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「いつ見ても悪趣味な家じゃのう」


 スティーブンは双極の邸宅を見つめ、髭をじょりじょりと撫でながらそうひとりごちる。


「まあ確かに……斬新ではありますけど」


 左右で綺麗に白と黒で分かれている姿は見てていて楽しい。

 遠くから見るとなんじゃこりゃ。

 近くで見るとすっごいチカチカする。

 壊してぇ。


「斬新もクソもないわい、老眼に堪えるのう……公害じゃ、公害」


 すごい愚痴ってるな。

 相当嫌いなんだろうか。

 それに付き合わされる弟子の気分な。

 まあ、俺はなんでもいいんだけど。


 そのまま邸宅を歩いて行き、大きな門の前に着いた。

 門まで左右で白黒になっている。

 こだわりっぷりがすごい。


 俺とスティーブンは門の前に立つと、門はひとりでに開き始めた。

 玄関を超えたエントランスはかなり広い。

 うちの玄関もそこそこ広いと自負しているが、さらに広かった。

 比べ物にならないな。

 うちはもう古くて建て付け悪いし。


「相変わらず汚い髭だねスティーブン」


 中央に二階へつながる階段があって、そこをかつかつと降りて来ながら、さりげなくうちの師匠を侮辱するクソガキがいた。

 身長は120cmくらいか?

 見た目は本当に小学校に入ったばっかりの小さな子供である。


「出たか、妖怪」


「妖怪……? どこにそんなのがいるのかな?」


「戯けめ、手前じゃ」


「アハハッ」


 そんなことを言い合う二人であるが、目が笑っていなかった。

 さらに、双極の魔法使いの後ろから、今度は妖艶な三十路の巻き髪女が腰をくねらせて歩いてくる。


 そう、こいつが四元素のパトリシア。

 ラパトーラの元師匠であった女だ。


「……こうして見ると、師匠以外は面白人間博覧会だなあ」


 さりげなくそういって見ると、パトリシアの方から鋭い眼光で睨みつけられた。

 今にも四属性の魔法が飛んで来そうである。


「これ、正しくとも、いってはならんことがあるぞ?」


「……そっすね」


 ニヤニヤしながら窘めても、余計火に油を注ぐだけだぞスティーブン。


「ほんと、あんたのところの弟子は下品ね」


「ほう、ブランド崩れよりマシじゃけどな?」


「ぐぬぬ、むきー!」


「まあまあ落ち着きなよパトリシア」


「あ……はい……」


 双極のクソガキは、四元素の鯖読みの腰にさりげなく手を回して抱き寄せる。

 すると鯖読みは顔を赤らめながらしゅんとして、いちゃつき始めた。


 なんだ、これは。

 たしか、スティーブンと同期だろう?


「くさいくさい」


 あっけにとられていると、スティーブンは鼻をつまんで心底不快な表情をしていた。

 その反応もどうかと思うぞ、師匠。

 憶測だが、ここにいる師匠勢は齢60を超えているだろう。

 だが、このゲーム内の寿命がよくわからんし、容姿もこうやって若い時を保てるんだから、まあいいってことよ。


 至極個人的な価値観であるが、こういう色恋沙汰に首をつっこむと碌なことがない。

 俺の場合は、明らかに治安の悪い道を歩いているカップルが、案の定絡まれて引き離されて、そのまま女だけ連れ去られてしまって男はボコボコにされるって場面にソコソコの回数遭遇したりした。

 結果、不良連中ボコボコにして助けに行ってやったりもしたんだが、助けられたカップルはなんだか危機感からかその場で盛り上がり、助けた俺にはまだいるの? みたいな。


 それが十回くらいあってから、もう関わるのはやめた。

 見返りなんかないのだよ。


「……帰りますか」


「……わしもそーおもうとる」


 師匠と弟子の意見が合わさったら答えは一つ。

 帰ろうか、帰ろうよ。

 なんか損した気分だな、これも策略のうちだとすれば、双極おそるべし。


「ちなみにあのクソガキの名前ってなんですか?」


「ミドル・ダークライト……じゃったかの──スペル・アブソープッ!」


 帰ろうとすると、突如として後ろから白と黒のエナジーブラストみたいな攻撃が来た。

 俺も対応しようとしたが、スティーブンが素手で吸収する。


「いきなりかのう……つーか、私闘禁止の誓いはどうしたんじゃ」


「いいや、これは仕置みたいなもんさ。死なない程度の威力だよ」


「ほんとかのう……」


「ヒゲ、しっかり弟子の教育をしておかないと、早死にする運命かもしれないよ?」


「生憎じゃが、内の弟子はいささか不良タイプなんじゃよ」


「ほんっと下品だわー!」


 スティーブンとミドルの言い合いの最中、パトリシアだけは俺に向かってずっと下品だなんだと言い続けている。

 なんというか、もう師匠同士のこういう言い合いも飽きたな。

 話が進まん。

 俺は殺気を前面に押し出して一歩前に出た。


「くだらん罵り合いは他所でやってくれませんかね」


「……へえ」


 パトリシアは心底不快な顔をして、ミドルは興味深そうな視線を俺に送る。


「………………それわしにもいうとるのか?」


「…………………」


 否定はしない。

 黙っている俺の様子に、少しがっくりとしているスティーブン。

 それを見て、ミドルが急に笑い始めた。


「アハハハッ! まさにスティーブンの弟子って感じだね! アハハ、まあいいさ……とりあえずここへ来た理由はわかってるしね? 大方このあいだのお礼参りみたいなもんだろうし」


 ミドルはパトリシアの手を引いて俺たちの前に歩み寄ってくる。

 そして俺とスティーブンを見上げながら言葉を続けた。


「まあ、ある意味ルール違反したのは僕だからね。いいよ、乗ってあげよう」


「ミドル気をつけて。ヒゲの弟子は汚い手を使ってくる。私の元弟子もそれで速攻やられちゃったから、新しい弟子を探す羽目になっちゃったのよね」


「へえ、まあいいさ。なんでもいい──」




「──おい、パトリシア」




 思わず呼びすてにしてしまったが、別にいいよな。

 結局、今の言動からしても、なんだ弟子を弟子とも思ってない。

 まるで消耗品のように例えていたことで理解した。


「一つだけ聞いておく」


「…………何よ?」


「どうしてラパトーラを破門した」


「はあ? 私の弟子よ? 負けたら破門に決まってるじゃないのさ」


「そうか」


 空蹴で飛び出す。

 残像も幻影もつけて、さらに悪運の瞳も。

 俺の全てを持って、このパトリシアだけは清算させてやる。


 話を聞いて、再びラパトーラを弟子に取れと説得するつもりであった。

 だが、もうやめだ。

 資格なし。










ってことでPK編と王都編を経て、弟子編です。


昔、コンビニバイトしていた時があるんですが、還暦迎えてそうなおじいちゃんがちょうどエ●本をレジに出して来たんです。

その本がローレ●ツでした。50代の女性が載っているやつだったかな。

その時、爺さんになっても20代とかが対象じゃなくて、しっかり対象年齢も上がって行くんだな、と素で思いました。

老人ホームでも色恋沙汰の揉め事はしっかりあるみたいですよ。





(ちなみにロー●ンツがローレントの名前の由来ではありません。ローレントの名前の由来はGSO2巻に載っています。笑)

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