-563-
軍服装備をコーサーが身につけ、俺は予備の装備である流水の道衣を装備した。
この流水の道衣。
見てくれは、合気道に使う道衣そのままである。
「軍靴と軍帽が……意外と似合うわね……」
「うむ、大戦帰りの兵役を終えた武闘家のようである」
「そうか?」
途中でガストンもセレクの部屋に姿を現して道衣のお披露目。
すごく褒められているようなので聞き返すと、二人はやや興奮していた。
「そうよ。モダンって感じ」
「文明開化レベルで似合っているである」
軍服、道衣、両者とも古くから伝わる服装だよな。
VRゲームとか、リニア開通とか。
その他諸々、近代化したこの時代に、まさに乙なものである。
俺が知らないうちにスマートフォンが別のものになっていた時は驚いた。
海外修行時、通ってきた道はそういう交通網があまりないところだったからな。
「さて、靴と帽子も渡すか」
「いいんですか?」
「それがセットで軍服装備だからな」
装備を外してコーサーに渡す。
セレクが仕立て直さなくても足のデカさが同じくらいだからすっぽり収まった。
まあ、もともとコーサーの身長は俺よりちょっと低い程度なので、仕立て直しもそこまで時間がかかるものではなかったのだ。
セレクの縫製スキルを使えば一発だ。
「でも、コンシリエーレ。裸足ですよ?」
「まあ、適当に買うか、前使ってたのをはくかな」
戦闘靴があったはずだ。
さっそくアイテムボックス、もしくはストレージを確認しようとすると、セレクがいった。
「フフフ。こんなこともあろうかとね……準備していたのよっ!」
「え?」
そうして作業台の上に乗せられたのは、
【流水の草履】製作者:セレク
怒責龍の革素材で作られた不思議な道衣。
水属性との親和が高く、水の上を歩くことが技術によっては可能。
確率によって相手の攻撃を半分受け流すことができる。
技術によっては全受け流しも可能。
・衝撃受流
・防水加工
・防御Lv10
・耐久Lv10
・耐久100/100
【流水の足袋】製作者:セレク
怒責龍の革素材で作られた不思議な道衣。
水属性との親和が高く、水の上を歩くことが技術によっては可能。
確率によって相手の攻撃を半分受け流すことができる。
技術によっては全受け流しも可能。
・衝撃受流
・防水加工
・防御Lv10
・耐久Lv10
・耐久100/100
レイドボス、マナズマの素材で作られた草履と足袋だった。
相変わらず生産職メンバーの引き出しはやばいな。
なんで、草履と足袋があるんだろう……。
「余った素材で作ってみたのよ。道衣に合わせるならって思って」
「雰囲気バッチリだな……」
「ちなみに、装備についてる衝撃受流は、確立によってダメージ半減みたいなものだけど、確か技術によってはダメージを完全に0にできる可能性を秘めているから、その辺も見てもらえると嬉しいわね」
「へえ……」
受け流しの技術か、もちろん全て収めている。
あれ、ひょっとしてこれ……使い方によっては軍服装備よりも強いのか?
しかも、
「水の上歩けるって……」
「よくわからないけど足装備にだけついたのよねえ」
「そうなんだ……」
やばいな、やばい。
今すぐ試したい、そんな衝動が押し寄せてきた。
水の上を歩ける?
これ、やばくない?
技術によってはって書いてあるけど。
水の上を歩く技術……あの忍者みたいな動きか?
それとももっと単純に、足が水に沈む前に次の足を出せばいいのか?
まだこのゲームでは運動能力がリアルに追いついてないのでやってなかったが……実を言うとリアルではたまにやっていた。
でも、かなり体力使うし面倒なんだよな。
それが簡単にできるとなると、とんでもない装備かも知れん。
「セレク……」
「な、なによ」
「素晴らしい装備、ありがとう」
予備の装備とはいえ、その細部にまでこだわられて作られている。
ガストンの武器のように、セレクのロマンがめいいっぱい込められた。
まさに魂の装備なんだよなあ、いやあ、セレク良いなおい。
すげえすげえ。
「え……? あ、う……」
顔を赤くして固まるセレク。
褒められ慣れてないんだろうな。
こう言う職人気質は大体そんなもんだから。
「よし、コーサー行くぞ」
「は、はい!」
そろそろ時間なので、コーサーを連れてアパートを出る。
モチベーションは最大に上がっているぞ!
って言うか闘技場に行く予定だったんだが、変更してテンバータウンに行きたいところだ。
川の上を本当に走れるか見て、ジョバンニ達に支配権を奪われ、なんだか柄の悪い奴らが居座るようになった拠点の横で、ビビらせてやりたい。
あわよくば、そこから石柱アポートしてテロ起こしてやりたい。
そう思ったのだが……いかんいかんと自分を律す。
勢いだけで行動してはいけないのだ。
今は、コーサーを強くすることを念頭に頑張らないと。
「あ、あの!」
王都を歩くと、軍服を着たコーサーが声をかけてきた。
ちなみに軍服を着たコーサーであるが、もともと彫りの深い端正な顔つきだったので、まじもんの某卍国家の軍人みたいな感じになっている。
「私がコンシリエーレからもらったレイピアですが……」
「ああ、知ってるよ。壊れたんだよな?」
契約魔法の契約者一覧には装備アイテムも一部表示されるのだが、俺が貸していた鋭い鋼鉄のレイピアは一覧から消えてしまっている。
リアードドをボコボコにした時、へし曲がったレイピアを見かけたのでおそらく奴にやられていたのだろう。
「ど、どうすれば。武器も融通してもらえると思っていたんですが……」
「ほれ」
「………………え?」
そんなおろおろするコーサーに渡したのは、銛銃一丁と魔銀製のナイフである。
「ど、どうしろと!?」
「最初のうちから半端に長ものとか使ったら、それで強くなった気になるからな」
つまり、
「基本素手でやれ。その銛銃とナイフはあくまでオマケだ」
これまでコーサーは剣とか細剣の部類を使ってきていた。
だが、それでは強くなれない。
武器を使うことはよし、でも、武器に使われるのはダメなのである。
取り回しのいい武器から順々に扱っていき、どんどん大きくして馴染ませて行くべきなのだ。
「え、ええ!?」
「これからお前には体術をメインに教えてやる。それが終わって武器を持て」
お互い最初から、一から自分を鍛え直すということだ。
「ま、魔物相手に素手で大丈夫ですか!?」
「ん? ああ、そういえば言ってなかったな……」
コーサーは山籠りに連れていけと言っていたが、今回篭るのは山ではない。
せっかく王都には面白そうな修行場所があるんだから、やっぱりそこに籠らなきゃだよね。
ってことで、俺は目の前にそびえる闘技場を指差して言った。
「山籠りではない。闘技場籠りだ。コーサーわかったか?」
「──すいません意味がわかりません!!!」
久しぶりのわかりませんが、王都の大通りに響いていた。
コーサーわかったか?
わかりません!
書いてて懐かしかったです。
さて、軍服ーサーと道衣ーレントが征く王都闘技場編。
しばらく道衣姿ですので、ご留意ください。
ローレントの顔自体は既刊GSOの試し読みとかでみれたりするんで、それを元にご想像をば……。
あ、GSO2巻発売中です。
自作激ウマ焼うどん食べてきますね。
ではでは




