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 それからセレクにしこたま怒られた。

 コーサー以外のエントランスにいた全員がだ。

 どうやらミツバシたちは、魔物専用の場所を作るまで触らない予定だったんだが、興味が優ってついついストーンゴーストにちょっかいを出していたらしい。


 まあ、そういうことはどうでもいいか。

 そんなところが似ているから、俺も気を許せるのかもしれない。

 ストーンゴーストの件と、新素材を利用した作業服の件は一旦後回し。


 今回はコーサーに装備を作ってもらいに、セレクの元を訪ねたのである。


「来るっていったからお茶と茶菓子用意したのに、紅茶すっかり冷めちゃったわよ」


「すまん」


 セレクの部屋にお邪魔して、椅子に座る。


「で……どんな装備をご所望なのかしら?」


「俺と全く同じものを頼む」


「ええ!?」


 コーサーが驚いていた。


「コンシリエーレと同じものですか!?」


「嫌なのか?」


「い、いえ! 感激しています」


「そ、そうか……」


 なんだか目に感動の涙を溜めているコーサー。

 そんなにこの軍服が羨ましかったのだろうか。


 確かに性能は折り紙つきだ。

 軍猿ことレギオンコングの素材は対衝撃と防刃に優れているからな。

 なまくら刀で斬られたくらいでは切り裂けないし、ダメージも軽減する。


 俺の軍服を見て、三下さんもすぐさまその性能を見抜き、同じものを作ってくれといったくらいの代物だ。

 まだまだプレイヤーが活動できる範囲の拡大とともに、新素材もどんどん出てきている。

 だが、そんな中でもいまだに現役なのだよ、現役。


「作るのはいいんだけど……素材はあるの?」


「……ないな。俺が作ってもらった時のあまりとかない?」


「使い切っちゃったり、余った素材を買い取ったものは細かいものに使い直して他のプレイヤーに卸してたりしてるからないわね……また取ってきてもらえたらいいのだけど……」


「そうなのか。しまったな」


 すぐさま作ってくれると思っていた俺のミスだ。


 今日はこの後すでにハリスの元へ向かって闘技場への登録を行ってもらおうと思っていた。

 そのまま山籠りではなく、闘技場籠りをすれば修行にもなると考えていたんだが……どうしようか。


 今からテンバータウンに向かって、それでレギオンコングを狩りして戻って来るとなると……テレポートを用いた最速行動でもしばし時間がかかる。

 それだとハリスとの予定に間に合わない。


「うーむ」


 どうしようかと。

 このままコーサーは市販の装備を購入するかと悩んでいると、セレクが言った。


「ねえ、そんなにコーサーが心配なら、あなたの軍服を貸せばいいじゃない?」


「え……?」


「一応、あなたの中で一番信頼できる性能の装備が軍服ってことでしょ?」


「そうだな」


 断言できる。

 だが、軍服は軍服でもセレクの作った軍服じゃないとダメだな。

 職人の腕が違う。


「せ、生産職冥利につきるわね……あ、ありがと……」


「どうした?」


 何故か顔を赤くさせてそっぽを向くセレクだった。

 セレクは「な、なんでもない!」と首を振って表情を真顔に戻すと言う。


「ねえ、まだ持ってて使ってない装備があるでしょ? あなたはそれを使ったら?」


「ん……?」


 使ってない装備?

 基本的に武器以外の装備品は大分変えてない。

 猿素材をグレードアップしたり、手甲を変えた以外だと新しい装備は持ってない気がするんだが……。


 そこで思い出した。

 手甲を新しくした時に、怒責龍の素材を使った装備を貰っていた。


「流水の道衣か!」


「そうよ、それそれ。結局塩漬けしたまま使ってないんでしょう?」




【流水の道衣(上)】製作者:セレク

怒責龍の革素材で作られた不思議な道衣。

水属性との親和が高く、確率によって相手の攻撃を半分受け流すことができる。

技術によっては全受け流しも可能。

・衝撃受流

・防水加工

・防御Lv10

・耐久Lv10

・耐久100/100


【流水の道衣(下)】製作者:セレク

怒責龍の革素材で作られた不思議な道衣。

水属性との親和が高く、確率によって相手の攻撃を半分受け流すことができる。

技術によっては全受け流しも可能。

・衝撃受流

・防水加工

・防御Lv10

・耐久Lv10

・耐久100/100




 攻撃を受け流すことができる装備なのだが……軍服の性能とか。

 俺の戦い方が受け流しメインよりも、マナバーストで弾いて叩く。

 もしくは遠くからエナジーブラストを放射するとか、石柱の雨とかになったから……全く使わなかった装備である。


 それに実際防御性能は軍服の方が上に思えたし。

 魔闘家のスキルがあれば、昔みたいに防御を優先して受け流しを頑張る的なことをしなくてもよくなっていたからすっかり忘れていた。


 セレクは畳み掛けるように言葉を続ける。


「ねえローレント、私の方でレギオンコングの素材は工面しておくから、しばらくその道衣を装備してみない? せっかく作ったのにお蔵入りは悲しいわよ?」


「ふむ……いいかもな」


 俺も修行をし直すという意味を込めて、この道衣を使っていこうかな。


「にしても、そんなに道衣姿が見たかったのか?」


「な──!? なにをいきなり言い出して! ち、違うわよ! これはあれよ、せっかくレイドボスを倒した後の素材なのに、まだ着たところなんて一度も見たことなかったから……なかったからよ! ほ、ほら、装備して初めて性能とかってわかるから、そのモニター的な?」


「ふむ、やっぱりそうだよな」


 身につけた姿を見てみたいのかもしれないと思って一応聞いてみたが……やっぱり俺の思い過ごしだったようだ。

 ツクヨイとかがやたらめったらライバルだとか、敵だとか、そんなことを言っているから、俺もひょっとしてと思ってしまいそうだったんだよな。


 危ない危ない。

 浮いた心を持つことは修行の上で禁物。

 禁物なのだよ。


 少しのミスが大きなミスになることだってある。

 そうすれば修行の身とはいえ、死ぬことも然り。


 まあ、ネトゲ世界の色恋沙汰なんて。

 言わば絵空事みたいなもんだろう。

 そんな迂闊な判断で友情が砕け散る、なんてネトゲの世界じゃなくてもよくあることだ。


「この道衣の性能、しばらく確かめさせてもらうよ。なんかあったらすぐに報告する」


「あ……うん……コーサーに貸す軍服は……すぐに仕立て直すわね……」


 さーて、修行だ修行。

 久しぶりの道衣ってこともあって、なんだかテンションが上がっている俺がいた。







「くっ、判断を見誤ったかしら……ま、まさかこんな結果に……!」











出たっきり忘れ去れていた流水の道衣。

やっと使う機会が出て着て嬉しいです。

ってことで、次回の話からコーサー軍服。

ローレント合気道の道衣って格好になってますのでご注意を。




この物語は、ローレントが、人間に近づく物語です。(嘘)

ツクヨイの独占を阻むファインセーブを決めたセレクでした。(爆)






GSO2巻好評発売中です。

ご声援、身に染み渡っています。

今後も是非ともご声援のほどをよろしくお願いいたします><





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