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 スティーブンは直系弟子称号の話をしたのち、俺をテージシティまで送るとすぐさまテンバータウンへと戻っていった。

 とにかく、時間をやるから選んでほしいと、そういうことのようだ。


 道場称号とその派生の魔闘家は、随分とお世話になって来たスキルである。

 今更それが使えなくなると聞いて、なんとも言えない気持ちだ。


「また明日来る、か……どうするべきなんだろうな?」


「ぐぉん」


 ローヴォが、首をひねりながら鳴き返す。

 まあ、流石にこういったスキルのことは魔物にはわからないか。


 そもそも、だ。

 考えるべきことが多すぎる気がしないか。


 もっとこう、みんなで楽しくゲームができれば良いと思うんだけど。

 なんだか周りがそうさせてくれない気がする。


 気がするってだけで、結局決めるのはいつだって自分なんだけどな。


「とりあえずコーサーに顔見せに行くか」


「ぐぉん!」


 懐かしきテージシティの大通りを歩く。

 そこまで間が空いてないはずなのに、こう懐かしく感じるのっていったいなんなんだろうな。

 気疲れしてるからとかかな?


 なんとなくだが、海が見たいと思った。

 だがここには川しかない、それでもいいかな。


 本当は、トンスキオーネファミリーの拠点に足を運ぶつもりだったのだが、俺も足はいつの間にかテージシティの港の方へと向かっていた。


 テンバータウン、ノークタウン、テージシティを繋いでいる運河はかなりでかい。

 波の音はあまりしないが、それでも水辺に行くと心が洗われるような気がした。


「ふう」


 商業的に使っている川沿いの区画には入れなかったのだが、代わりに少し歩いた場所にある、これまたちょっと古いけどどことなく懐かしい面持ちの木製の桟橋にあぐらをかいて腰を下ろす。


 するとローヴォが俺の膝に頭を乗せて来た。

 撫でながら話す。


「そもそもだけどローヴォ」


「ぐぉん?」


「俺はコーサーになんと言えばいいんだろう」


 ローヴォは答えない。

 なぜ黙る、こういう時こそ助けてくれ。


 まあ、自分で考えろってことか……。


 うーむ。

 気にするな、と笑って背中を叩いてやるべきか。

 それとも無理やり引っ張ってって戦いの最中に身を投じさせてやるべきか。


「考えるだけでまどろっこしいな!」


 とりあえず、一発謝っておくべきだよな。

 そう思った。


 スティーブンも素直に非を認めて謝ってくれていた。

 だったら俺も自分の師匠がやったことを実践しよう。


 そこからだよなあ。

 なんというか、もっとコーサーを見ておくべきだったと反省。

 反省ですよこれは、もう本当に。


「反省の虫でございます」


「ぐぅん」


 ローヴォの頭をワシワシしていると、うっとおしそうに唸り声をあげていた。

 嫌と申すかこいつ。


 そうなればあれだな。

 スキルに関しても一つ、結論が出る。


 俺はスティーブンの弟子。

 そして頼み込んで弟子にしてもらったわけだ。


 だから直系弟子の称号を貰わずしてどうする。

 確かに道場称号は便利だし今までお世話になってきた。


 だがこの世界で俺の師匠はスティーブンただ一人。


 スキルが勿体無い、で済ませられる問題ではない。

 それこそ師の信頼を裏切る弟子になってしまうしな。


「ぐぉん?」


 決意を新たに立ち上がると、ローヴォが俺を見て声を出した。

 意思が伝わってくる。


 それでいいのか?

 と、聞いているようだった。


「いいんだよ。また別のスキルを取得すればいいだけ出しな」


 近接ではかなり便利だったけど、それがなくとも最初はなんとかやってこれた。

 またその振り出しに戻ってしまうようだが、どんとこいだ。


 戦い方をまた改めて行く必要があるが、基本的な身体能力は道場に通ったりすればレベルあげとともに微上昇して行く。

 大幅なステータスアップがなくとも、他に何かスキルがあるかもしれないしな。


「よし、コーサーに会いに行くか?」


 立ち上がって桟橋から上がる。


「ん? あれは……」


 テンバーもノークも、そしてテージシティも、川岸には倉庫が多く立ち並び倉庫街のようになっているのだが、一つの倉庫前にたむろする集団に、見知った顔がいた。


 ワルドとベスタだ。

 木箱を抱える二人は、男たちに囲まれている。


「どうしたんだろう」


 ものものしい雰囲気。

 マフィアの抗争には、まだ日も暮れてないし早すぎると思うのだが……そういえば第二弾アップデートで敵役NPCとして魔物扱いされていたマフィアが、一律普通のNPCになったんだよな。


 システム的に基本的に戦闘行動は夜しか許されていなかった、そんな暗黙の了解があったのだが、それも解かれたということでもあった。


「グルルル」


「わかってる、ローヴォ」


 ローヴォはベスタとワルドに懐かれていたし、今すぐにでも男たちを蹴散らしたい。

 そんな意思が伝わってきた。


 だがまだ相手がマフィアか、それともただワルドとベスタが粗相をしでかしたかわからない以上、迂闊に手を出して指名手配されるのはまずい。


 決定的な場面で飛び込めるように準備はしておくが、ベスタもワルドも子供ながらにしてかなり強い部類に入るのだ。

 半端な手助けは成長につながらないだろう。

 ここは断腸の思いで、固唾を飲んで見守っておく。

 だが、右手はいつでも……エナジーブラスト撃てますよ。


「おいクソガキ、ここはテメェらみたいなガキが来ていい場所じゃねえよ」


「なんだあ? 迷子ちゃんですかあ? 二人でお使い? それとも遊んでるのかなあ?」


「はあ!? おっさん達こそ何様だよ! 関係ないから絡んでくるなよ!」


「お、おっさ!?」


「……ぼくう? いっていいことと悪いことが、世の中あんだぜ?」


「ワルド、無視した方がいい」


「ベスタ、俺もそうしたいけど……って触んな──痛っ!!」


「ワルドッ!」


 男の一人がワルドを蹴飛ばしていた。

 確定、こいつらタダでは済まさん。


「グルルルル……ッ」


「ローヴォ、行ってよし」


 もう居ても立っても居られないといった様子のローヴォにゴーサインを出す。

 エナジーブラスト準備オッケーですが、ローヴォが自らあいつらを血祭りにあげたいみたいだ


「グルォッ──ぉん?」


「ん? どうした?」


 牙をむき出しにしていたローヴォが急に立ち止まる。

 それは、男達がたむろする倉庫前に、


「おいお前ら……何うちのファミリーに手を出してんだ?」


 コーサーが現れたからだった。









懐かしきワルドとベスタが登場。

元孤児で、悪ガキだった彼らは、今は基本的にファミリーのお手伝いをしています。

アンジェリックの元に修行にいったコーサーに変わって、トンスキオーネが面倒を見てくれていました。(口が悪いのは元からかもしれませんが、トンの影響があるかもしれません)


やばい、トンがいいやつになって行く。






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