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 最初は戸惑っていたが、長々と喋る敵を放って置くほどゴブリンは甘くない。

 とりあえずいくつか持っていた武器のうち、手放ししても大丈夫そうな棍棒を選んで投擲していた。

 なかなかやるな、ゴブリンのくせに。


「くそ……人の決め台詞を邪魔しやがって……いいぜ、いいぜゴブリン、お前がそうやって空気も読まずに攻撃を仕掛けてくるってんなら俺だってテメェらのやり方に乗ってやる! 覚悟しろよ、この森に救う最強のゴブリン達! テメェらがそうやって人をさらうってんなら俺が決着つけてやるよ! そしてそこでボロボロになってるNPCも諦めるな! ちっとばっかりやられてからスタートのプロローグが悲惨だったからって諦めんなよ! ああ、いいぜ、それでも諦めるなら俺がお前らに手を差し伸べてやる、立ち上がれ、立ち上がれよNPC! それでも無理だってんならあとは俺にまかせ──ぐはっ!」


 ……肩に矢を受けていた。

 装備でわかるだろうに……バカかこいつは。


 レンジの後ろにいる盾持ちの男ダリルは、ゴブリンが弓を構えるのを見てすぐに警戒し盾を構えていた。

 騎士姿のソルダは、そもそも生半可な飛び道具は気にもならない重装備だ。

 それにひきかえレンジは……中に鎧でもまとってるのかなと思ったんだが……普通に血が出ているところを見るに普通の皮装備とか、そんなところなのだろう。


 あれだな、無理して持ったりしないと魔法職ってそもそも鎧の重さに耐えきれないからだな。

 それでも持ってレベルを上げていけばそれなりにステータスのSTRとかVITが伸びるのだが、あの防御力を見るにそれも怠っていたと思える。


 結論、バカだ。


「……どうする? 王都周辺ってテンバータウン周辺みたいにレベル別に魔物が固まってるとか、そんな常識ないぞ?」


「そうよねえ……っていうかそもそも、今日はギルドの情報がその通りかどうか調べに来ただけだったんだけど?」


「でもレンジがあの調子じゃ、もう止まらんだろ……この集落の規模からして武器を持ったゴブリンの数が目の前の数だけとも思えんし……」


「そうね……」


 ぐあああ、でも救うまで俺は止まらないぞ最強。と叫ぶレンジを前にして、他の二人はめちゃくちゃ冷静に状況を分析していた。

 温度差がすごい。


「王都に戻るか」


「そうね。デスペナして戻ってくるの待ちましょ」


 あっけらかんとそう判断し、二人はレンジを放ってそのまま森の中に消えてしまった。

 ……いいのか?

 かりにもパーティーじゃないの?


「え? ちょ? ソルダさんにダリルさん? ちょ、負いてかないで! 負いてかないでぐはっ!」


 今度はお尻に矢を受けていた。

 痛そうだ。


「ゲヒゲヒ?」


「ゲゲヒ」


 ゴブリン達が何やら怪訝な表情で会話している。

 なんとなくだが、俺にはわかる。


 こいつバカ?

 バカだろ。


 みたいな会話をしているんだろうな……。


「くっ、不意打ちか最強のゴブリン……だが、俺だってタダではやられねえ……いいぜ最強、俺の最弱は、ちょっとばっかし響くぞ! 最終奥義、フレイムピ──あうっ」


 杖をぎゅっと握りしめて詠唱を介したレンジは、そんな言葉を最後に意識を失ったように倒れた。

 新手のゴブリンに後頭部を殴りつけられたから、気絶のバッドステータスをもらったのだろう。


 いや、それにしても。

 ……なんだあいつら?


 新手のゴブリンに視線を向けると、今まで見たゴブリンとはひときわ違った雰囲気を持っていることがわかった。

 単純に言えば、オーク並みにでかい。

 昔滝壺のシークレットエリアにいたレア・ホブゴブリンも体躯はそこそこデカかったのだが、それはボスだからだと思っていた。

 そんなボスっぽいゴブリンが、なんと数にして10体以上も連なっている。

 そして、ゴブリン達はレンジを置いて逃げたソルダとダリルを、まるで道すがら仕留めたとも言わんばかりの表情で肩に抱えて戻って来ていた。


「くっ……今の一撃はかなり……応えたぜ……」


 あ、生きてた。

 レンジ生きてた。

 そして肩に抱えられたソルダとダリルに気づき目を丸くする。


「は? ……お、おい、うそだろ……?」


 その様子に首をかしげるでかいゴブリン。


「ダ、ダリルとソルダは防御を重点的に固めてんだぜ……? そ、それをそんな……たった今別れたばっかりだってんのに……気絶とかありえねぇ、ありえねぇよ! テメェらいったい何しやがった!」


「ゲヒ」


 言葉が通じていると言わんばかりに、ゴブリンは頭から血を流しながら叫ぶレンジに、血のついたでかい鉄製の鈍器を見せる。


「……許さねえ、許さねえ!!」


 さっきまで最終奥義とか詠唱とかしてたくせに、レンジは無詠唱で自分の周りに炎を起こしていた。

 起点が自分のフレイムボルテックスかな?


「テメェら……怒らせちゃダメな奴を敵に回したな……テメェらはもうおしまいだぜ? その理由は、テメェは俺を怒らせt──は、え?」


 レンジの周りを回っていた炎が消える。

 でかいゴブリンの後ろにいたローブをまとったゴブリンが、なんらかの魔法を使ったあとの出来事だった。

 ……なるほど、ダリルとソルダの体に傷は見当たらないし、魔法職のゴブリンがスキルを使って眠らせたのか……そしてそれを騙すためにわざわざあのでかいゴブリンは血のついた武器をレンジに見せたわけだな。


「ッ!?」


 動揺したレンジは、そのまま後ろに控えていたゴブリンの魔法スキルをくらい、力を失ったように倒れてしまった。

 そして全員で運ばれて村の中央の部屋へと連れていかれる。

 ……あ、これいかんな。

 バレるか?

 一応痕跡はできるだけ残さないようにしたんだけどな。







香ばしいプレイヤーだあ!





趣味とノリで新作もちまちまあげてます。

よかったら読んでください。

アンリミテッドアナザーワールドというやつでし


GSO2巻もよろすくです。

ちなみに新作あげてても毎日更新はやまない雨。

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