表情をするようになってますけども……」


「師匠、話がずれていませんか?」


 コーサーにそう言われたので、簡潔に、そして単刀直入に言おう。


「手数と速さが強みなのはいいが、デュアルには攻撃技術が足りない」


「攻撃技術……ですか……?」


 言葉をなんとか嚙みしめようとするコーサーだが、ハリスは冗談でしょと言わんばかりに首を振って言い返す。


「いやいやデュアルさんの攻撃技術は一級品ですよ。確かにデソルの防御を超えることはできませんでしたが、速さを生かして相手の後ろを取ったりとか、死角からの攻撃は十傑に匹敵します」


「まあな……だが、そんなの誰だってできるだろ」


 そう言いながら俺はハリスに“未取”を使い後ろに回った。


「ッ!?」


 いきなり後ろに現れた俺に、ハリスは腰を腰を抜かす。


「こういう風に、速さがなくとも死角を取ることはできるぞ。なあコーサー」


「そ、そうですね……私からは普通に後ろに回っただけに見えました」


 でも、できる気しないですけど。って呟いたのは聞こえないことにしておく。

 いずれやらせる。

 できるできないじゃなくて、やらせる。


「い、今のスキルじゃないんですか!?」


「いや技術だな」


 編出すのにえらい時間はかかったが。


「ハリス。とりあえずそういう前提で話を聞いてもらえると助かる」


「わ、わかりました」


「とりあえずあの日見たデュアルの戦い方だが……」


 なんとか思い出しながら話す。


 デソルの職人級の盾使いに、デュアルは自分のスピードを活かして後ろを取りに行った。

 そのスピードはすごくいいのだが、キメの一撃は斬撃の回数が倍増するスキルである。

 要するに手数を増やすスキルだ。

 だが、いくら手数を増やしたところで、デュアルの剣はデソルの首に傷一つ入れられなかった。


「もしスキルを伸ばしたとしてもダブルからトリプルとかになるのが見えてる」


 結局、手数を増やしたところでデソルの防御を超えられなかったら意味がないってわけなのだ。

 つーか、ハリスもあの時それがわかってる感じじゃなかったっけ?


「で、でも! それと攻撃技術って関係ないじゃないですか? 結局デソルの防御を貫けるほどの攻撃力がなくては、倒すことはできないってことですよね?」


「そうだが、俺はデソルとの愛称は抜群だぞ?」


「へ?」


「武術家みたいな格好してるが、魔法職だからな」


「えええええええ!?」


 驚くハリス。

 いや、これもどこかで言ってなかったっけ?

 まあ近接攻撃が主だったから気づきにくいとは思うが……。


「でもでもでもでも! デソルの防御が対物理攻撃だけに特化していて、魔法に脆いわけがありません! だからこそ、無差別クラスで十傑やってるんですよ!」


「まあ、そういう懸念もあるな」


 それに魔闘家をやめてしまった今。

 防御貫通効果も薄くなっているだろう。


 だが、硬いからといってその体内までしっかり守られているのだろうか。

 レイドボス戦とか、ガードが固い相手には、その隙をつくえげつない攻撃を仕掛けてきた。


 人間相手も同じだ。

 つーか人間だったらもっと効果的に壊せるのだ。


 もっとも、羅刹ノ刀とか。

 斬るっていうより喰うみたいな感じだから、防御固くても生き物だったら無理だろう。

 特に人間とか、対人間特攻兵器みたいなもんだ。


 そういう意味で。

 レイドボスとか魔物と戦うよりも、闘技場は俺と相性がいいと言えるのだ。


「えっと、その……」


 ハリスがなんとか言葉を言い返そうとしている。

 言い過ぎたかな?


「いや、別にデュアルをけなしている訳ではない。今、壁を乗り越えようと──」


 フォローしようとしたところで、部屋の外から大きな声が上がる。




「──冗談じゃねえぞおおおおお!!」


「お、落ち着いてください!」


「邪魔だあああああッッ!」


「くっ、攻撃加えて昏倒させろ! そして外に連れていけ! ここで暴れられると面倒だ!」


「大型の魔物を麻痺させるナイフを使ってるんですけど刺さりません!」


「さすが上位半分に入るランカーってところだな!」


「言ってないで手伝うか応援を呼べ!」


「なんでマネジメント契約を一方的に解除されねえといけねえんだよおおおお!!!」






 外に出てみると、筋骨隆々の大男が暴れていた。

 背中に大盾を背負った、ウェーブの髪が蛮族みたいな感じだ。

 顔もごつい。

 足に、腕に、しがみつく者たちを物ともせずに大暴れ。


「ぶっ潰してやる!!!!!」


「ひい!?」


 おそらくその大男のマネジメントだろうか。

 ハリスと同じようなスーツみたいな服を身につけて、俺たちの方へ走って逃げてくる。

 そしてそれを追う大男。


「あ、あれは闘技場ランク100圏内の上半分にいるベテラングラディエーター! 二つ名は盾筋のガードラー! さっき話してましたデソルの下位互換みたいな選手です!」


「ご丁寧にどうも。まあ、ちょうどいいか」


 口で説明するよりも、実際に見せた方が早い。

 そう思った俺は、ガードラーとマネジメントの間に割って入る。


「師匠!?」


「ローレントさん!?」


「いいか、今の俺はスキルなしで、生身の魔法職だ」


 そしてレベルも80台。

 目の前の男もそれくらいだし、スキルなしの近接戦闘では圧倒的に不利。

 不利なのだが……。


「邪魔だ!! てめえもぶっ潰すぞ!!」


「やってみろ」


 勢いに任せた拳を化勁で逸らす。

 そしてそのまま投げっぱなしの一本背負い。


「ぐふっ!! な、何者だてめえ!?」


 さすがデソルの下位互換。

 投げられただけじゃ衝撃を受けただけでピンピンしていて、すぐ立ち上がる。


「いい度胸じゃねえか……俺は今相当イラついてんだ! 邪魔しやがったらまずてめえからぶっ潰すぞ?」


「だからやってみろって」


 煽ってやると、ガードラーは背中に背負っていた盾を構えて言った。


「ハッ、試合会場の外だから、死んでも知らね──ぇ、ぞ?」


 真っ先に潰しにかかればまだ面倒臭いものの。

 長ったらしいセリフを喋っているのでそのまま盾に正拳突きを行う。

 その瞬間、ガードラーは息が詰まったように前のめりに倒れた。


「耳から衝撃を与えて三半規管を壊したり、脳を揺らしたり、関節を壊したり、他にももっと色々とやりようはあったのだが、これが一番スマートでわかりやすいな」


 裏当てである。

 俺レベルになると盾を貫通してその向こう側にも衝撃を飛ばすことができる。

 余裕で。


「このように、回数を増やすとか威力を増やすだけが攻撃技術ではない。攻撃を、どこに、どのようにして当てるかっていうのが攻撃技術なんだ」


 口をパクパクするハリスとコーサーに言ってやる。


「わかったかお前ら?」





「えええええ!? ど、どうなって!?」


「すいませんわかりません師匠!!!」








ローレントの簡単な武術講座でした。(大雑把)

次回から、ちゃんと闘技場でコーサーと一緒に戦いますんで。

本当に。

もう書いてる。





ローレントが最初からもっと武術武術してる書籍版GSO。

2巻まででてまーす。


それではー。



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