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「……師匠」


 本当に久方ぶりのスティーブンである。

 そして、振り返るとなんだかよくわからないがとりあえず怒気に包まれたオーラをまとっている。

 ……気がする。


「この騒ぎ、いったいどういうことじゃ?」


「いやそれはトンスキオーネが」


「自分の部下であろう?」


「ぐ」


 スティーブンは斬り飛ばされたトンスキオーネの腕を手元に転移させ言った。


「とりあえずその厄介な刀をしまわんか」


「は、はい」


 羅刹を納刀すると、すぐさまトンスキオーネの元に転移し腕をくっつける。

 ぶちゅっという音がして、トンスキオーネは苦痛の表情をするが、


「少し痛いだろうが、我慢せい」


 そう言って、手元に液体の入った小瓶を出現させ振りかけた。


「ぐっ……おいおい、高いんじゃねーのか? 爺さんよ」


「良い」


 すっかり腕が元どおりになったトンスキオーネを確認すると、スティーブンは改めて俺の正面に立つ。


「して、ローレント」


「なんですか」


「どうやらイライラしとるようじゃのう?」


 パイプを燻らせながら、見透かされたようにそう言われた。

 トンも葉巻をくわえて火をつけている。

 二人揃ってモクモクモクモク煙臭い。


「してませんが」


 そのまま正直に答えるのもなんだか負けた気がしたのでごまかす。


「ふむそうか、相変わらず根元はしつこくて陰湿な男じゃのう」


「だよな。俺もそう思うぜ。無愛想なやつでも悪いやつでもなくてただの根暗野郎だ」


 ムカ。

 なんたる言い草か、やはりトンスキオーネ、殺しておくべきだったか。

 羅刹で腹の贅肉薄皮一枚ずつこそぎ落としておけばよかった。


「フィールドに出ろトンスキオーネ、人の迷惑にならないところでさっきの続きをしてやる」


「ハッ! 残念だが、もうやめだ。俺じゃテメェに勝てる気がしねぇし……?」


「どういうことだ」


「後はこの爺さんにお任せするってことだよカス。とりあえず師匠にぶん殴られてこいや」


「うむ、此度のいざこざはわしが貰い受けた」


 スティーブンが杖を振って、俺の足元に魔法陣が出現する。


「さて弟子よ、久々にわしと一本勝負と行こうかの──」






「──む?」






 視界が切り替わった。

 風の音、浮遊感。

 そしてそこから空気を切って降下して行く感覚に変わる。


「……また空中戦か……」


「ほっほ、ここなら誰の迷惑にもならんじゃろ」


「でも、どうやって勝負しろと?」


「まずはファーストステージじゃな」


 地表を確認すると、ここが王都の上ではないことがうかがえる。


 ならばどこなんだ?

 マップを表示する。


 ……なるほど。

 荒野か。


「随分と懐かしい……」


「しばらく来とらんかったからのう……」


 ここならば、落下物を出現させても邪魔にならないということか。

 確かに、王都上空で戦ったらとんでもないことになるからな。

 石柱転移で空中八艘飛び移動なんてしたら、確実に捕まる。


「さて、空中戦と行くかのうて?」


「望むところです」


 相当高いところにまで転移で飛ばされたのだろう。

 これだけ喋っていてもまだ地面が遠い。

 今回の空中戦は長引きそうだなと思った。


 だが、


「おっと、今までとは違うエリアじゃからのう……来客も存在するぞ」


「はあ? ──ッッ!!」


 スティーブンがそういった瞬間。

 突如、高速で何かが駆け抜けていった。

 そして遅れて、喉を引き裂いたような金切り声響いてくる。


「なんだ、今の……」


 体勢を入れ替えて目で追う。

 すると、はるか向こうに大きな翼を持った一体の魔物がいた。




【プテラノドラ】Lv18

荒野を飛ぶ系譜の主流。恐竜。

音速を超える速度で飛行する。クラス2




 これが、クラス2だと?

 頭いかれてんじゃないかってくらい脅威に思えるのだが,そういえばこの荒野ゾーンってレベルテーブルが特殊だったんだっけな。


「そうじゃな、昔グラビティスピノと戦ったろう?」


「ああ、ありましたね」


 めちゃくちゃやばいやつ。とだけ覚えている。

 重力操るんだよな、スティーブンも面倒だと戦線離脱を図ったんだっけ。


「あの時のグラビティスピノはクラス2の限界レベルであるレベル40。人のレベルに換算すると、120レベルに相当する」


「ええ……」


 とんでもないな。


「今回のプテラノドラもクラス2じゃから……人レベルに換算すると、だいたい90いくかいかないかくらいの敵じゃのう」


「計算が面倒くさそうですね」


「そうじゃな。ここは人があまり入らんし、昔ながらの状態が保たれておる。故に魔物の強さも人の反映する地域とは大きく違っとるわけじゃ」


「そうなんですか」


 ややこしいな、プレイヤーのレベルを一緒にしてくれよって思う。


「そうだ、ティラノロッキーは、レベル換算でいうとどのくらいなんですか?」


「奴も変わらんぞ。グラビティスピノよりも少し弱いくらいじゃ」


「なるほど」


 ……ってことは、そんなレベルの魔物を一撃で葬ったというのか。

 このスティーブンは。


 その事実を理解すると、少し鼓動が高ぶった気がした。

 スペル・リジェクト。

 欲しい、あれはかなり強力なスキルである。


 いやそれよりも、この師匠は一体今どれくらいの強さを持っているのだろう。

 レベルが見えたことはなかったし、今もレベルは【???】と出ている。

 気になるなあ……聞いてしまえ。


「そもそも師匠。師匠のレベルってどれくらいなんですか?」


「……うーん、それはまだ秘密じゃな。まあいずれ分かる時がくるじゃろう」


「ええ……」


 またそれか、と思う前に。


「ほれ、敵が来るぞ? 自分の鳴き声すら置き去りにする音速を超えるで速さで体当たりされたら……丸腰じゃと即死確定かもしれんな、心してかかれい」


「くっ!」


 急いでフルバフ状態にする。

 トンスキオーネ戦で視認転移とかリフレクトとか使ってたから若干不利なんだよな。


 しかも空。

 地の利は当然向こうにあり、そして空中機動も何もかも、相手が上の状況。


 ったく、どうするかな……。


「そしてわしと戦っとることも忘れるでないぞ」


 くそったれジジイだ。











誤字修正系は後でやります……

報告感想ありがとうございます……

明日も更新します……






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