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 ぶん殴りたいか、よく言った。

 強くなる根底とは、そなもんだ。


 いかにして、まっとうな理由を述べたところで人は強くなれない。

 戦いの中で、相手をいかにぶっ倒すか。

 結局はそこなんだよ、それしかないってことなんだよな。


 綺麗事で人は強くなれないのは、もはや自然の摂理でもある。

 悪い意味で言えば、出し抜き合うことで切磋琢磨は生まれる。


 あいつを守りたいから、救いたいから。

 ……それは敵をぶん殴る理由じゃない。


 そこで降りかかる火の粉を払うために強くなりたい。

 なんて奴がいるとしたら、今すぐそんな綺麗事はやめろ。


 危険が及ばないどこか遠くへ逃げた方がはるかにマシだ。

 強くなるよりも絶対的に危険は少ないし守りやすいぞ。

 逃げる、と言う行為は自分を守るのに一番良い手段である。


 そもそも、そんな奴が戦ったところで中途半端。

 やはり、戦いの根底には確実に相手を殺す、という覚悟が必要だ。


 危険が及ぶ可能性があるから、自己防衛のために。

 守るために先んじて殺しておく。

 という行動理念ならば、拍手もんだな。

 まあ、綺麗事言ってる奴らには滅多にいないけど。


 コーサーはその覚悟を決めた時点で上出来である。

 ちなみにトンスキオーネは危険はあらかじめ消しておく手段を容赦なく取れるタイプ。

 だから、意外と優しいやつなんだよなあ、なんて思いながら……。


「できた」


「うおーっ! ベスタすげー!」


 俺とコーサーはワルドとベスタが住んでいるテージシティのアパートへとやって来ていた。

 三階建の建物で、コーサーファミリーのメンバーが使用している場所。

 俺の部屋は基本的にプライバシーも何もないが、ベスタとワルドはそれぞれ部屋を貰っていて、自分の好きに内装をアレンジしていて……なんか羨ましかった。


「今日はベスタが作ってくれたのかー……ってコ、コンシリエーレ!?」


「わあ美味しそうねベスタ……ってう、うわぁっ!? コンシリエーレに……ボ、ボス!?」


 食堂のテーブルに座っていると、次々に和やかな様子で入って来たマフィアのファミリーたちが仰天していた。

 そんなにレアキャラなのだろうか。


「ハハッ、みんなコンシリエーレに驚いてますねえ」


「俺だけか?」


 数日前からだが、コーサーも久しぶりにテージに来ているわけだ。

 十分驚かれるに値するだろう。


 ちなみに、この家屋はソルジャー、アサシノ、アサシナートが使う建物らしい。

 エリートや、カポレジームクラスまで行けば、もっと待遇が良くなるんだとか。


 敵だった時はもっとかっちりとした服装だったよな。

 とか思いつつ、ダボっとした適当な服を来てのほほんとしているファミリーを観察していた。

 敵対NPCのこう言う一面はなんとも珍しいと言うか、やっぱりNPCはこの世界で生きてるんだなってしみじみ思った。


「わ、私、コンシリエーレの、と、隣いいですか!」


「まあ、別に良いけど」


 メガネをかけた暗殺者の女アサシノがドギマギしながら俺の席に座った。

 あれ?

 隣にはローヴォが座っていたはずなんだが……。


 どうやらベスタが料理を頑張って作っている間に、ワルドがローヴォ専用の『とくとーせき』を作っていたらしく、そこに収まって料理が運ばれてくるのを待っていた。


「配膳、終わり……召し上がれ!」


「うおー! 腹減ったー!」


 可愛いひよこのアップリケがついたエプロンを身につけるベスタがそう言った。

 ワルドはもう待ちきれないと言った様子でローヴォと一緒に食べ始める。

 ……ひよこのアップリケがついたエプロン……どっかで見たことあるな。


 さて、俺も食べよう。

 夕食はシチューがメインで、他のさらに彩り鮮やかなサラダや、ベーコンとジャガイモを炒めたものや、まあ俺も名前がよくわからん料理がいっぱい並んでいる。

 すげぇな、一人でこれだけ作れるって、将来有望だ。


「ボス、コンシリエーレ。美味しい?」


「うん、めちゃくちゃ美味しくてびっくりしたよベスタ」


「うむ、店が開けるレベルだ」


 正直、味はサイゼやミアン、そして東遷に比べたら劣る。

 だが、そんなもんは当たり前だな。

 何よりも、コーサーファミリーの一員で、古くから付き合いがあるベスタが真心込めて作ってくれた手料理ってだけで、もう食べてなくてもうまいってレベル。


 もりもり食べていると、声をかけられた。

 アサシノの女の子が酒瓶を持っていた。


「お、お酒は飲みますか?」


「今はいいかなあ」


「そ、そうですか……」


「ハハッ、ラビエラ緊張してるのか?」


 この暗殺者の女の子、ラビエラって言うのね。

 目の前のソルジャーの男にからかわれてキッと睨んでいた。

 髪を後ろでまとめて、上げて止めているのでうなじに目に目がいってしまいそうだ。


「意外と、コーサーファミリーにはコンシリエーレファンが多いそうですよ?」


「そうなのか?」


 コップに入った水を飲みながら、コーサーは話す。


「一応私たちは三大マフィアのうち二つを潰して成り上がった新進気鋭のマフィアですし、表で手腕を発揮するニシトモさんや、あくどいですけど実は部下思いなトンスキオーネさんを慕う者たちもたくさんいるようですけど……」


 水ではなく、お酒なのだろうか。

 コーサーはやけに饒舌になりながら語る。


「やっぱりここまで大きくなるためにはマフィア同士の抗争が不可欠です。真正面から戦い抜き、ファミリーを勝利に導いた頂点の方だってことで、一番下の者たちは伝説視しています」


「……まじか」


 知らなかった。

 ファミリー拡大も目的だったけど、一番はマフィア潰しが面白そうだったからって理由だから、それで伝説視されてたりするのが、なんかくすぐったい。


「ボスもそうですけど……まさか目の前にさらに上の人がいるなんて……驚きです!」


 ラビエラにいきなり手を握られた。


「コ、コンシリエーレ! ファンです!」


「あ、うん」


「こ、これからもお慕いしています! きゃっ!」


 顔を真っ赤にして、ラビエラは部屋から出て言った。

 ……な、なんだったんだ。


「コンシリエーレ……すごいモテっぷりですね……」


「ええ? それより、あんまりご飯食べてないけどいいのか? 少食な部類とか?」


 だったら俺がもらってもいいのかなあ。

 正直ちょっと足りません。

 そう零していると、コーサーが苦笑いしていた。


「……姐さんがしょっちゅう愚痴っていたのを聞かされてはいましたが……コンシリエーレはやっぱり筋金入りですね……」


 なんだよ、筋金入りって。

 まあとりあえず、


「ベスタ、おかわり」


「はーい」


 俺はコーサー、ワルド、ベスタと、その他マフィアのファミリーたちと一緒に、賑やかな夕食を過ごした。

 今日はこれで落ちて、明日スティーブンに返事を聞かせに行くか。








本当に久しぶりのマフィア回ですね。

また違う視点のマフィア回でした。

マフィア回といえば血なまぐさい描写しか書いてなかったような。

そうでもないような。マフィア回マフィア回。


実は伝説扱いされてるローレントでした。

まあ、ボス職は自分の意向ってのが下に流れていきますから。(トンスキオーネには効かない)

下からのフィードバックもあるはずなんですが、いまいちスキルとして機能していないような、気がします。(そこはまた今度)







また明日。

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