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 悪運の瞳はもう使っているから、とりあえず久々にノーチェのスキルを使おうか。

 幻惑系が効くのかはわからん。

 いやきっと通用しないだろうから残像だな、期待できるのは。


「はっ!」


 短く息を吸う。

 そして、空蹴を持ってすぐに距離を詰める。


 六尺棒でのなぎ払いだ。

 スティーブンは転移は使わず後ろに一歩下がって避けた。


 すぐに腕を切り返して突きへと転じる。

 再び空蹴を使い、一気に距離を詰めて突きを放つ。


 これだけの速さと詰め方ならば。

 一歩後ろに下がるだけじゃかわしきれないはず。


 受けるか、転移を使ってかわすか。

 俺と打ち合っている時、受けずに躱すスタイルを取っていた。

 だから、今回も転移で躱して死角を取りに行くと予想していた。


「相変わらず恐ろしいほどの殺気をぶつけてくる奴じゃのう」


 六尺棒を投げ捨てて、死角へと転移したスティーブンに酔八仙拳の張果老。

 完全に虚とともに両手片足でスティーブンの体を狙えたはずなのだが……。


「じゃが当たっとらんぞ?」


 ギリギリ外されていたようだった。

 間合いを図りミスったか。

 相手が転移だから、間合いも何も存在しないんだよな。

 実に厄介だ。


「サービスに一発もらってやろうか?」


 プチッ。


「マナバースト」


「ふむ」


「エナジーブラスト」


 弾きとばしを避けようともしないスティーブンにエナジーブラストを放射する。


「マジックエッジ」


 初めから使っておけばよかったな。

 マジックエッジなら、後から魔法の刃が追加ダメージだから、少しは手数の足しになる。

 そして、距離も少しだけ伸びる。


「殺すつもりはないが、痛い目は見てもらう」


 両拳を虎口に構えて空蹴で飛び肉薄。

 エナジーブラストに飲み込まれたスティーブンの喉を潰しに行く。

 その後は貫手で胴体ぶち抜いてやろう。

 あとついでに両手両足の関節を逆にへし折ってくれるわ。


 そう思ってエナジーブラストの脇を一直線に移動していると。


「スキルは依然として……ぬるいのう。スペル・ブラスト」


「む──ッ!?」


 エナジーブラストをかき消す規模の特大放射がスティーブンの方から巻き起こった。

 急いで空蹴を使いギリギリで横飛びに逃れる。


「次はわしの番じゃぞ」


「くっ」


 起き上がったスティーブンは全くの無傷だった。

 マナバーストで怯んだ瞬間にエナジーブラストをまともに浴びたはずだったのに。

 いったい何が起こったと言うんだろうか。


「スペル・エッジ」


「!?」


 背筋をゾワリと撫でた感覚があった。

 その感覚に従って横に飛ぶ。

 すると、荒野の地面が大きく抉れていた。

 まるで巨大な爪によってざっくり地面が削り取られたようである。


「やはり感がええのう。じゃがもう手札は残っとらんじゃろう」


 ゴロゴロと転がって、速攻で体を起こすと。

 目の前にスティーブンが転移していた。


「スペル・バースト」


 爆発にも近い衝撃をもろに受けた。

 声も出せずにそのままぶっ飛ぶ。

 プテラノドラにマナバーストを押し返された時よりも強烈な衝撃。

 空気抵抗の摩擦熱あたりで体表が燃えてしまうんじゃないかって思った。


「完全に上位互換か……!」


 飛ばされながら思ったのだが、スペルの後に紡がれる言葉。

 俺のスキルの上位互換を連想させる語感だった。


 リアルのプレイヤースキルでそこそこやれるとは思っていたのだが……。

 やはりゲームの世界は立ち行かないな。

 魔法のスキルひとつでも、ここまで翻弄されるとは……。

 これ、俺着地と同時に死ぬんじゃないのか?

 五点接地転回法と言うものがあるが、そんな次元じゃない。

 スキルで体を補強していても厳しそうだ。


「スペル・アブソーブ」


 目の前に転移してきたスティーブンが呪文をつぶやく。

 そしてタイミングよく手を当てる。

 すると、慣性の法則を無視して、体がピタリと止まった。

 不思議な感覚だった。


「……お見事です」


 完全に格の違いを見せられた気分である。

 そんな強いスキルがあるなら教えてくれよ、とも思っていた。

 すっかり戦意がなくなった俺に、スティーブンは笑って言う。


「無属性を極めし魔法使いには、軽いことじゃぞ?」


「……精進します」


「うむ、それはそれとしてちょっと決闘申請を受けてくれんかのう?」


「?」


 スティーブンから飛んできた決闘申請は、デスペナなし。

 HPが10%以下になった時点で敗北とのルールだった。


「なぜにこんな微妙なルールなんですか?」


「いやのう、お主が本気で殺しに来て、わしがやり返さんわけにはいかんじゃろう?」


「………………は?」


 ちょっと待てスティーブン。

 どういうことだ。


「だって、師匠とはそう言うもんじゃし」


「……ツクヨイには絶対その対応しないはず」


「ツクヨイちゃんはいい子なんじゃもーん」


 何がもーんだこいつ。

 私怨で弟子を殺すほどの一撃を放つと言うのか!

 なんたる師匠だ!

 リアルに祖父を思い出した……。


「まあ、とりあえず理由づけとしてひとつ言っておくがのう」


「はい」


 申請を許可して、決闘が始まる。

 スティーブンはそう喋りながら、すぐに上空へと転移した。

 いったい何をするのだろうか。


「わしの言うことをきかんのは別にいいんじゃがな」


「…………」


 言うこと聞いてないことはなかったと思うけどなあ。

 でもそう思ってるならそうなんだろうってことで反論せず黙っておく。


「わし以外からの頼みごとを忘れてほったらかしにするのはいかんぞ?」


「え?」


「……ご近所のおばちゃんの手紙、さっさと届けんかたわけ」


「あっ」


 この間思い出しそうになった事柄がそれだった。

 おばちゃんの手紙、そういえばカシミスイーツ店で働く娘さんに渡してやってくれってやつだ。

 なんどもカシミスイーツ行ってるのに、色々と周りがうるさくてついつい忘れていた。


「すいません」


「もうよい、とりあえずわしの世間体を傷つけたことと返事を待つおばちゃんの分じゃ」


「おばちゃんって、師匠からすればおばちゃんではなく娘みたいな感じじゃ」


「今言う言葉はそれじゃなかろうに……まあ良い、スペル・リリース」


 その瞬間スティーブンの手元に巨大な球体が出来上がった。

 無属性魔法特有の青白い輝き。

 いったいどれほどのエネルギーを凝縮しているのかわからないが、俺にはそれが青白く光る恒星に思えた。

 おおいぬ座? シリウス?

 学がないからわからんが、かなり強烈で強い光である。


「ほれ。まあ無理じゃと思うがなんとかしてみ」


「……くそったれ師匠」


 とりあえず、決闘にした意味がわかった。

 スティーブンは本気で俺を殺しに来たわけだよ。


 リリースされた巨大なエネルギーの球体は、俺たちの戦いに寄せられた荒野の恐竜たちをまとめて吹き飛ばしながら俺を飲み込んだ。










一瞬別作品と間違えて更新しそうになってしまいました笑

と、言うわけで散々手紙は、手紙は?

と言われていたことに関して、スティーブン自らが直々に「めっ」をしに来たわけでした。

めっ、で召されるローレントです。




魔闘とか魔装で強くしすぎた感があるので、ローレント弱体化(と言う名の事実上強化)を行おうかな、なんて思っているんですがいかかでしょうかねぇ。

こいつが本当に弱体化するのかは知らないですけども。





すてぃーぶん「めっ(リリース)。じゃ」


つくよい「おししょうさまそれぜんぜんかわいくない!」


すてぃーぶん「しょぼん」


ろーれんと「いや、おれころされるんだが? くそじじいのぶりっこでころされるんだが?」








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