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 あったあった、農具とか武器は木とか革で作られてるものだけど、薬草溜め込んでいる場所を発見した。

 倉庫兼工房のような形で作られており、音もなく侵入、そして中にいたメディックゴブリンをちゃっちゃと殺して根こそぎストレージに転移させていく。

 アイテムボックスに入れる必要がないから楽だ。

 箱を出して、詰めて、箱単位にしてストレージにおくっちゃうだけだからな。


『外道の薬草しまっちゃうおじさん』


 しかとしかと。っと。

 最近やけに静かにしていると思っていたら、なんだかんだまた煩くなってきた。

 武器が喋るなよな、まったく。


『がーん』


 ちなみに、クラス3の生産系ゴブリンはポーションゴブリンだった。

 ちまちまとポーションを制作し、それをメディックゴブリンに教え伝えるゴブリン。

 脅威だな、軍勢をなして戦うだけのレギオンコングよりも危険度は高いだろう。

 今はまだ質の低いものしか作れていないようだがこれから技術が洗練されていけばどうなるのだろうか……戦力を整えて王都に侵攻してくるとか?

 レイドボス強襲イベントみたいなものが、自発的に引き起こってしまうなんて、とんでもないな……と思いつつ、内心めちゃくちゃ愉快だった。

 ゴブリンやるじゃん、見直したわ。

 でも殺すけど。


 さて、そんなことを考えつつ倉庫を色々と調べているのだが、積まれているアイテムを見て一つ気になったことがあった。

 鉄製のしっかり打って作られた武器とか、本当にゴブリンが作ったのかと疑わしき装備が存在している。


「普通に考えて……誰かが持っていたアイテムをパクったとか?」


 プレイヤーは死んでもロストせずに死に戻りをするわけだし、万が一ロストしたとしてもPKが根こそぎ奪うだろう、ゴブリンがハイエナみたいな真似なんてできるわけない。

 もっとも今はそんなこと関係なく、そういった奪う的な行動はスキルでしかできないのだけど。


「それから考慮すると、NPCを殺して奪ったとしか考えられないな……む?」


 やっぱりゴブリン殺してしかるべきと思っていると、外から物音がした。

 倉庫内に身を潜めて外を窺うと……。


「う、く……」


「……ぐ……」


 体から血を流した男女二人のNPCが、ゴブリン達に引きずられているところが見えた。

 どうやら骨のあるゴブリンがいないと思ったら、外に出ていたようだな。

 NPC狩りというやつなのだろうか、いやゴブリン達からすれば人狩りか。


「グヘヘ、ゲヘ」


「ゲヒゲヒ!」


「ゲヒヒ!」


 鉄製の装備を身につけた普通のゴブリンよりも体格がいいゴブリン達の中に、さらにひときわ大きな個体がいる。


 ……ホブゴブリン?

 いや、レアか?

 どっちにしろ、それくらい強そうな個体っぽかった。


 助けるか、助けないか。

 狩りに赴いていたゴブリンの規模と戦力が、王都のゴブリンはまた特殊っぽいのでわからない以上、迂闊に攻撃を仕掛けるのは躊躇われる。

 多対一はそれなりに慣れてはいるものの、人質みたいな形にされた救出を諦めなければいけないしなあ……そうなると最初から助けに来ただのなんだの割って入るのは違う。


「様子見だな」


「がぁう」


 一緒に覗いていたローヴォも俺の考えに同意してくれたようだった。

 名も知らぬNPCよ、少々かわいそうではあるが、二人でこんな森の奥まで入って来てゴブリンの集団に捕まった不運を嘆くがいい。

 狩りに行くなら、何かあった際の安全策をそれなりにとておくべきだろう。

 ……俺にはテレポートがあるから、そんなこと言われてもって言い返されそうだが。


「──フレイムボルテックス!」


 む?

 ゴブリン達の行く手を阻むように、炎の渦が巻き起こった。

 助太刀か?

 いったい誰だ?


「醜悪なゴブリンども! そこのNPCを離せ!」


 NPCを連れたゴブリン達の後方から、ローブをまとって杖を持った男が駆けてくる。

 言葉にNPCってあるから、プレイヤーだろうか。


「もおっ! レンジ! 勝手に先に行かないでよ!」


「仕方ないだろソルダ、だって囚われてんだぜ! 救わなきゃ!」


「だからってよお……ちょっとは警戒してもいいんじゃないのか?」


 レンジと呼ばれる、いの一番に魔法を放ったプレイヤーの後から、彼のパーティーメンバーが追いつく。

 勝手に行かないでよ、と息を荒くして追いついたのがソルダと呼ばれる騎士鎧の女。

 その後ろからやれやれと言った面持ちで盾と斧を持った剛戦士っぽい背の高い男もくる。

 仲間に言い含められたレンジは、高らかに宣言する。


「ダリル! 警戒してる場合じゃない! だって、ゴブリンに囚われた殺されて食べられるか、女はそのまま犯されるってよく言うだろ!」


 ……そうなのか?

 でもまあ、対象がNPCだとありえない話ではない気もする。

 ゴブリンが解体スキルを持ってるとも思えないしな。

 ちなみに解体スキル使わなかったら死んだ魔物は一定時間残る。

 それはNPCも一緒だ。

 逆に言えばNPCの遺体でも解体スキルを用いれば跡形もなく光の粒子となってドロップアイテムとして残る。

 なんて残酷な世界だ!


「いや……そうとは決まったわけじゃないだろうに……」


「レンジそれ、漫画の見過ぎよ……」


「ええ、そうなの!? でも漫画みたいな世界観のゲームだったらありえない話じゃないし……ってことは万が一にもそういうことがあり得る!」


 ソルダがそう言い含めるが、レンジはすぐに拳を握りしめて宣言する。


「って言うか目の前でゴブリンに連れ去られてる人がいるってのに、それを助けないなんて言語道断だろ! 体が勝手に動いちまったんだ! 俺の魂が勝手n──ゴフッ」


「レンジ!! 喋ってないで周り見なさいよ!!」


「まあ、棍棒投げられただけだったら死なないだろ……」







お?

なんか、また誰か、香ばしいのが来ましたよ?



ちなみに、闘技大会が終わってからの本編は、ローレント禊編みたいな感じで、個人的に書いています。

ある意味、色々と放置していたものが押し寄せてくる編、みたいな? そうじゃないみたいな?

書き溜めしながら更新してますので、ゴブリン編もあと3話で終わりというのは確定です。

あ、GSO2巻好評発売中〜!

と、いうことで三月最後の更新でした!






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